サステナビリティとは?意味やSDGsの違い、企業の経営への取り組み事例

この記事のポイント

  • サステナビリティとは、経済・社会・環境の領域に渡る持続可能性を意味する言葉です。
  • 近年では、企業経営を行う上でもサステナビリティが重要なテーマとなっているため、課題であると同時に新たなビジネスの機会としても注目されています。
  • 実際の取り組みの際には、課題を明確にした上で、手法や姿勢を打ち出すことが必要です。

サステナビリティとは?

サステナビリティとは?意味やSDGsの違い、企業の経営への取り組み事例

サステナビリティ(Sustainability)とは経済・社会・環境など、さまざまな領域に渡る持続可能性を表す言葉です。地球環境に配慮することで、社会を長期にわたり持続させることがサステナビリティの目的です。本来は、環境保護の文脈の中で使われる言葉でしたが、近年では企業活動と結びつけられることが増えてきました。

ここでは、サスティナビリティがどのようなものかを解説します。

国連のサステナビリティの定義

サステナビリティという言葉は、1987年に国連の「環境と開発に関する世界委員会」が発表した報告書の中で使われたことで、広く知られるようになりました。同報告書の中では「Sustainable Development(持続可能な発展)」という言葉で表現されており、現在も使われているサステナビリティという言葉は、この報告書の中で定義づけられたといわれています。

サステナビリティとSDGsの違い

近年、SDGsが注目を集めており、多くの企業が施策に取り組んでいる状況です。SDGsは正式には「Sustainable Development Goals」と表記され「持続可能な開発目標」を意味します。2030年までの経済・環境・社会における持続可能な、発展途上国と先進国が共同で取り組むべき国際目標として定められました。

サステナビリティが環境・社会・経済の側面で大きな枠組みで設定されているのに対し、SDGsでは、その3つの側面の中でより具体的な17のゴールが設定されています。そのため、SDGsはサステナビリティという概念をより具体化したものだといえるでしょう。

サステナビリティとESGの違い

ESGとは、Environment(環境)・Society(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字を合わせた言葉です。ESG経営という言葉を聞くことがありますが、これは環境や社会に配慮したESGの3要素を重視する経営方法を意味します。

ESG経営を行うことで、企業価値を高める効果が期待できるでしょう。ESG(経営)は、サステナビリティの概念を実現するための経営手段だといえます。

サステナビリティとCSRの違い

CSRとは、正式には「Corporate Social Responsibility」と表記され、企業の社会的な責任を意味します。1990年代以降、地球規模の環境破壊や人権問題と併せ、大企業の違法行為や不正が大きな社会問題となる中で、企業は単に利潤を追求するだけではなく、社会的な責任(CSR)を追うべき存在とされるようになりました。

サステナビリティは社会全体での持続可能性を意味しますが、CSRは企業が社会的責任を果たしながら利潤を上げるための姿勢として使われる言葉です。

サステナビリティの3つの柱

サステナビリティは、持続可能な発展を遂げるための必要不可欠な要素で構成されています。具体的には環境保護(Environmental Protection)社会開発(Social Development)および経済発展(Economic Development)の3つであり、それらを併せて「三つの柱(トリプルボトムライン)」と呼ばれています。それぞれの柱の内容を確認しておきましょう。

環境保護(Environmental Protection)

1つ目は環境保護です。環境保護を実現するためには、森林保全、海洋汚染対策、生物多様性の確保などが推奨されています。

そのほかにも、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換など脱炭素社会に向けた活動も含まれています。企業活動の中でお話しすると、「製品の生産工程などを、環境に配慮したものへとシフトする」などの取り組みが必要です。

社会開発(Social Development)

2つ目は社会開発です。貧富の格差や人種差別などの社会的な不平等をなくすことなどを通じて、全ての人が権利を尊重され幸せになれる社会を目指すことを指します。

具体的には、医療や保険等の社会サービスの改善、平等な教育機会の提供や多様な働き方の推進などを通じて、社会開発を進めていくことが必要です。

経済開発(Economic Development)

3つ目は経済開発です。個々の企業や社会全体が社会全体が、継続的に社会に貢献しながら利益を出し続けられる状態を目指します。

企業では、労働環境や自然環境に配慮しながら、長期に渡って利益を出すための経営をサステナビリティ経営と呼びます。一方、経済開発は、経営を通じて実現することが求められる概念です。

サステナビリティが注目される背景

サステナビリティが注目されるようになった背景としては、欧米などの先進国を中心に前述のCSRに対する取り組みが進んだことと同時に、世界各地での自然災害や気象変動により、人々の環境への意識が高まった点が挙げられます。

2006年に、当時の国連事務総長のコフィー・アナン氏が、金融業界に対して投資責任原則を提唱したことが1つの端緒となりました。この際には、「投資の意思決定プロセスにESG課題を組み込むべき」というガイドラインが示されています。

その後の2011年には、EUによるCSRの定義が明確化。同年には、OECDによる「多国籍企業行動指針」が改訂され、企業の人権尊重の責任が明示されました。その後の2015年、国連サミットで「持続可能な開発目標(SDGs)」の採択と併せ17の目標が提示され、現在のサステナビリティを取り巻く動きに繋がっていきます。

企業がサステナビリティ経営に取り組むメリット

企業がサステナビリティ経営に取り組むメリットはいくつか存在します。具体的に挙げると、まずサステナビリティは新たなビジネスチャンスに繋がるという点です。

次にサステナビリティ経営によるイメージの向上とそれに伴う人材確保が挙げられます。加えて資金調達にも有利に働き得るという点です。詳細についてそれぞれ見ていきましょう。なお、サステナビリティ経営は現在、欧米では成長するための経営手法として認識され始めていることも考慮に入れておくことが必要です。

経営・事業の成長

前述の通り、取り組みが進んでいる欧州では、サステナビリティ経営は成長するための手段として認識されています。もちろん、依然として日本では企業が取り組むべき課題であると認識されていることも事実です。例えば東証プライム市場に上場を目指す企業には、実質的に「気候関連財務情報開示タスクフォース」に準じた開示が必須とされるなど、サステナビリティ経営は事業を大きくするための要素だといえます。

しかし同時に、後述する通り経営上の大きな利点や優位性をもたらしてくれる経営手法ともいえるため、前向きに取り組んでいくことが重要です。

社会課題の解決・社会貢献

今後の企業活動は単に利益をあげるだけでなく、さまざまなステークホルダーに配慮をしながら、持続的に成長することが求められています。その一方で、社会課題解決をテーマにした市場規模は1,200兆円ともいわれています。

自社の経営を社会が抱える課題解決にマッチさせ、社会貢献に発展させることは、新たなビジネスの機会とも捉えられるでしょう。

参考:中小企業のためのSDGs活用ガイドブック|独立行政法人中小企業基盤整備機構近畿本部

企業イメージの向上

サステナビリティ経営を行うことにより、株主だけではなく消費者や取引先など、さまざまなステークホルダーからのイメージ向上に繋げられます。社会的な責任を果たしているという評価は売り上げアップだけでなく、リピーターの獲得など継続的な事業の発展において大きなプラスになるでしょう。持続的な成長を目指す企業ほど、サステナビリティ経営は重要です。

多彩な人材の確保

サステナビリティ経営を行うことは、企業イメージの向上から採用においても有益な影響を与えます。また、後述するサステナビリティの指標の1つであるGRIスタンダードでは、「社会」の項目の中で労働安全衛生や機会均等といった、雇用に関する項目も挙げられています。

これらの項目を遵守することで、多様な人材の確保や定着に繋がることが期待できるでしょう。

資金調達で有利

近年、ESG投資という言葉を聞くようになりましたが、これは企業の財務面だけではなく、環境や社会などの面も考慮した投資手法です。ESG投資は、欧米をはじめとして投資の手法として定着し始めています。

ESGとは、前述の通りサステナビリティに関連する概念の1つですが、このようにサステナビリティ経営を行うことは、投資家からの資金調達にも良い影響を与えるでしょう。

サステナビリティのガイドライン「GRIスタンダード」

GRIスタンダードとは、オランダのアムステルダムに本拠をおくGRI(Global Reporting Initiative)の作成した枠組みのことです。GRIの当初の目的は企業の環境に関する行動について高めることでしたが、次第に社会や経済の問題へと活動を広げていきました。

GRIスタンダードは、前述のESGに関する情報を開示する際の枠組みとして定められました。この枠組みの中で情報が開示されることにより、企業のESGへの取り組みをレビューしやすくなります。

GRIスタンダードは、大きく「共通項目スタンダード」と「項目別スタンダード」の2つに分かれており、それぞれに属する項目ごとに開示の指針が示されています。例えば、共通項目スタンダードの一つであるGRI103(マネジメント手法)では、経済・環境・社会に関するマネジメント手法について報告する指針が示されるなどです。

中小企業のサステナビリティへの取り組み方

近年、社会的に求められるサステナビリティへの取り組みですが、中小企業では対応できる社会的課題などにも限界があります。実際に取り組む際には、まず対応すべき課題やそのための手段などを、あらかじめ決定することが必要です。

また、実行にあたっては従業員の理解も必要となるでしょう。このように、いくつも実施までの段階があるため、以下の解説を参考に取り組んでいただければ何よりです。

自社の事業の課題の洗い出し

サステナビリティ経営を行うためには、まず自社にどのような課題があるのかを把握・整理する必要があります。また、課題の洗い出しの中で必ず重要課題を決定しましょう。

重要課題は社会やステークホルダーへの影響が大きく、自社の事業のサステナビリティに関わる課題を選出しましょう。なお、この際には解決が到底困難な課題を挙げても有用ではありません。そのため、自社として解決する課題を取捨選択し、優先順位を決定することが必要です。

課題解決のための手段と目標の設定

課題を把握したら、解決するための手段と目標を定めます。サステナビリティ経営における課題や目標は、短期間で解決したり達成できたりするものではありません。そのため、必ず中長期的な目標を定める必要があります。

また、中長期での目標を定めることで、目標に至るまでに達成すべき途中のゴール設定が可能になります。目標から逆算し、アクションプランと指標を設定しましょう。

会社全体へアナウンス

上記までの工程により、中長期的な目標とそこに至るまでの手段を明確化したら、自社の従業員(およびステークホルダー)に対して公表を行います。このとき、達成すべき目標が明確であればあるほど、従業員からの理解も得やすく、一丸となって行動できます。また、サステナビリティに関する研修を行ってもよいでしょう。

サステナビリティへの取り組みを実行

目標と手段を設定し、社内でのアナウンスが完了したら、あとは自社の事業の中で各種の計画を実行に移します。ただし、現在はまだ各社ともにサステナビリティ経営への取り組みは模索中といった状況です。

そのため、一度定めた目標や手段も、効果を検証しながら見直していく必要があるでしょう。また、人事面では、サステナビリティ経営に基づいた行動をした社員を評価するための仕組みを整備することも有効です。

サステナビリティへの取り組みを外部に発信

サステナビリティへの取り組みを外部に発信するためには、コーポレートサイトでの発信が重要です。コーポレートサイトは、ステークホルダーとのコミュニケーションの場としても機能します。

近年は、自社のサービスやブランドの社会での立ち位置を、ストーリーを意識して伝える企業が多いです。これにより、自社のサービスが社会に根付いていることを効果的にアピールできます。

企業のサステナビリティへの取り組み事例

サステナビリティ経営において、各社が置かれている状況や解決すべき課題はさまざまです。そのため明確な正解や手がかりが、すぐに掴めるわけではありません。どのようなことから手をつければよいのか、わかりづらい面もあるでしょう。

ここでは複数の企業の取り組みを紹介します。

スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

未来に向けてのビジョンとして「リソースポジティブ(地球から得たもの以上を還元)」を掲げるスターバックスは、コーヒービジネスを通じてさまざまなサステナビリティ活動を実施しています。

コーヒー生産の面では、コスタリカに農園を購入し、新しい品種やツールの研究開発を行うなど、世界中の生産者がより生産的でサステナブルなコーヒー栽培を実行できるような取り組みを実施しています。

また、コーヒーの購買など調達面では、コーヒーの市場価格にプレミアムを上乗せした金額で購入したり、実際の購入の数年前から購入を確約したりするなど、生産者との長期的な関係構築に心血を注いでいるのが特徴です。

参考:株式会社 ともにコーヒーのサステナブルな未来をつくる|スターバックスジャパン

コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタ株式会社では、以下の5つを重要課題として特定し、2030年におけるあるべき姿を明確化しています。

  1. 働きがい向上および企業活性化
  2. 健康で質の高い生活の実現
  3. 社会における安全・安心確保
  4. 気候変動への対応
  5. 有限な資源の有効利用

このうち、例えば気候変動の対応に関しては、ワークフローやサプライチェーンの管理による環境負荷削減に向けて取り組みを実施しています。同社では、直接生産に使用する資材(直接材)と間接的に生産に必要な資材(間接材)とに分けて調達を行っていますが、このうち直接材の調達においては、生産拠点に近い地域から調達を行っているそうです。

これにより、物流コスト削減や環境負荷低減を図ることができました。また、現地調達が可能な資材については生産拠点の近くで調達するリージョナル調達を基本としています。

参考:サステナビリティ|コニカミノルタ株式会社 

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では、「トヨタ基本理念」を基礎に「トヨタフィロソフィー」を取りまとめ「幸せの量産」を掲げています。その活動の一環として、2015年から「人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ」および「水環境インパクト最小化チャレンジ」の策定・実施を開始しました。

活動はさまざまですが、例を挙げると「人と自然が共生する未来づくりへのチャレンジ」では「自然と共生する工場」というテーマで、従業員自らが緑地を整備しています。専門家の指導を受けながら、セイタカアワダチソウなどの外来種の駆除を目的に、繁殖を抑制できるタイミングで除草を実施中です。

その他では、従業員による駐車場付近への植樹など、継続的に植樹活動を実施し自然共生活動へと繋げるなど、非常に多様な活動を行っています。

参考:サステナビリティ|トヨタ自動車株式会社

もっと詳しく!サステナビリティに関するおすすめ論文と要約

サステナビリティに関する論文や情報を要約して紹介します。

サステナビリティ経営戦略における P2M の役割

本論文は、サステナビリティ(持続可能性)を重視する現代の経営戦略において、プロジェクト・プログラムマネジメント(P2M)が果たす役割に焦点を当てています。伝統的な経営戦略は財務的利益を主眼に置くが、地球環境と社会に対する懸念の高まりに伴い、企業は社会貢献と環境保全を重視しながら利益を追求することが期待されています。

論文はまず、サステナビリティ経営戦略の概念について検討し、これまでの研究をレビューします。サステナビリティ経営における様々な管理手法が紹介され、特にサステナビリティ・バランスト・スコアカード(SBSC)などのツールに注目します。さらに、組織と組織能力の重要性について考察し、サステナビリティ経営を推進するためのマネジメントツールとして「マネジメント・コントロール」の限界点を指摘します。

続いて、P2Mの概念とそのサステナビリティ経営戦略への応用可能性について議論します。P2Mは、経営システムと技術システムを統合し、全社戦略と実行領域の関係を考慮する新しいマネジメント手法として提案されます。サステナビリティ経営においては、「財務的価値」と「社会的価値」の両方を重視し、持続可能性を考慮した製品やサービスの開発が必要であるとされています。

最後に、実際の企業例を挙げながら、サステナビリティ経営の実践においてP2Mの適用が有効であることを論じています。サステナビリティ経営を推進する組織の設立、組織能力の向上、ステークホルダーとのコミュニケーションなどが重要な要素として取り上げられています。

総じて、この論文はサステナビリティ経営戦略の必要性と、その実現に向けてP2Mがどのように貢献できるかを探求しています。

出典:J-STAGE「サステナビリティ経営戦略における P2M の役割」

環境経営からサステナビリティ経営への変遷の系譜

本論文は、持続可能な開発(サステナビリティ)への企業経営の進化を論じています。1987年に提唱された持続可能な開発の概念は、環境と経済成長の調和を重視し、その後の企業経営に大きな影響を与えました。日本では、1990年代から環境経営が注目され、ISO14001などの環境マネジメントシステムが普及しました。さらに、CSR(企業の社会的責任)経営が国際的に展開し、企業が社会的、環境的責任を果たすことが求められるようになりました。CSRの背景は国によって異なり、日本では環境問題解決、アメリカではフィランソロピー(慈善活動)、EUでは失業問題解決が起源となっています。

サステナビリティ経営は、これらのCSR活動に加え、持続可能な開発の原則を組み入れたものです。企業は経済成長のみならず、社会的責任や環境保護にも重点を置く必要があり、これが国際的なビジネス環境において重要な要素となっています。特に、ISO26000やSDGs(持続可能な開発目標)は、企業が取り組むべき具体的なガイドラインを提供しており、グローバル企業におけるCSR、CSV(共有価値の創造)、環境経営の実践を促しています。また、コーポレートガバナンスやスチュワードシップコードも、企業経営における透明性と責任ある投資の重要性を示しています。これらの動きは、企業が社会全体の持続可能な発展に貢献するための枠組みとして機能しています。

出典:KUISs-MAPS「環境経営からサステナビリティ経営への変遷の系譜」

監修者の編集後記 -サステナビリティについて-

この記事では、サステナビリティに関するさまざまな指標や考え方をお伝えすると同時に、実際の企業の取り組みについて見てきました。

本文中でもある通り、現代は消費者の間でも環境や社会に配慮した商品・サービスを選びたいという傾向が高まっています。

今後は、サステナビリティ経営が1つのスタンダードと見なされる時代になりつつあるといえるため、今回の記事を参考に、ぜひ取り組みを行っていただければ何よりです。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。