SDGsの意味を簡単に説明!取り組み事例も紹介

この記事のポイント

  • SDGsとは、国連が提唱する持続可能な世界の実現のための開発目標です。
  • 企業はSDGs目標の達成に意欲的に取り組むことで、従業員エンゲージメントの向上や企業イメージの向上などさまざまなメリットを得ることが期待できます。
  • 企業におけるSDGsへの取り組みを推進するためには、主力となる事業活動を圧迫しない形で活動を展開することが成功のポイントです。

SDGsとは?

SDGsの意味を簡単に説明!取り組み事例も紹介

SDGs(Sustainable Development Goals)とは「持続可能な開発目標」の略称で、2015年9月にニューヨーク国連本部にて採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている、より良い世界を目指すために設定された目標です。

SDGsは、2030年までに持続可能な未来を実現することをゴールとして、貧困削減や教育の普及などの地球上で起きているさまざまな課題に対する目標で成り立っています。

参考:2030アジェンダ|国際連合広報センター「

SDGs17の目標とは

SDGsでは「誰一人残さない(leave no one behind)」という理念を掲げ、地球上の全ての国や人々、全ての部分を対象に17の開発目標を定めています。

17の目標は、貧困人権ジェンダー自然環境などの各テーマ別に設定されており、それぞれの目標を、3つの階層からなるウェディングケーキのような構造に分類してまとめることができます。

SDGsウェディングケーキ

引用:The SDGs wedding cake|Stockholm Resilience Center

下層から「環境」「社会」「経済」の順で各階層が支え合い、その最上層に置かれているのが、全ての目標を協力して達成することを目指す、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」です。

「SDGsウェディングケーキ」と呼ばれるこのモデルを用いることで、17の目標の関係性やSDGsの全体像をより視覚的に理解するできます。

ここからは、各階層にどのような目標が設定されているのかを見ていきましょう。

環境に関する目標

SDGsウェディグケーキの最下層は「生物圏」と呼ばれ、人々が生きるために必要な環境に関する目標が全体の土台となっています。

生物圏に分類される目標は以下の4つです。

  • 目標6「安全な水とトイレを世界中に」
  • 目標13「気候変動に具体的な対策を」
  • 目標14「海の豊かさを守ろう」
  • 目標15「陸の豊かさも守ろう」

このように自然環境に関する目標が中心となっており、私たちが生きる社会が豊かで安全な自然環境によって支えられていることを表しています。

社会に関する目標

SDGsウェディングケーキの中間層は「社会圏」と呼ばれ、以下の8つの目標が分類されます。

  • 目標1「貧困をなくそう」
  • 目標2「飢餓をゼロに」
  • 目標3「すべての人に健康と福祉を」
  • 目標4「質の高い教育をみんなに」
  • 目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
  • 目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」
  • 目標11「住み続けられるまちづくりを」
  • 目標16「平和と公正をすべてのひとに」

社会圏では、人々が生きる社会に関する目標で成り立っており、国際化が進む社会の中で生まれている格差の解消という点が重視された内容となっています。

経済に関する目標

SDGsウェディングケーキの上層は「経済圏」と呼ばれ、以下の4つの目標が分類されます。

  • 目標8「働きがいも経済成長も」
  • 目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
  • 目標10「人や国の不平等をなくそう」
  • 目標12「つくる責任つかう責任」

経済圏は、さらなる経済発展を目指すための目標で成り立っており、持続可能な「環境」「社会」という基盤の上に経済が成り立っていることが示されています。

参考:The SDGs wedding cake|Stockholm Resilience Center

SDGs169のターゲットとは

SDGsでは、先述の17の目標にひもづく形で169のターゲットが設定されています。

この169のターゲットは、各目標における具体的にどのようなことに取り組むかといった行動指針が示されたものです。1つ例を挙げてみましょう。

目標8「働きがいも経済成長も」

ターゲット8.5:2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一価値の労働についての同一賃金を達成する

引用:SDGsグローバル指標|外務省

さらに169のターゲットを補完する形で、効果測定の指標となる「失業率」や「平均賃金」など232(※重複を除いた数)の指標がターゲットごとに設けられています。

なぜ企業はSDGsに取り組むべきなのか?

地球上のさまざまな課題解決を目指すために設けられたSDGsですが、企業経営においても重要性を増しています。経営に適切な形でSDGsを取り入れることで、企業はさまざまなメリットを得られることが期待できるため、近年は企業でも意欲的にSDGsに取り組む傾向となっています。

ここからは、SDGsに取り組むことで期待できる代表的なメリット4つをみていきましょう。

企業イメージの向上

SDGsへの取り組みは、企業のイメージ戦略においても高い効果を発揮することが考えられます。この背景として、近年、企業の社会的責任を問われる風潮が強まっていることが挙げられるでしょう。企業は短期的な営利目的で事業活動を進めるのではなく、地球の一員として自然環境や社会に配慮した経営姿勢が求められるようになったためです。

持続可能な社会の実現に積極的に取り組むことによって、自社の持続的な成長につなげるといった好循環を生み出している企業は、顧客はもちろん、取引先や金融機関などのステークホルダーに対し、より良いイメージを与えることができます。

投資家からの支持獲得

SDGsの観点から経営を行う「SDGs経営」や「サステナブル経営」は、投資判断を下す際の重要な指標となっています。

2021年7月に日経リサーチが実施した調査では、SDGs経営がもたらす効果として、多くの企業が「投資家からの現時点の評価が高まる」と考えており、調査に応じた企業の3割が実際に評価アップを実感していると答えています。

投資家からの支持を獲得することで企業の社会的信用が高まることから、資金調達や取引先確保などさまざまな場面において、有益な効果を実感できるでしょう。

参考:SDGs経営の効果はどこに?投資家評価やブランド力に相関|株式会社日経リサーチ

社内のモチベーション向上

SDGsの取り組みは、より多くの従業員が満足度を感じながらモチベーション高く働ける職場環境や働き方の実現にも貢献します。

多様性・透明性を重視した組織づくりや、従業員エンゲージメント向上などに企業が意欲的に取り組むことで、従業員が自分の仕事に対して、誇りや共感、やりがい・満足感を感じられるようになることが期待できます。

従業員たちが高いモチベーションで仕事に取り組めるようになった結果、組織の生産性向上や、提供している商品やサービスの品質向上、そして業績アップという新たな好循環が生み出されていくでしょう。

優秀な人材の採用

SDGsへ意欲的に取り組むことによって企業イメージが向上すると、入社を希望する優秀な人材が増えることが期待できます。

中でもZ世代は「SDGsネイティブ」とも言われ、企業が自然環境や人権、ジェンダーなどに配慮した事業活動を行うことは当たり前とされています。そして、自身が従事する仕事や企業に対してもSDGsの目標達成に貢献できることを重視する傾向も見られています。

若手人材を中心とした優秀な人材に「選ばれる企業」の条件として、「SDGsへの取り組み実績」はスタンダードになりつつあるのです。

参考:『企業がSDGsに取り組んでいることを知ると、志望度が上がる』と回答した学生が7割を超える。『仕事を通して社会課題の解決に貢献したい』の声/2025年卒アンケート|株式会社学情

SDGsの推進状況・データ

2030年までに17のSDGs達成を目指し各国が取り組みを進めている中、その進捗状況に関する調査からさまざまな課題が浮き彫りになっています。

ここからは、2023年11月時点で公表されている調査結果やデータをもとに、SDGsの進捗状況にみられる3つの特徴について解説していきます。

世界的にSDGsの進行が停滞

国際的な研究機関であるSDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が発表した全世界におけるSDGsの達成状況の報告によると、全世界におけるSDGsの達成状況は2019年以降ほとんど変化が見られず、停滞あるいは後退状態にあるとされています。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が大きな影響を与えており、さらに2022年から続いているロシアによるウクライナ侵攻で引き起こされた世界的な食糧不足や軍事費の増大が今後もさらにSDGs達成を遠ざけていくと考えられています。

各国の進捗格差が深刻化

国際情勢が混迷を深める中、各国のSDGsの取り組み状況にも「格差」という課題が見えてきています。

先述のSDSNの調査では、低所得国の大半においてSDGsの進行が「停滞」または「減少」している一方で、高所得国の大半が「順調」または「緩やかに上昇」している傾向にあり、各国間の所得格差がSDGsの進行状況にも影を落としている現状が明らかとなっています。

この格差は拡大傾向が続いており、世界規模で2030年までの目標達成が難しい方向へと進んでいると言えるでしょう。

達成度ランキングにおいて日本は21位へ後退

SDSNが作成した国別のSDGs達成度ランキングにおいて、日本は過去最高位だった2017年の11位から下降が続き、2023年には21位まで後退しています。

日本の達成状況評価の中で、貧困や教育・福祉・安全な町づくりなどに関する項目の達成状況は高く評価されています。

その一方で、ジェンダー平等や気候変動、自然環境保護に関する取り組みに対する評価が著しく低くなっており、今後の目標達成に向けたさらなる取り組みが大きな課題となっています。

参考:Sustainable Development Report 2023|Sustainable Development Solutions Network

SDGsの取り組み事例

「SDGsへの取り組みを推進したいけど、何をすればいいのかわからない」「本業の事業活動に影響を及ぼしそうで、なかなか着手できない」など、企業としてどのようにSDGsに取り組んでいくべきかを悩んでいる方は少なくありません。

ここからは、SDGs推進に全社を挙げて取り組んでいる日本企業の取り組み事例2つを紹介してきますので、ぜひ参考にしてください。

三井不動産株式会社の事例

不動産大手の三井不動産株式会社は、グループ全体でSDGsにて提唱されている17全ての目標に対し、さまざまな取り組みや事業プロジェクトを展開しています。

同社の取り組みの大きな特徴は、17のSDGs目標をローカライズし、不動産事業会社としての強みや財産を最大限活用しながら社内でのSDGs推進活動を実施している点にあります。

例えば、目標3「すべての人に健康と福祉を」に対しては、住居者の健康と自然環境への配慮を両立したスマートウェルネス住宅やシニアレジデンスを開発し、不動産会社の強みを活かす形で目標達成に取り組んでいます。

参考:三井不動産グループのSDGsへの取り組み事例|三井不動産株式会社

大和ハウス工業株式会社の事例

大手住宅総合メーカーの大和ハウス工業株式会社では、住宅メーカーとして「まちをつくってきた責任」ということに焦点を置き、17の目標の中で自社との親和性の高い目標に焦点を絞り、社内制度の設計や施設建設などの具体策を実施しています。

三井不動産と同様に「住宅メーカーだからこそできること」に注力した取り組みが特徴であり、中でも同社が力を入れているエネルギー事業に関連する取り組みは注視すべきポイントです。

同社のSDGsの取り組みは、太陽光・風力発電施設やエネルギー自給型オフィス、エネルギー効率の良い工場の設計など、主力事業に注力することで自ずとSDGs目標が達成されるような仕組みです。その点は多くの企業にとって参考となるのではないでしょうか。

参考:SDGs取り組み事例一覧|大和ハウス工業株式会社

マネーフォワードグループのSDGsの取り組み事例|Society Forward

マネーフォワードでは、「Society Forward(社会をもっと前に)」をコンセプトに3つの目標を掲げ、その目標を達成することでSDGsの目標達成に貢献することを目指しています。

ここからは私たちが掲げた3つの目標ごとに、具体的な取り組みを紹介していきます。

多様なパートナーとの共創により、社会のDXに貢献

当社では、社会全体のDX化を加速させることで、企業の競争力および生産性向上を促し、競争激化が著しいビジネス環境においても、持続可能な企業経営と経済発展が実現できる社会を築いていくことを目指しています。

全国の金融機関や事業会社など、多様な事業パートナーと強固な協力体制を築き、よりスピーディーかつ効果的なDX化を実現していくことで、以下のSDGs目標の達成にも貢献しています。

  • 目標8「働きがいも経済成長も」
  • 目標12「つくる責任つかう責任」
  • 目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

より良い社会システムの実現を目指した活動

企業会計ソフトを主軸としてさまざまな金融系ウェブサービスを展開している当社では、金融における新たなエコシステムを構築することで、より良い社会システムを実現することを目指しています。

政府や官庁、さまざまな業界団体と連携し、既存の金融制度の改革やFintech導入による業界全体のアップデートを促す一方で、すべての世代の人々に対し金融リテラシー向上の機会を提供すべく、ユーザー向けイベントやコミュニティを運営することで、以下のSDGs目標の達成にも貢献しています。

  • 目標4「質の高い教育をみんなに」
  • 目標10「人や国の不平等をなくそう」
  • 目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

環境に配慮した経営の実践

当社では、環境にやさしい社会の実現のために、自然環境への負荷を抑えるさまざまな社内活動を進めると同時に、より多くの企業と個人が自然環境に配慮した形で経済活動を進められるサービスを提供しています。

リモートワーク導入による社内業務のペーパーレス化やオフィスにおける再生可能エネルギーの利用などの資源の利用削減や再利用を通じて、以下のSDGs目標の達成にも貢献しています。

  • 目標15「陸の豊かさも守ろう」

参考:Society Forward|株式会社マネーフォワード

もっと詳しく!SDGsに関するおすすめ論文と要約

SDGsに関する論文や情報を要約して紹介します。

持続可能性の規範からみた SDGsの構造分析

持続可能な開発目標(SDGs)の構造分析に関する論文です。SDGsは、環境、経済、社会の面で持続可能な発展を目指す17のゴールと169のターゲットから成り立っています。この分析では、SDGsの意義として、具体的なゴールとターゲットの提案、社会面の明確化、そして環境、経済、社会の統合性の再確認が挙げられています。

しかし、SDGsにはいくつかの問題点も指摘されています。その中には、複雑で非構造的なターゲット、既存の取り組みの正当化、国レベルの課題に偏重し地域の課題に対応しきれていない点などがあります。これらの問題を解決するためには、持続可能な発展の規範に基づいたゴールの設定、根本的な問題への対応、そして地域主体の取り組みが重要であるとされています。

また、SDGsの活用にあたっては、持続可能な発展を目指す社会像の明確化、転換に関する議論の活性化、そして住民や従業員の参加を重視したガバナンスが必要であると提案されています。これにより、SDGsをより効果的に活用し、持続可能な社会への転換を促進することができると結論づけられています。

出典:持続可能性の規範からみた SDGsの構造分析|J-STAGE

SDGs をめぐる現実―機能的特徴と指標から考える―

SDGsの達成に向けた現実的なアプローチと課題を探求し、自発的な評価とインセンティブを通じて持続可能な開発を促進することの重要性を指摘しています。

持続可能な開発目標(SDGs)についての分析を提供しています。SDGsは、2030年までに「誰一人取り残されない」世界を目指す国連の国際目標です。この目標は、人間活動による地球環境への影響と経済成長の限界に対する危機感から生まれました。

著者は、SDGsの特徴とそれを支える指標に焦点を当てています。科学との連携が重要であり、学術文献を通じて目標の理解を深めることが強調されています。SDG指標は、目標の達成度を測るために開発され、国連加盟国はこれらの指標に基づいて進捗を報告します。

出典:SDGs をめぐる現実―機能的特徴と指標から考える―|専修大学学術機関リポジトリ

SDGsの目標達成に向けて!企業の持続可能な取り組みを始めよう!

2015年にSDGsが国連で採択され、目標達成の期限とされる2030年まで日数が刻一刻と迫り、SDGsへの取り組みは折り返し地点を迎えました。

今日、異常気象や熱波・干ばつなどの気候変動が世界規模で常態化し、企業を取り巻くビジネス環境が厳しさを増す中、改めて持続可能な企業のあり方を見直す動きは各地で強まっています。

今回紹介した企業事例を参考に、自社の事業活動を圧迫することなくSDGsの目標達成につながる活動を始めてみてはいかがでしょうか。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。