EQとは?IQとの違いやEQテスト、高い人が向いている仕事を解説

この記事のポイント

  • EQは、「こころの知能指数」とも呼ばれ、「自分や周りの人たちの感情を察知し、適切に扱う能力」です。
  • 近年、多様化する社会において柔軟な対応力が求められる中、EQはビジネスシーンで重要な能力として注目されています。
  • EQを高めることで、コミュニケーション能力の向上、ストレス耐性の強化、問題解決力の向上が可能になり、結果として職場環境の改善やリーダーシップの育成にもつながります。

EQとは?

EQとは?IQとの違いやEQテスト、高い人が向いている仕事を解説

EQとは、Emotional Quotientの略語で「こころの知能指数」と日本語訳されています。1990年に米国のピーター・サロベイ博士とジョン・メイヤー博士によって提唱された概念です。

EQは、自分や周りの人たちの感情を察知し、適切に扱う能力です。EQを高めることで、チームワークの向上や、リーダーシップの発揮など様々なメリットが期待できるため、ビジネスシーンで注目されています。

IQとの違い

IQとは、Intelligence Quontientの略語で「知能指数」と呼ばれています。IQすなわち知能指数は、頭の良さとして知られていますが、知能を数値化したものです。IQが高いほど、頭の回転が速く記憶力が高いということになり、学業で良い成績を残すことが少なくありません。

EQとIQとの違い

IQは先天的な能力で生まれつきの要素が大きいため、IQを高めるためにトレーニングをしても飛躍的に向上させるのは困難です。

一方、EQは感情をコントロールする能力や対人関係に関わる能力であり、後天的に身につけて伸ばしていくことができます。

なぜEQが、今必要なのか

社会の変化に伴い、ビジネスでは柔軟な思考が重要になっています。AIの台頭により、人間はより高度な業務を担当するようになりました。そのため、企業は変化への対応力や感情をコントロールする能力、つまりEQの高い人材を求めています。

世界経済フォーラムにおいても2025年に必要なスキルとしてEQを挙げ、日本でも多くの企業がEQ研修を実施しています。このように、EQの重要性は今後さらに高まることが予想されます。

参考:The Future of Jobs Report2020|WORLD ECONOMIC FORUM

EQが高い人の特徴

EQが高い人は、ビジネスや日常生活において強みとなる優れた特徴を持ち合わせています。ここからは、EQが高い人の特徴についてご紹介します。

柔軟性がある

EQが高い人は、固定概念にとらわれずに、多角的な視点を持ち合わせているため、様々な価値観を受け入れられます。変化に対しても柔軟で、いつもと違う状況でも感情に振り回されず、落ち着いて対応することが可能です。

決断力がある

人が決断するときには、失敗や不安、葛藤といった感情を乗り越えて、意思決定を行います。EQが高い人は、自分の感情を制御する力があるため、重要な決断の場面でも感情に振り回されず、ベストな判断を行えるでしょう。

感情的にならない

誰しも感情の動きはあるものですが、EQが高い人は常に自分の感情を把握することが可能です。ストレスフルな状況であっても感情に引っ張られることなく、冷静に物事に対処することができます。

寛容である

EQが高い人は、自分と価値観が異なる意見も、相手の立場で考えて受け入れることができます。自分の感情はいったん置いて相手に共感できる心の広さがあるため、周囲の人から信頼される存在になりやすいでしょう。

失敗を受け止められる

EQが高い人は、失敗してもクヨクヨと思い悩むことなく、次につながる行動を取ることが可能です。失敗を学びと成長の機会ととらえて、次につなげる力を持っています。

他人に共感できる

EQが高い人は、相手の立場になって気持ちを理解し、共感することができます。相手が安心して話を打ち明けられるため、深い信頼関係を築きやすいでしょう。他人に共感できる力は、リーダーシップやチームワークにおいて重要な能力だといえます。

EQテスト・診断方法

EQを測定する代表的な方法の中で、とくに企業やビジネス研修で用いられる検査を2つご紹介します。

EQI 行動特性検査

行動面からEQを測定し、個人の強みや弱み、理想と現状のギャップを把握できます。自己の育成ポイントを見極めるのに役立つでしょう。

参考:EQ(こころの知能検査)「EQI行動特性検査」|公益財団法人 日本生産性本部

EQS 情動知能スケール

日本のEQ研究者が開発した検査で、EQの詳細な因子を測定できます。企業の採用、人事管理、研修などで活用されています。

参考EQS エクス・EQ(情動知能)スケール|実務教育出版

EQが高い人が向いている仕事やポジション

EQが高い人は、ビジネスで活かせる優れた特徴を持っています。ここでは、EQの高さを強みとして発揮しやすい仕事やポジションをご紹介します。

マネージャーやリーダー

EQが高い人は、部下の気持ちを理解し適切に対応できるため、マネージャーやリーダーに向いています。他人の感情を読み取り、適切なフィードバックでメンバーの力を引き出せるでしょう。問題解決能力も高く、チームを効果的に導けます。

営業職

営業職では、顧客と良好な信頼関係を構築することが重要です。EQが高い人は、相手の気持ちを察し、思いやりのある行動を取れます。顧客のニーズを適切に汲み取り、最適なサービスを提案できるため、営業職で大きな強みとなります。

医療関連・カウンセラー

医療やカウンセリングでは、患者や相談者の感情を理解することが重要です。EQが高い人は感情を敏感に察知し、適切な言葉かけができるため、治療やカウンセリングの効果を高められます。また、自身のストレス管理にも優れているため、メンタルヘルスを保ちながら仕事に取り組めるでしょう。

教育関連

教育では、生徒一人ひとりの個性や感情を理解し、適切に指導することが重要です。EQが高い人は、各生徒の特性を把握し、効果的なアプローチを取れます。生徒との信頼関係を築きやすく、悩みに共感して的確なアドバイスを与えられるため、教育関連の仕事に適しています。

人事や採用担当

人事や採用担当には、候補者の適性を見抜く能力が必要です。EQが高い人は、面接で候補者の感情を理解し、潜在能力を見極められます。また、組織内の人間関係も把握できるため、適材適所の配置が可能です。これにより、組織の生産性向上にも貢献できます。

EQを構成する能力

EQを構成する4つの能力

EQが発揮するためのプロセスには、4つの能力を順番に働かせる必要があります。ここからは、EQを構成する4つの能力について解説します。

感情の識別

EQの第一歩は「感情の識別」です。自分や他人の気持ちを正確に読み取る力で、EQの中で最も重要です。表情・声のトーン・言葉選びから相手の感情を理解し、自分の感情も的確に把握します。

この能力が高いと、上司・同僚・顧客の気持ちを敏感に感じ取れ、円滑な人間関係を築く基礎となります。ビジネスシーンでも大切なスキルです。

感情の利用

次のステップの「感情の利用」は、問題解決や課題達成に感情を活用する力です。行き詰まったときに過去の成功体験を思い出して前進したり、やる気を引き出して前向きになったりします。

この能力を磨くと、新しいアイデアの創出やストレス管理が上手くなり、生産的な行動につながります。感情を上手に使うことで、困難を乗り越え、より効果的に目標を達成できるようになるでしょう。

感情の理解

3つめのステップである「感情の理解」は、自他の感情の発生理由と変化を考える能力です。たとえば、不満を示す顧客の気持ちの原因を理解し適切に対応すれば、信頼関係を築きやすくなります。

この能力を高めることで、ビジネスでのトラブル解決やクレーム対応が上手くなり、サービス品質の向上につながります。感情の理解は、円滑な人間関係とビジネスの成功に欠かせない要素です。

 感情の調整

最終ステップとなる「感情の調整」は、他人の感情に適切に対応するため、自分の感情をコントロールする能力です。たとえば、上司や取引先とのコミュニケーションで自分の感情を適切に管理し、建設的な対話を実現します。

この能力が高ければ、相手の気持ちに合わせたコミュニケーションが可能になります。結果として、職場の人間関係が円滑になり、ビジネスでの成果向上にも大きく貢献できるでしょう。

日常でEQを高める方法

EQは生まれつきの能力ではなく、日々の意識的な取り組みで誰でも高められます。ここでは、日常生活でEQを向上させるための具体的な方法をご紹介します。

人の良いところを見つける

EQを高めるためには、人の良い点を積極的に見つけることが大切です。人には必ず長所や強みがあります。意識的に人の良いところを見つけるようにすると、相手を肯定的に捉える習慣がつくでしょう。結果として、他人への共感力を高めることにもつながります。

相手に寄り添う

相手の立場に立って考え、感情を理解することは、EQを高める上でとても重要です。相手の話に耳を傾け、共感的な態度で接するように心がけましょう。

また、相手が困っているときには、積極的に支援の手を差し伸べることも大切です。相手に寄り添うことで、自身のコミュニケーション能力も高まり、良好な人間関係を築くことができます。

感情をコントロールする

EQを高めるためには、自分の感情をコントロールすることが不可欠です。感情的になっているときには、一旦立ち止まって自分の感情を客観視してみましょう。

感情に流されるのではなく、冷静に状況を分析して適切な行動を取ることが大切です。リラックスできる方法や、自分に合ったストレス対処法を身につけることで、感情をコントロールしやすくなり、EQの向上につながります。

EQを高めるための人材育成方法

企業では、社員のEQを高める取り組みがますます必要になってきています。EQはトレーニングで高められるため、人材育成で取り組んでいくメリットがあるでしょう。ここでは、社員のEQを高めるための有効な方法を紹介します。

社員のエンゲージメント向上研修

研修では、相手の感情を考えながらコミュニケーションするトレーニングを行い、EQを高めます。チーム内で互いの長所を認め合う施策も効果的です。これにより、社員は会社への貢献を自発的に考え、行動するようになります。結果として、業務がスムーズになり、チームの結束力も強まるでしょう。

職場のメンタルヘルス対策

メンタルヘルス不調は対人関係が原因となることが多いため、EQを高めることが有効です。自他の感情理解やストレスケアを学び、望ましい行動への変容を目指します。これにより、コミュニケーションが改善され、組織内の人間関係が円滑になるでしょう。結果として、職場のメンタルヘルス向上につながります。

リーダー育成研修

EQの高いリーダーがいるチームは、良い雰囲気で高い成果を出せます。研修では、自己の感情理解と活用法、他者の感情理解と適切なコミュニケーションを学びます。これにより適切なリーダーシップが養われ、メンバーの自主性を引き出し、チーム全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。

EQの高さを人事評価に活用する方法

EQの高さはチームワークやリーダーシップに大きく影響するため、企業はEQの高い人材を確保することが重要です。ここでは、人事評価でEQの高さを見極めて活用する方法をご紹介します。

面接での質問を工夫する

EQに関連する質問を面接に取り入れます。例えば、チームでの成果や感情コントロールの経験を尋ねるなどです。回答内容だけでなく、表情や態度からもEQの高さを評価できます。

グループワークでの観察

グループディスカッションなどを通じて、感情コントロール力、共感力、柔軟性を評価します。特に意見対立時の対応や他人の意見を取り入れる姿勢から、EQの高さの判断が可能です。

EQ能力検査の活用

採用試験にEQ能力検査を取り入れるのも効果的です。自己認識、他人理解、感情管理能力などが数値化されます。面接やグループワークの印象と合わせて総合的に判断し、EQの高い人材を見極めましょう。

もっと詳しく!EQに関するおすすめ論文と要約

EQ教育の効果測定のための尺度開発

感情知性(Emotional Intelligence, EQ)の重要性とその教育方法について述べられています。感情知性とは、自分や他者の感情を理解し、適切に表現・管理する能力であり、対人コミュニケーションや社会生活において重要な役割を果たします。

本稿では、大学教育における感情知性の訓練の実践例として、徳山大学の事例が紹介されています。同大学では、感情知性を「EQ力」と定義し、学生が社会で成功するために必要な「総合的な人間力」を育成するために、EQ教育プログラムを導入しています。

特に、新入生を対象とした「EQトレーニングⅠ」では、自己認識、感情のコントロール、チームビルディングなどのスキルを向上させるためのカリキュラムが実施されており、その教育効果についても具体的なデータを用いて報告されています。

この取り組みは、感情知性の訓練が社会的成功に寄与する可能性を示すものであり、今後の大学教育のモデルとして注目されています。

参考:EQ教育の効果測定のための尺度開発

監修者の編集後記-EQについて-

EQは、自他の感情を察知し、適切に扱う能力です。近年、ビジネス社会においてEQの必要性は高まっています。EQを高めることは、チームワークの向上、リーダーシップの発揮など多くの場面で効果を発揮するでしょう。

しかし、EQの向上は一朝一夕には実現しません。組織全体で長期的な視点で、継続的に取り組むことが大切です。日々の業務の中でEQを意識し、実践することで、個人と組織を成長させていきましょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。