ファーストペンギンの意味とは?逸話は真実?日本人の例も紹介
この記事のポイント
- ファーストペンギンとは、未開の領域を切り開く人。
- ファーストペンギンのメリットは優先的な利益獲得。
- ファーストペンギンに必要な力は行動力・思考力・持久力。
目次
ファーストペンギンとは?
ファーストペンギンとは、前人未踏の領域にリスクを知った上で挑戦する人のことです。今まで誰も経験していない、誰も思いつかなかったといった、未開拓の分野に自分の信念で挑む人を「ファーストペンギン」といいます。
語源は、群れの中で先頭の1羽が行動すれば他のペンギンも先頭に倣って行動する動物のペンギンの習性と言われています。加えて、海中にはペンギンの天敵であるシャチやトドがいるので、食料を求めることはペンギンたちにとって大変危険な行為ですが、ペンギンは食料を確保するのに、海に飛び込まなければなりません。最初に海に飛び込むペンギンがいなければ他のペンギンも飛び込まず、陸上では全員が食料を得らないのです。
また、最初のペンギン1羽が食料を求めに海に飛び込めば、後に続くペンギンの食料も確保できるでしょう。ただし、最初の1羽は対抗するペンギンがいないため、食料を多めに得られ、他のペンギンたちと比べて安泰ということもあります。
非常に危険な要素がある海に食料を求めて最初に飛び込むペンギンの姿と、未開拓の地を勇敢に進む人間の姿を重ね、ビジネス界の先駆者を「ファーストペンギン」と呼ぶのです。
ドラマの『ファーストペンギン』とは
実際にテレビドラマでもファーストペンギンを題材にしたドラマが、2022年の10月~12月に放映され、漁業未経験のシングルマザーが、漁業の革新的なビジネスモデルを構築する物語として話題を集めました。ちなみにドラマの実在モデルである坪内知佳さんは、2023年11月現在も鮮魚通販サイト「船団丸」を運営されています。
ファーストペンギンの逸話は真実?
ファーストペンギンにもいくつかの逸話があります。最初の1羽が海に飛び込む姿を勇敢だと感じているのは人間であり、ペンギンの世界でも同じように「勇敢なペンギン」とされているかは定かではありません。
また、一説によると、集団で行動するペンギン同士が最初に海に飛び込むことをお互いに嫌がって、押し合いをするうちに1羽が落ちてしまった、とも言われています。
その真意はペンギンにしかわかりませんが、いずれにしても最初に飛び込む1羽がリスクを負いながらも他のペンギンより多くの魚を得られる、という点に間違いはないでしょう。
パイオニアとの違い
ファーストペンギンと似た言葉に「パイオニア」があります。パイオニアとは、特定の分野で最初に物事を始めた人です。ファーストペンギンは新しい領域に挑戦し、利益を得た人を指しますが、パイオニアは成功して利益を生み出せば、ファーストペンギンとなるのです。
ファーストペンギンのメリット
未開拓の分野に果敢に挑み、成功を手にするファーストペンギンですが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ただ単に利益を得て賞賛を手に入れるだけがファーストペンギンのメリットではありません。ここでは、ビジネス上のファーストペンギンのメリットについて解説します。
利益を優先的に得られる
最初に行動を起こすファーストペンギンは競争相手が存在しないので、優先的に利益を得やすくなるのです。
また、その後に同業者が現れても起業当初からの顧客との取引があることや、パイオニアとして名前が知られていることによって新規顧客獲得も期待できるでしょう。
宣伝広告費の費用対効果アップ
企業として、最初に苦慮しやすいのは、自社や自社サービス(商品)知ってもらうことでしょう。多くの企業は、自社を知ってもらうためにさまざまな広告を展開しなければならないため、費用が発生します。
ファーストペンギンであれば、物珍しさや斬新なアイデアによって新境地を開拓すること自体が注目を集めます。多くの人たちに「知ってもらうこと」が実現しやすく、宣伝を打ってもその効果が得られやすいのです。
継続的な優位性を持てる
ファーストペンギンは、ビジネスにおいて「元祖」であることが強みになりやすく、後続する企業よりも優位性を保ちやすくなります。しかし、ビジネスでは元祖というだけでは足りません。ファーストペンギンであるということだけに固執していては、次々と現れる後続企業に顧客数や利益が逆転する可能性もあるでしょう。ファーストペンギンとして得たメリットをいかにして持続するか、という点が重要です。
初めての商品やサービスを利用する顧客は「もっとこうであってほしい」「こんなところが困る」という新たな要望を持つようになります。このような要望は、ファーストペンギンにとって優位性を保ったまま事業を継続するためには欠かせない重要な情報です。要望を満たせるイノベーションを繰り返しながら、新たなニーズを求め続け、自身が展開する事業のマーケットの動向に注目しましょう。あらゆる変化に迅速な対応を取ることができれば、ファーストペンギンとして、継続的な優位性を保てるでしょう。
ファーストペンギンのデメリット
革新的な事業にはリスクがつきものです。では、ファーストペンギンには具体的にどのようなデメリットがあるのでしょうか。
新規開拓の壁がある
全ての事業の進め方には、それぞれのノウハウがあり、新規開拓するのに壁があります。ファーストペンギンはノウハウを構築するところから始めなくてはなりません。当然、誰かから教えてもらうことはできず、自分の頭で考え、行動を繰り返しながら進み続けます。加えて、その先に成功があるかどうかの保証はありません。
すでに類似商品(サービス)があるリスク
「同じ、または類似する商品やサービスがすでに存在するリスクがある」という点もファーストペンギンにとってのデメリットです。
今の時代、インターネットを使えば、商品やサービスが存在していることが確認できますが、それらが「ない」ということを確認するのは難しいでしょう。そのため、自分がファーストペンギンだと思って開始した事業であっても、実はすでに存在する商品やサービスである可能性は否めません。
ただし、すでに存在する類似商品やサービスがあったとしても、顧客から大きな反響を得られていないという場合もあります。その場合、最初の1羽という意味でのファーストペンギンではありませんが、顧客のニーズを既存の商品やサービスに反映し、確立したビジネスへと展開させていきましょう。
このような取り組みによって新たなファーストペンギンとなる可能性は大いにあります。
ファーストペンギンに必要な力
今までになかった事業を自分の力で切り開いて行くファーストペンギンに憧れる方は多いことでしょう。ただ、「やってみたい」という気持ちだけではうまくいきません。
ここでは、ファーストペンギンになるために必要な3つの力について解説します。
まずはやってみる!という行動力
ファーストペンギンに必要な力の一つとして行動力があり、頭の中で思い描くだけでなく、まずは行動に移すというアクションは欠かせません。
ファーストペンギンがやろうとすることは、周囲からの反対があったり、周りからうまくいくはずがないという決めつけに阻まれたりするものです。しかし、周囲の声よりも自分の声を大切にし、泥臭く行動をし続ける、という行動力がファーストペンギンには必要といえるでしょう。
失敗をチャンスに変える論理的思考力
ファーストペンギンに必要な力として、論理的思考力が挙げられます。論理的思考力とは、感情や仕組み化されたものに左右されず、自分の頭で物事を論理的に考える力のことです。
例えば、ビジネスが思うように進まなくても、それをただの失敗として捉えたり、感情的になったり、従来の仕組みに淘汰されるようではファーストペンギンにはなれません。失敗をチャンスに変えるためには、何をどうすれば良いのか、という点にフォーカスして論理的に考えるという思考力が必要です。
トライアンドエラーを繰り返す持久力
ファーストペンギンはやること全てがファースト(=最初)です。当初のモデルと市場との間にうまくつながらない溝を発見するたびに、原因を探り、モデルの改善を図る取り組みをトライアンドエラーで繰り返します。
何度も失敗をする間にトライすることを辞めてしまえば、その時点で事業は終わりになるので、自分の信念を曲げず成功に導けるまで、名声よりも自分のビジョンを大切しましょう。そのためには、トライアンドエラーを繰り返せる心身の持久力が必要となります。
日本のファーストペンギンの例
日本の起業家の中にもファーストペンギンは存在します。今となっては知らない方がいないような有名な方も実はファーストペンギンです。ここでは、日本のファーストペンギンの例について紹介します。
三木谷浩史氏
三木谷浩史氏は、日本最大級の通販サイト「楽天」を立ち上げたファーストペンギンです。今では多くの方の日常であるeコマースですが、1997年の楽天の創業時は、日本ではインターネットが普及し始めたばかりであり、当時はインターネットを利用した買い物という概念がまだ浸透していませんでした。
楽天の誕生をきっかけに日本でもeコマースの認知度が上がり、三木谷氏は通販だけでなく、銀行や証券、モバイルや決済アプリなど、次々と新しい事業を興しました。現在でも三木谷氏は楽天グループ株式会社の代表取締役会長兼社長として、その手腕を揮っています(※2023年11月時点)。
関連サイト:楽天の歴史|楽天グループ株式会社
江副浩正氏
故江副浩正氏は、現在の株式会社リクルートホールディングスの創業者です。不特定多数に向けたマス広告が当たり前だった1960年に消費者の求める情報と企業が伝えたい情報をマッチングさせる仕組みを作ったファーストペンギンとして知られています。
大学在学中の江副浩正氏は、現在の株式会社リクルートホールディングスの前身である大学新聞広告社を立ち上げ、就職活動をする大学生が必要とする情報を集めた「企業への招待」を創刊しました。
現在では、消費者が求める情報がすぐに提供されるのが当たり前ですが、自分に必要な情報を集めることが困難だった1960年代、情報のマッチングを行うという事業は求人広告の地位向上にもつながったと言われています。
関連サイト:沿革・歴史|株式会社リクルート
山田進太郎氏
山田進太郎氏は、株式会社メルカリ(以下、メルカリ)の創業者です。2013年に株式会社コウゾウとして創設され、BtoCが当たり前だったマーケットにCtoCマーケットプレイス『メルカリ』を誕生させたファーストペンギンです。
楽しい、便利、役に立つ、そんなインターネットサービスを展開したいと考えた山田進太郎氏が選んだ事業がフリマアプリです。不要なものや他の方にとって価値があるものを出品し、必要な方が個人から購入する、というマーケットの先駆者として知られています。
関連サイト:トップメッセージ|株式会社メルカリ
広岡浅子氏
故広岡浅子氏は、大同生命保険株式会社の創業者です。明治・大正の時代に、女性初の炭鉱経営者として知られています。NHK朝の連続テレビ小説(2016年度後期)『あさが来た』のモデルとしても有名です。
1885年、当時の女性としては珍しい炭鉱への出資や買取、経営などに着手します。何度も失敗を重ねながら、優良炭鉱の経営者となりました。その後、女子の高等教育にも尽力したと言われています。
関連サイト:5分でわかる広岡浅子|大同生命保険株式会社
セカンドペンギンとは?
「セカンドペンギン」とは、ファーストペンギンの動向で問題がないことを見てから、その領域への参入を決める人のことです。
セカンドペンギンは、ファーストペンギンの失敗やビジネス要素の過不足を見て、ファーストペンギンの事業をより良いものにして提供します。ビジネスの世界では、セカンドペンギンも優れた実業家として知られています。
セカンドペンギンのメリット
セカンドペンギンには、ファーストペンギンとは違ったメリットがあります。
- 宣伝広告が比較的容易
- ファーストペンギンによるリスク回避
- 商品やサービスの改良・改善
セカンドペンギンだからファーストペンギンには、能力が及ばないということではありません。それとは反対に、セカンドペンギンだから成功するとも限らないことも知っておきましょう。
ファーストペンギンを育成するためには?
先に解説したように、ファーストペンギンには、行動力や思考力、持久力が必要です。では、ファーストペンギンとなり得る人材を育成するには、具体的にどのような教育が必要なのでしょうか。
ファーストペンギンを育成するためには、主に3つの教育が必要です。
ベンチマークの設定
ファーストペンギンの育成に必要なこととして「ベンチマークの設定」があります。ベンチマークとは「基準」のことです。ビジネスシーンでは「目標」というニュアンスでも使われており、例えば、目標とする人(メンター)や競合他社をベンチマークとしている倍があります。また、ベンチマークの設定は、自分が展開させようとしている商品やサービスが市場でどのような立ち位置にあるのかということもわかりやすくなります。どれくらいの需要があるのか、衰退している部分があるのならその理由は何か、という点を把握しておきましょう。
そして、ベンチマークしたファーストペンギンやその企業を目標に、自分自身もファーストペンギンとなれるよう、常に現状の見直しをしながらビジネスを進めます。
STEAM教育
STEAM教育とは、論理的思考や自由な発想・表現を目的とした教育理念です。ファーストペンギンの教育でも必要な要素の頭文字を取って「STEAM教育」と言います。
- S:Science(科学)
- T:Technology(テクノロジー)
- E:Engineering(ものづくり・工学)
- A:Art(芸術)
- M:Mathematics(数学)
STEAM教育はファーストペンギンの育成だけでなく、文部科学省も推進する総合学習です。例として、2022年度から高等学校で必修となったプログラミング教育があります。
アートシンキング
アートシンキングとは、常識や慣例に捉われず、自分の思考や信念を提案する思考法のことです。「こんなことがしたいけれど、常識で考えて無理だろう」などといった現実的な考えではなく、自由な発想と直観力で「この形で自分の信念を提案しよう」と考えられる力がアートシンキングです。ファーストペンギンの育成には欠かせない教育です。
監修者の編集後記-ファーストペンギンについて-
ファーストペンギンとは、自分の信念と勇気を持って、新しいビジネスを切り開いていく先駆者です。
世界はもちろん、日本にもたくさんのファーストペンギンが存在しています。日常的に使うことも増えた通販やフリマアプリ、今や当然である女性への高等教育など、現代に生きる私たちは多くのファーストペンギンから恩恵を受けています。
ファーストペンギンはこれからも世界中で次々と生まれ、私たち生活がより快適で豊かなものになることでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。