コミットメントとは?使い方や組織コミットメントを高める方法を解説

コミットメントとは?

コミットメントとは?使い方や組織コミットメントを高める方法を解説

コミットメント(commitment)とは、日本語で「傾倒、献身、深い関与」や「責任、専念」「義務、誓約」「約束・言質」などを意味する言葉です。比較的、幅広く使われる言葉ですが、責任感をもって主体的に関わっていくことや、その実行を約束をすることを指します。使われる文脈によって、さまざまに捉えられる言葉といえるでしょう。

ビジネスでのコミットメントの意味

ビジネスにおいてコミットメントという言葉が使われる際は、大きく分けて以下2点の意味で使われます。

  • 公約、約束または承認
  • 責任をもった関与・参加

例えば「社長のコミットメントが得られた」という使い方をした場合、1点目で挙げた「公約・約束または承認」の意味です。

一方「新たなプロジェクトにコミットメントする」という言い方の場合は、2点目に挙げた「責任をもった関与・参加」を意味します。この場合、単純に参加するだけでなく、全力で取り組むという意味がこめられている点は特長です。

心理学でのコミットメントの意味

心理学には「コミットメント効果」という言葉があります。新しいことを始めたときや目標を定めたときに、誰かに宣言することによって実現しやすくなる効果のことです。

他者に目標を宣言することで「やらなければならない」という気持ちや危機感が芽生え、モチベーションが高まるため、大きな効果が期待できるようになります。

金融でのコミットメントの意味

金融の世界でコミットメントという言葉が使われる場合は「コミットメントライン」という言葉が使われることもあります。コミットメントラインとは、企業と銀行があらかじめ決めた範囲内で、所定の審査無しに随時融資を受けられる上限額のことです。この場合、約束という意味のほうが近いでしょう。

企業はこの制度を利用することで、不測の事態での資金調達にあてられるなど、多くのメリットが得られます。

「コミットメントする」とは

「コミットメントする」とは、特定の目標や事柄に対して約束や誓約するという文脈で用いられることが多いです。また、ビジネスシーンでは「コミットする」など、略して用いられることもあります。

なお学術の領域では、ビジネスシーンとは異なる意味で使われることもあるため注意が必要です。例えば、経済におけるコミットメントは「その行動しか取れない具体的な仕組みを作ること」を指します。このように、文脈や領域によって意味が変化するため、適切な利用を心がけましょう。

コミットメントのと言い換え

コミットメントは横文字となるため、人によってはわかりづらいかもしれません。また意味の幅も広く、文脈に応じて言い換え方を変える必要もあります。

これに対して、日本語学の科学的研究を行う国立国語研究所は、コミットメントに対して「関与」と「確約」という2つの言い換えを提示している点が違いです。ビジネスシーンの多くでは、この2つのいずれかで通用するでしょう。

ただし前述の通り、学術の領域では別の意味で使われることもあるため、必要に応じて確認し、適切に言い換える必要があります。

コミットメントの使い方・例文

コミットメントが具体的にどのように使われるのかについて、例を挙げて見ていきましょう。さまざまなシーンでの利用が想定されますが、誤った用法とならないか迷った際の参考にしてください。

なお、本項では主にビジネスシーンにおける使用を想定しています。また、本文中のコミットメントは、適宜「コミット」という形で短縮しても問題ありません。

目標に関する例文

目標を掲げ、その達成を約束する場合の利用方法です。この場合、以下のような使い方が考えられます。

・「部署の営業成績25%増加をコミットメントします」

→この場合、コミットメントの意味は「約束」です。達成を約束する目標を掲げる際などに用います。

・「今期の我が社のコミットメントは、CO2排出量の15%削減です」

→会社としての公約を掲げる際に用います。

関与する場合の例文

特定の事柄に関与する場合の例文について見ていきましょう。

・「貴社の新規プロジェクトにコミットメントしたいと考えています」

→この場合は、プロジェクトへ関与するという強い意思表示になります。

・「当部署は本件にはコミットメントしません」

→特定の案件に対して、関与・介入しない旨の意思表示です。

組織コミットメントとは?

組織コミットメントとは、従業員の組織に対する帰属意識などを指す言葉です。企業と従業員の長期的な関係構築において、重要な要素の1つだといえます。愛社精神を伴い、従業員と会社の一体感が高まっている状態であれば、組織コミットメントが高い状態だといえるでしょう。

組織コミットメントは「情緒的コミットメント」「存続的コミットメント」「規範的コミットメント」の3要素に分けることが可能です。以下で、それぞれについて解説します。

情緒的コミットメント

情緒的コミットメントとは、同僚や会社そのものに対する愛情、または愛着に基づくコミットメントです。自社のサービスが好きで誇りをもっている状態であれば、情緒的コミットメントが高い状態といえます。

逆に、情緒的コミットメントが低い状態であれば、組織の一員であることのモチベーションも低く、退職につながりやすいでしょう。

存続的コミットメント

存続的コミットメントは、現在の立場で得られる報酬など、金銭などの損得に基づいて組織に属し続けるコミットメントのことです。そのため、別名「功利的コミットメント」とも呼ばれます。

それまでの実績や評価によって得られた報酬などが理由で、組織に残り続けたいと考える場合は、この存続的コミットメントが強く働いている状態です。安定思考に基づくコミットメントである点が特徴といえます。

規範的コミットメント

規範的コミットメントとは「組織に貢献すべきだ」と考えるコミットメントです。特定の理由や感情ではなく、無条件で会社のルールや方針に従う姿勢を表す概念で、規範意識の強い組織づくりのために必要なコミットメントだといえます。

規範的コミットメントの強い従業員は、ルールを遵守する意識が強い反面、自らの意思での変化を起こすことは苦手な点が特徴です。

組織コミットメントの影響

組織コミットメントは、上記の3要素によって複合的に計測され、高低することでさまざまな影響があります。組織コミットメントの高い従業員は、主体的に組織に関与しているため、遅刻や欠勤などが比較的少なくなると同時に、離職する可能性も低く生産性も高い傾向がみられます。

一方で、組織コミットメントの低い従業員は、遅刻なども多く、離職する可能性も高くなります。従業員全体の組織コミットメントが低い場合、組織全体の生産性の低下などの問題につながるため注意しましょう。

従業員の組織コミットメントを高める方法

前述の通り、組織コミットメントの高い従業員は、生産性が高い傾向にあります。そのため、従業員の組織コミットメントを高めることで、優秀な人員を確保しながら組織全体の生産性を押し上げることが可能です。

ここでは、どのようにすれば組織コミットメントを高められるかを解説します。

組織のビジョンや存在意義を明確にする

企業理念の浸透や、ビジョンを明確にし共有することは、組織コミットメントを高めることにつながります。また、従業員一人ひとりが同じ方向を向くことで、団結感も生まれやすくなるでしょう。

自社のあるべき姿などを明確にしたうえで、経営者からのメッセージなどを通じて、従業員に繰り返し伝えることが大切です。

適性に合わせた配置や職務分担

それぞれの適性に合わせた配置や業務分担を行うことで、組織コミットメントを向上させられます。従業員本人が「この仕事は自分に向いている」と思うことで、情緒的コミットメントが高まるためです。

一人ひとりの資質や性格を見極め、スキルアップや活躍が期待できる配置や職務分担を考えましょう。

コミュニケーション機会の創出

従業員間のコミュニケーションも、組織コミットメントを考えるうえでは重要です。特に、部署や役職の垣根を超えてコミュニケーションを取れるようにすることは、社員の帰属意識の向上や、新たな意見やアイデアが生まれる土壌の醸成にもつながります。

具体的には、催し事などを定期的に設けたり、上司と部下の間で1on1ミーティングを実施したりすることが挙げられます。

ワーク・エンゲイジメントと組織コミットメント

ワークエンゲージメントと組織コミットメントには、相関関係があるといわれています。組織コミットメントが高い状態であれば、従業員のワークエンゲージメントも高くなる傾向がみられます。そのため、組織コミットメントの向上を検討する際は、ワークエンゲイジメントについても念頭に置くことが必要です。

ワーク・エンゲイジメントとは

ワークエンゲイジメントとは、従業員の仕事そのものに対するエンゲージメントであり、仕事への「活力」「熱意」「没頭」の三要素が揃った状態です。ワークエンゲイジメントが高い従業員は、仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得られる状態となります。

ワークエンゲイジメントを高める方法

ワークエンゲイジメントを高めるためには、周囲からの支援が有効です。具体的な方法としては、同僚に相談に乗ってもらうことや、ポジティブな言葉をかけてもらうことなどが挙げられます。

したがって、普段から従業員同士のコミュニケーションを活性化しておくことが必要です。この点は、組織コミットメントの向上方法とも重なります。

また、上司との関係もワークエンゲイジメントには大きな影響があるといわれています。仕事上での助言や心理面でのケアなど、マネージメントの強化が大切です。

仕事そのものに関しては、大きな裁量が認められていたり、高いスキルを要求されたりするものであるほど、ワークエンゲイジメントは高まる傾向があります。

参考:「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-」|厚生労働省

もっと詳しく!コミットメントに関するおすすめ論文と要約

以下は「コミットメント」の効果や有益性に関する研究論文の要約です。

  1. 従業員のコミットメントは組織の成功を決定する重要な要素であり、従業員が仕事に熱心で組織にコミットメントを持っている場合、会社は競争上の優位性、生産性の向上、従業員の離職率の低下などの利点を享受できます(Shahid & Azhar, 2013)。
  2. コミットメントの作成は環境にやさしい行動を促進する効果的な方法と見なされています。コミットメントが行動変化にどのように影響を与えるかを理解することは、コミットメント作成技術の効果を向上させるための基本的な研究からの知見に基づいてコミットメント作成を改善するために役立ちます(Lokhorst et al., 2013)。
  3. プロフェッショナルなコミットメントが高いチームは、コミットメントが低いチームよりも効果的であり、この関係は認知的多様性によって媒介され、タスクに関連する問題に関するメンバー間の意見の相違によって条件付けられます。プロフェッショナルなコミットメントが高いチームメンバーは、異なる視点と専門知識を提唱することにより、結果としてチームの効果を高めることができます(Mitchell et al., 2018)。

これらの研究結果は、従業員のコミットメントが組織の効果性を高める上で重要な役割を果たし、コミットメントが高い環境では生産性、チームの効果、そして従業員の満足度が向上することを示しています。

監修者の編集後記 -コミットメントについて-

今回は、コミットメントについて解説しました。企業においては、特に組織コミットメントが重要です。組織コミットメントが低い状態の場合、離職率が増加したり生産性も低下するなど、負の影響が大きくなります。

配置や担当職務の転換、コミュニケーション機会の創出など、多くのコストをかけない方法でも対処が可能なため、できる限り取り組みましょう。

企業ごとに事情は異なるため試行錯誤も必要ですが、従業員サーベイを利用するなど、定期的に組織コミットメントの状況を観察しながら、自社に合った施策を導入することが重要です。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。