モチベーションとは?意味や仕事で低下する要因や上げる方法、企業事例
この記事のポイント
- モチベーションとは「行動を起こし、方向づけや持続させる過程や機能」を指しています。
- モチベーションの高低は、仕事の成績や定着率に影響を与えます。
- 仕事のモチベーションを上げるためには、安全で衛生的な職場環境を作ること、従業員が「尊重されている」と感じることが大切です。
目次
モチベーションとは?
モチベーションとは、「行動を起こし、方向づけや持続させる過程や機能」のことをいいます。日本語では「やる気」や「動機づけ」とも呼ばれます。
ビジネスシーンにおいて「モチベーションが高い」とは「もっと成長意欲をもって働こうと思う」「率先して新しい新規事業に取り組もうと考える」といった状態だといえるでしょう。
モチベーションの種類
モチベーションは大きく分けて「内発的動機付け」、「外発的動機付け」に分けられます。
- 内発的動機づけ
内発的動機とは、自分自身の内面から湧き起こるモチベーションのことです。例えば「好き」「成長したい」「夢を叶えたい」など「やりたいからやる」という状態を指しています。
内発的動機付けは高い集中力を伴う上、効果が持続しやすいものの、短期間では動機付けが発生しにくい傾向はあります。
- 外発的動機付け
外発的動機とは、外部から与えられた報酬や目的から発生するモチベーションのことです。例えば「給料のために働く」「生活のために頑張る」など、「~のためにやる」といった状態を指しています。
動機づけさせる方法は分かりやすいですが、一時的に向上できた場合でも、維持することは難しい傾向があります。
モチベーションの高さがビジネスで重要な理由
従業員のモチベーションが高ければ、熱意をもって仕事に励み、優れた生産性を発揮したり、主体的に業務に取り組んだりしてくれるでしょう。
一方、従業員のモチベーションが低い場合は、最低限の業務をこなし、結果を高望みせず現状維持のままでいようとしがちです。さらに働く意欲をなくしたり、働き続ける意味を見失ったりする場合は、離職にも繋がります。
社員のモチベーションが低下する要因
社員のモチベーションはさまざまな要因によって低下する場合があるため注意しなくてはいけません。ここでは、社員のモチベーションが低下するおもな要因を紹介します。
評価や待遇
「頑張っても評価されない」「残業や休日出勤が多い」など、評価や待遇に納得できず不満が溜まっているとモチベーションは低下しやすくなります。特に、上司の気分によって評価することや、評価基準が曖昧な場合、モチベーションはより低下しやすくなるでしょう。
人間関係
離職理由「人間関係(主に上司)」は常に上位に挙げられています。「上司と合わない」「会社の雰囲気に馴染めない」「同僚によるいじめ」など、人間関係に関する不満も仕事に対するモチベーションを低下させます。
さらに、人間関係はQOL(生活の質)にも深く影響することが分かっています。人間関係の問題は、仕事外の時間にもマイナスの影響を与えるため注意が必要です。
仕事内容
仕事の内容にやりがいを感じないと、仕事は単なる作業になります。
伊藤氏の研究でも、モチベーションの高低には、周囲からの評価より自分がどう感じるかが影響していると明らかになりました。仕事内容の才能があり周囲からの評価が高い人でも、本人がやりがいを感じていなければモチベーションは低下するといえます。
参考:他者からの声かけが動機づけと他者への評価に及ぼす影響|J-STAGE
また、勤続していると同期の中で役職の違いが現れてきます。どちらの方が責任のある仕事を任せられているか比較して、自分自身の方が責任が軽い仕事だと感じるとモチベーションは低下しやすくなります。
将来への不安感
現代の若者の多くは、将来への不安を抱えながら働いています。「この会社は将来どうなるのだろうか」「結婚したらどうしよう」など、将来への見通しがもてない場合、モヤモヤしたままモチベーションが低い状態で仕事に取り組みがちでしょう。
また、昨今は昇進について拒否的な若者が増えています。上司は嬉しい知らせのつもりで伝えた場合でも、本人にとってはモチベーション低下の原因になっていることがあるため注意しなくてはいけません。
精神的・身体的疲労
精神的・身体的に疲労が溜まると、仕事以前に健康面の問題が発生し、落ち着いて仕事に臨めなくなります。中には、責任感が強く不調を抱えたまま働き続ける人もいますが、病状が悪化して休職に繋がる可能性もあるでしょう。
社員のモチベーションを上げる方法
モチベーションを上げるためには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、具体的な方法を5つ紹介します。
会社の方針を全社員に浸透させる
太田氏の研究から、職場で共通の目標を持つとモチベーションは上がることが明らかになりました。ただし、共通の目標を持つだけでは不十分で、共通の目標を達成するために情報共有する過程が重要です。
つまり、「会社の方針」を共通目標にして、それができているか社員間でコミュニケーションをとるとモチベーションが向上すると考えられます。
参考:職場における目標の共有が仕事の動機づけに及ぼす影響 |J-STAGE
目標設定をサポートする
前述の会社の方針は「達成」が見えづらいものでした。
そこで、より小さな目標を持たせ、挑戦させることでモチベーション維持・向上を図る方法があります。このとき、「頑張れば達成可能な目標」を設定することが大切です。周囲は、結果だけでなく頑張っている姿勢も褒めることでモチベーションに繋がるでしょう。
万が一失敗してしまった場合、責任は一緒に目標を設定した上司も背負うようにしましょう。そのときは辛い立場になりますが、頼れる上司の存在や挑戦できる環境は組織全体のモチベーションに繋がります。
定期的に面談を行う
従業員のモチベーションを保つ要因は日々変化しています。そのため定期的に面談を行い、不満や願望を聞くことで、モチベーションが低下している原因を把握します。
すぐに不満の原因がすぐに解消しなくても、納得いくまで上司と話せた感覚や、自身の発言が尊重されていると感じると、それだけでもモチベーションは上がるものです。
成長の機会を提供する
心理学では「ピグマリオン効果」といって、他者からの期待を感じるとパフォーマンスが上がることは明らかになっています。
会社の中においても、期待されていると感じる場面を作ることにより、パフォーマンスやモチベーションが向上する効果を期待できます。例えば「期待をしていることを伝える」「失敗しても成長の糧として捉える」「研修会へ参加する機会を提供する」などの方法が考えられます。ただし、過度な期待をすると負担になってしまうため、求め過ぎないようにしましょう。
職場環境を整える
職場環境はモチベーションに影響を与えることが分かっています。中でも、空気の清浄度、音環境が大切で、従業員が「邪魔が入らない快適な作業環境」と感じることが大切。また、建物のデザインもモチベーションに影響を与えます。
モチベーションに関する5つの理論
続いてモチベーションに関する心理学の理論を見てみましょう。
マズローの欲求5段階説
マズローの欲求5段階説とは、人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されているとする理論です。
マズローの欲求5段階説によれば、人間の欲求には「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5段階があります。そして、低次の欲求が満たされるごとに、もう1つ上の欲求をもつようになると考えています。
自己実現欲求 | 自分らしく生きたいと考える欲求 |
---|---|
承認欲求 | 他人に注目されたり、賞賛されたりする欲求 |
社会的欲求 | 社会集団に所属して他者に受け入れられたいという欲求 |
安全欲求 | 身体的にも精神的にも安心して暮らしたいという欲求 |
生理的欲求 | 呼吸や3大欲求など、生命維持するために必要最低限の欲求 |
マクレガーのX理論・Y理論
「X理論」「Y理論」とは、マクレガーが述べた人間観・動機付けに関わる2つの対立的な理論です。マズローの欲求階層説を基にして考えられています。
X理論では、「人間は生来怠け者で、強制されたり命令されなければ仕事をしない」と考えます。命令や強制で管理して、目標が達成できれば報酬を、できなければ処罰を与えるといったマネジメント手法です。
Y理論では、「生まれながらに嫌いということはなく、条件次第で自ら進んで責任を取ろうとする」と考えます。魅力的な目標や責任を与えることで従業員を動かすマネジメント手法です。
ハーズバーグの2要因理論
ハーズバーグの「2要因理論」とは、職務満足・職務不満を引き起こす要因を2つに分けた理論です。
動機づけ要因
満たされると満足感はありますが、欠けていても不満足感じるわけではありません。例えば、他者評価、責任、昇進などが挙げられます。
衛生要因
不足すると不満足感がありますが、満たした場合でも必ず満足感に繋がるわけではありません。例えば、会社の政策と管理方式、給与、対人関係が挙げられます。
ブルームの期待理論
ブルームの「期待理論」では、動機づけの強さは、「成果への期待値」と「報酬の魅力」の積により決定されるとしています。つまり、目標達成後に報酬が得られる(結果が報われる)という確信があれば、積極的に努力をするという考え方です。
マクレランドの欲求理論
「欲求理論」は、マクレランドが提唱したモチベーション理論の1つです。職場における従業員には、達成動機(欲求)、権力動機(欲求)、親和動機(欲求)の3つの主要な動機ないし欲求が存在するとしています。
- 達成動機:標準に対して、努力して達成しようとする欲求
- 権力動機:他の人々に影響を与え、コントロールしたいという欲求
- 親和動機:友好的かつ密接な対人関係を結びたいという欲求
モチベーションに関するデータ・アンケート
近年、日本で研究されたデータからモチベーションを上げるためのヒントを見つけましょう。
女性の94%「オフィス環境は仕事へのモチベーションに影響を与えると思う」
ワタベウェディング株式会社は「働く女性のオフィス環境に関する調査」を行いました。
その中で、女性の94%が「オフィス環境は仕事へのモチベーションに影響を与えると思う」と回答しています。中でも、モチベーションに影響を与える要素として「衛生的な環境」「仕事がはかどるレイアウトや設備」が多数の人に支持されています。
モチベーションを保ちながら働く上で、オフィス環境は非常に大切だといえるでしょう。
参考: 働く女性のオフィス環境に関する調査|ワタベウェディング株式会社
OFF-JTなどを受ける従業員への金銭的援助と仕事に対するモチベーションとの関係
厚労省の調査の結果、OFF-JTや自己啓発支援への費用を支出した企業では、翌年の労働生産性などが向上する効果がみられました。 企業としては別の目的で支援している場合もあるかもしれませんが「従業員を支援しよう」という姿勢は、従業員にとってモチベーションの維持・向上にも繋がったと考えられます。
参考:企業の能力開発等と従業員の仕事に対するモチベーションとの関係|厚生労働省
モチベーションアップに成功している企業事例
モチベーションアップに成功しているユニークな事例を見ていきましょう。
社内公募制度、キャリア自己申告制度|株式会社ユナイテッドアローズ
株式会社ユナイテッドアローズでは、社員が将来所属したい部署などを申告するキャリア自己申告制度があります。新規事業立ち上げや欠員補充の際に希望者から異動を行うなど、社員のキャリアプラン形成を助ける制度です。
希望する仕事に配属することで、従業員はモチベーションをもって取り組みやすくなっています。
参考: 社内公募制度、キャリア自己申告制度|株式会社ユナイテッドアローズ
育自分休暇制度|サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社では、「育自分休暇制度」を設けています。これは、転職や留学など自分を成長させるために退職する人が、最長6年間は復帰できるという制度です。
その他の働き方への変革もあり、2005年以降、離職率が28%から3%前後に低下しました。
ぜんいんで報酬を決定|面白法人カヤック
面白法人カヤックでは、全社員が人事部に所属して採用、人事評価、給与査定に関わっています。そして、社員同士で相互投票した結果で昇給額が決まります。他にも、全社員同士で指摘・アドバイスができる工夫など、役職の垣根を越えて会社の運営に参加する機会を設けています。
感謝の気持ちを送る エモチップ制度|マネーフォワード株式会社
マネーフォワード株式会社では「人に常に感謝や尊敬の気持ちを忘れずに持つ」という思いから「エモチップ」という制度を導入しました。「人に対する感謝や称賛」をチップのように人に送れる制度で、導入した結果Slackでのコミュニケーションが活発化しました。
参考: 感謝の気持ちを送る エモチップ制度|マネーフォワード株式会社
リフレッシュ休暇 休んでファイブ|株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントでは「休んでファイブ」と呼ばれるリフレッシュ休暇を設けています。2年勤続で5日間の連続した休みを取得でき、前後の 土日合わせて9日間連続で休めるルールです。従業員に長く働いてもらえる環境作りの一環として実施されています。
参考: リフレッシュ休暇 休んでファイブ|株式会社サイバーエージェント
もっと詳しく!モチベーションに関するおすすめ論文と要約
モチベーションに関するおすすめ論文を紹介します。
モチベーション理論における主体性概念の探求
この論文「モチベーション理論における主体性概念の探求 – 組織における主体性獲得のプロセスに着目して」では、モチベーション理論の枠組みの中で主体性概念とその獲得プロセスを解析しています。主体性は「自分で考えて自分から行動すること」と定義され、その理論的基礎を、主に心理学と経営学から発展した内容理論と過程理論に求めます。
内容理論では、モチベーションが発生する理由(What)に着目し、過程理論はモチベーションの形成過程(How)を扱います。マズローの欲求階層説やハーズバーグの動機づけ・衛生理論など、著名な理論が紹介されています。これらの理論は、モチベーションの理解に役立つものの、主体性の獲得プロセスを十分に説明できないと指摘されています。
そのため、論文は自己決定理論や他者志向動機などの新しい理論に焦点を当て、モチベーションの理解を深めようとします。これらの理論は、他者の影響、時間の経過、自律度の変化などを考慮に入れ、個人が主体性を獲得する過程をより詳細に描き出しています。
総じて、この論文は従来のモチベーション理論を概観し、主体性の概念を理解し、それがどのように獲得されるのかを探求することで、組織における個人の行動とパフォーマンスを深く理解することを目指しています。今後の研究では、リーダーシップやコミットメントの理論も含め、主体性概念および獲得プロセスの包括的なモデル構築を目指しています。
出典:CORE – Aggregating the world’s open access research papers「モチベーション理論における主体性概念の探求」
モチベーション研究における動機概念に関する理論的整理
この論文は、モチベーション研究における人間の動機づけに関する理論的整理を目的としています。著者たちは、David McClellandの理論を基にして、人間の動機づけに関するさまざまな概念を詳細に分析しています。
論文では、動機づけの基本的な概念として「達成動機」「パワー・ニーズ」「親和動機」「回避動機」などが挙げられています。それぞれの動機について、その定義、測定方法、及びそれが個人の行動にどのように影響を与えるかについて詳細に検討されています。
達成動機は目標達成に向けた自発的な行動を指し、パワー・ニーズは他者への影響力を行使しようとする動機です。親和動機は他者との良好な関係を築こうとする動機、回避動機は失敗や拒絶などの否定的な結果を避けようとする動機を指します。
論文ではこれらの動機が人間行動の理解においてどのように関連しているかについても議論されており、動機づけの理論におけるさまざまな概念間の関連性や相違点についての批判的な検討も行われています。
この論文は、動機づけ理論における基本的な概念の理解を深め、さらなる研究の方向性を示唆しています。特に、McClellandの理論に基づいた動機づけの概念の理解を深めることが、組織内の人間行動の研究において重要な役割を果たすとされています。
出典:千葉経済大学短期大学部「モチベーション研究における動機概念に関する理論的整理」
監修者の編集後記 -モチベーションについて-
仕事でのモチベーションを高めるためには、まずは安全で衛生的な職場環境を作ることが大切です。さらに、従業員が「尊重してもらえている」と感じるような取り組みも大きな影響を与えていることが分かりました。労働時間外への支援など、一見すると仕事に関係がなさそうなことでも結果的に仕事のモチベーションに繋がることもあります。働き方改革が進む中、モチベーションを上げる方法も変わってきているといえるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。