エニアグラムとは?9タイプの性格診断の特徴や見方、マネジメント方法
この記事のポイント
- エニアグラムとは、9つの図を用いて似た性質を持つ人を分類する、性格類型論に基づいた人格理論です。
- 9つのタイプ分類により適職探しや人材育成、チーム編成などがスムーズになるため、近年ビジネスの場でも注目されてきています。
- 本記事では、エニアグラムの概要とビジネスの場での活用法を順番に解説します。
目次
エニアグラムとは?
エニアグラム(eniaguramu)とは、ギリシャ語でエニア(9)、グラム(図)を意味する言葉です。9つの点と、それらを結ぶ線からなる図を用いた人格論をさします。似た性質を持つ人を同じカテゴリーに分類する性格類型論に基づいており、9つに分類するのが特徴です。
エニアグラムの起源や歴史には、まだ不明な点も多いですが、1875年にギリシャ系のアルメニア人であるゲオルギー・イワノビッチ・グルジェフが、哲学の分野でエニアグラムの図形を使用し始めたのが始まりだといわれています。
その後、1950年にボリビア人であるオスカー・イチャーソが図形と性格タイプの共通点を発見しました。1970年代には精神科医のクラウディオ・ナランホが、米国カリフォルニア州エサレン研究所で生徒の自己実現の助けとしてエニアグラムを活用しました。
エニアグラム診断でわかること
エニアグラムを活用することで、以下の3つの効果が得られるといわれています。
- 自己理解が深まり、自己受容ができるようになる
- 自己理解と自己受容の深まりに伴い、他者理解や他者受容もできるようになるため、人間関係が円滑になる
- 自分の特性を生かし成長できるようになるため、自己実現につながる
エニアグラムを活用することによって、自分の特性を受け入れやすくなり、他者理解や受容も深まります。その結果、人間関係が円滑になり、自己実現もしやすくなるでしょう。
参考:日本エニアグラム学会 エニアグラムを学ぶ目的|日本エニアグラム学会
エニアグラム診断がビジネスで注目されている理由
エニアグラムは、ビジネスの分野と相性が良いため、さまざまなシーンで活用することが可能です。主に、従業員の適材適所を見つける、有効な人材育成法を知る、相性の良いもの同士でチームを編成し適切な人員配置を達成するなど、さまざまなビジネスシーンにおいて役立ちます。
ここでは、エニアグラム診断がビジネスで注目されている理由を確認しておきましょう。
適材適所を見つけるため
エニアグラムを人事担当が活用することで、応募者の適材適所を見つけやすくなるメリットがあります。
各部署の特徴や、求められる人材の傾向を一元化しておければ、それぞれの部署に合う人材をエニアグラムの結果を参考にして配置することが可能です。
例えば集団がまとまりに乏しく、統率力のある人材を配置したい場合は、タイプ3の達成者や、タイプ8の統率者を配置するといった戦略的な人材配置が可能です。
有効な人材育成法を知るため
人材育成法に正解はありませんが、エニアグラムを活用することでヒントを得ることは可能です。タイプを把握することによって、上司や従業員自身が気付かない特性や課題が見えてくるため、個別分析を通して従業員の成長やモチベーションアップを期待できます。
チーム編成に活用するため
エニアグラムは、人事がチーム編成を考える際にも効果を発揮します。例えば管理職やチームリーダー、プレイヤー、サポーター、メンバー間の緩衝材役になる人など、チームを編成する上で欠かせないポジションへの適任者を見つけやすくなります。
適切なチーム編成を行えるようになれば、チーム内の人間関係トラブルが減り、仕事が円滑に進むようになるため、生産性の向上が望めるでしょう。
エニアグラム9つのタイプ別マネジメント方法
以下にエニアグラム9つのタイプ別マネジメント方法をまとめていますので、従業員のマネジメントをする際に活用してみてください。日本エニアグラム学会の90問解答式チェックを行うことによって、各タイプのうち、どのタイプが当てはまるかを把握できます。
タイプ1:完璧主義者(改革する人)
完璧主義者(改革する人)は、完璧でありたいがゆえに妥協せず努力をする人です。正義感が強く、ルールや時間を厳守します。真面目で責任感がある長所を持つ反面、「木を見て森を見ず」といった状態になりがちで、全体よりも細部が気になりやすい傾向を持ちます。
このタイプをマネジメントする際は、全体のプロセスも重視するよう働きかけるサポートを行うことが大切です。
タイプ2:献身家(人を助ける人)
献身家(人を助ける人)は、愛情深く人のために尽くせる人です。愛情深く思いやりがあり世話好きな反面、自己犠牲的でもあります。人が求めていることに敏感で気配りができるのは長所ですが、一方で自分自身の負担感には鈍感で仕事を抱え込みやすい点が短所だといえるでしょう。
このタイプをマネジメントする場合は、他者に尽くす姿勢を尊重しつつ、適度に自分にも目を向けさせ、負担を抱え込まないよう相談するといった方法で発散させることが大切です。
タイプ3:達成者(達成する人)
達成者(達成する人)は、成功を求め目標を達成する人です。実力とプライドが高いため、社会的なステータスを求めリーダーシップを自ら進んでとるタイプだといえます。野心と行動力がある点は長所です。ただし、成果を重視するあまりチームへの貢献を忘れてしまうといった短所もみられます。
このタイプのマネジメントでは、成果を賞賛し褒めつつ、細部の詰めの甘さを洗い出したり、チームへの貢献といった視点も持てるようになったりするようなサポートが必要です。
タイプ4:芸術家(個性的な人)
芸術家(個性的な人)は、個性を求め特別な存在であろうとする人です。感覚的で創造性やロマンに溢れ、独自の発想力を持ちます。ユニークかつ個性があり、創造性に溢れる長所を持つ反面、他者と対等な関係を結ぶのが苦手で気分屋な点が短所です。
このタイプのマネジメントでは、彼らが苦手とする他者との関係の間を取り持つ、現実的な視点を入れる助けをするなどの配慮が役立ちます。
タイプ5:研究者(調べる人)
研究者(調べる人)は、人と距離をとり静かに観察する人をさします。知識が豊富で、分析や解析が得意です。
集中力や分析力にすぐれる長所を持つ一方で、他者と知識を共有したり会議などで発表したりすることは苦手な点が短所です。
このタイプのマネジメントでは、分析力を認めつつ、適度に他者に向けた自己表現を促すといったサポートが効果的です。
タイプ6:堅実家(忠実な人)
堅実家(忠実な人)は、安全を求め忠実に行動する人です。組織への協調を忠実に守り石橋を叩いて渡り、周囲の人のために行動する誠実さを持ちます。
帰属意識が強くチームや同僚を大切にする点は長所ですが、劣等感が強く自分で結論を出すことが苦手であり、他者に依存しやすい点は短所といえます。
このタイプのマネジメントでは、過去の成功体験を引き出し自信をつけさせましょう。臨機応変なタイプは苦手なため、適度な指示を出すことも大切です。
タイプ7:楽天家(熱中する人)
楽天家(熱中する人)は、楽しさと刺激を求めて冒険する人です。快楽に忠実で行動力があり、未来の楽しみのために希望をふくらませ、あれこれチャレンジします。一方で、飽き性な特徴を持ちます。
プレッシャーに強く、人前でも堂々と振る舞える点が長所です。一方、ルールや規則を守ることは苦手で責任感に欠ける点が短所だといえます。
このタイプのマネジメントの際は、自由に伸び伸び仕事をさせ束縛しないこと、ルールや規則を守りながらも、その中で面白みを見出すサポートなどが効果的です。
タイプ8:統率者(挑戦する人)
統率者(挑戦する人)は、パワフルに自己主張し挑戦する人です。弱い人を助ける義理や人情に厚い一面のある、親分肌の権力者です。
有言実行力があり自信に溢れる長所を持つ一方で、他者に対し威圧的になりがちで気持ちを考えるのは苦手という短所を持ちます。
このタイプのマネジメントでは、性格よりも行動を褒める、筋の通った指導を単刀直入に具体的に伝えるのがポイントです。
タイプ9:調停者(平和をもたらす人)
調停者(平和をもたらす人)は、争いを嫌い平和を願う平和主義者です。人に安らぎを与える落ち着きと、おっとりした雰囲気が特徴的です。
穏やかで人と公平に接する点が長所であり、リーダーシップをとったり他者と議論をしたりするのが苦手なところは短所です。
このタイプのマネジメントでは、自分の意見を表明してもトラブルになるわけではないことを理解させる、責任感やスピードを意識して仕事を進められるよう指導するなどが効果的です。
エニアグラムを社内で活用する方法
エニアグラムを社内で活用できる主な場面は採用活動と組織運営、チームビルディングの3つです。以下に各場面でどのように役立つのかを具体的にまとめましたので、参考にしてみてください。
採用活動
人事担当者がエニアグラムの9つの性格を活用することで、ミスマッチを未然に抑制できます。例えば、完璧主義者(改革する人)にはミスなく仕事をこなす必要のある事務員や銀行員が、献身家(人を助ける人)は面倒見の良さが求められる看護師や、保育士といった職種と相性が良いでしょう。
一方で、完璧主義者は臨機応変な対応が求められる教員や営業職が、献身家は弁護士や警察など、ときに厳しい決断を下さねばならない仕事は苦手です。
組織運営
エニアグラムを活用することで、上司が部下に接するときに注意すべきポイントを知ることもできます。
例えば、達成者(達成する人)を営業職として活用する場合、目標を達成する力と行動力がある反面、うまくいかない時に競争心が強すぎるあまり、周囲の人とぶつかる可能性があるといった懸念点を頭に入れておけます。
上記を理解していれば、達成者の部下をマネジメントする際はチームや会社への貢献といった視点を持たせる、時には慎重に考え行動することも大切であると伝えることで、成長を促進し、やる気を引き出すことが可能です。
チームビルディング
エニアグラムは、チーム編成を考える際にも役立ちます。例えば、あるプロジェクトを進めるためのチームにおいてリーダーには統率者(挑戦する人)を、プレイヤーには達成者(達成する人)を、サポート役には研究者(調べる人)を配置するといった編成が考えられるでしょう。
完璧主義者(改革する人)と楽天家(熱中する人)は性格が水と油でぶつかり合う可能性が高いため、間の緩衝材役として献身家(人を助ける人)や調停者(平和をもたらす人)を配置しようと考えられます。
参考:管理者の囚われによる組織への悪影響|行動変容研修とコンサルティングのCAP研究所
エニアグラムを導入している企業事例
エニアグラムは、大手の企業も多く導入しています。
以下は、エニアグラム研修を導入している企業の参加者の感想です。
大手電機メーカー社員
研修会のおかげで、組織作りから目標達成までのプロセスを学ぶことができた。
自社で目標達成に至るまでのビジョン・ミッションを作成する業務についていたが、初めてのことばかりで戸惑っていた。
エニアグラムの視点を持つことで、組織の課題を発見でき、リーダーシップが身につき、自己成長を感じながら自社の振り返りができたことが大きい
参考:参加者の声・導入事例 | Business Enneagram Association
監修者の編集後記 -エニアグラムについて-
エニアグラムは人間の性格を9つのタイプに分類する人格理論です。元々は哲学や精神医学の分野で研究が行われており、近年ビジネスの場での活用が注目されています。
人事担当者が採用活動や組織運営、チームビルディングを行う際には、従業員それぞれの性格や特性を知る必要がありますが、エニアグラムは従業員の理解を深めるのを助けてくれます。
まず自分自身のタイプをチェックしてみるところからチャレンジし、知識がついた後、適材適所探しや人材育成にも役立てていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。