協調性とは?意味や協調性がある人の特徴、仕事の重要性や企業事例

この記事のポイント

  • 協調性とは、「他者に友好的に接し、協力しようとする力」を指しています。
  • 協調性がある人は他者に対して受容的でコミュニケーションをとりやすいですが、協調性がない人は自分の意見を優先するため集団の中で孤立しやすい傾向があります。
  • 協調性を身に付けるには、周囲を観察することや、相手の立場で物事を考えることが大切です。

協調性とは?意味や例文

協調性とは?意味や協調性がある人の特徴、仕事の重要性や企業事例

協調性とは、登張氏が「非利己的で、他者に対して受容的、共感的、友好的に接し、他者と競い合うのではなく、譲り合って調和を図ったり協力したりする傾向」と述べています。

つまり、「他者に友好的に接し、協力しようとする力」といえるでしょう。

協調性の形成には、遺伝と環境両方の影響を受けると考えられています。そして、協調性は、社会とのつながりを形成・維持に関連する「親和性」や「自己調整」といった気質と関係があると示唆されています。

参考:協調性とその起源 AgreeablenessとCooperativenessの概念を用いた検討|J-STAGE 

協調性がある人の特徴

協調性がある人は、以下のような傾向があるといわれています。

  • 思いやりがある
  • 人間関係を形成・維持する力が高い
  • 立場や価値観が異なる人に対しても受容的
  • 状況に応じて、感情や行動を制御する力が高い
  • 共感力が高い

協調性がない人の特徴

協調性がない人は以下のような特徴があるといわれています。

  • 人間関係を形成・維持する力が低く、集団の中で孤立しやすい
  • 感情や行動を制御することが苦手
  • 共感力が低い
  • 自分の意見を押し通そうとする
  • 権利や立場に固執する

協調性とコミュニケーション能力の違い

協調性は「他者に友好的に接し、協力して物事を進めようとする力」です。これに対し、コミュニケーション能力は、上記の力に加えて自己主張や解読力といった力も含まれています。

つまり、重なる部分も多くよく似た概念ですが、コミュニケーション能力の方がより広い概念といえるでしょう。

参考:コミュニケーション・スキルに関する諸因子の階層構造への統合の試み|J-STAGE

仕事に協調性が必要とされる理由

では、どうして仕事には協調性が必要なのでしょうか?

職場やチームの風通しが良くなる

ほとんどの仕事で、立場や意見の異なる人と一緒に働く機会があります。

協調性が高い人が集まる組織では、周囲と柔軟にコミュニケーションを取りながら業務を進められます。たとえ意見が食い違うことはあっても、建設的に話すことで折り合いを付けられるため、組織全体の風通しが良いでしょう。

反対に、協調性のない人が多い組織では、意見がぶつかり合ったり、情報共有が進まなかったりすることで、業務がなかなか進まないことはあるでしょう。

部署間の情報共有もスムーズ

働く上で、他部署とのコミュニケーションは欠かせません。

協調性が高い人は、他部署の人にも思いやりを持って接しられるでしょう。そして、そのような態度は相手から「声をかけやすい」印象を持たれるため、コミュニケーションが円滑になり意思疎通不足のトラブルを回避しやすくなると考えられます。

協調性がない人は、相手から「声をかけづらい」印象を持たれてしまい、情報が十分共有できないことや、「別の人に聞こう」と避けられてしまうことがあると考えられます。

チーム内の適切な役割分担を行える

協調性が高い人は、集団の中での立ち位置や役割をすぐに理解できます。たとえ自身の希望があっても、組織の目標達成に向けて割り振られた役割を受け入れる人が多いでしょう。一方、協調性のない人は、自分の意向を優先するため適切な役割分担が行えず、業務がスムーズに行えないことがあります。

そして、協調性の高い人が集まる組織は、リーダーから見ても人間関係や忖度を気にせずに役割を振りやすくなります。

人事評価の向上につながる

協調性は、人事評価項目に含まれているため昇進や昇給を考える上でも大切です。

人事評価は大きく分けて以下の3つの評価軸があります。

  • 能力考課
  • 業績考課
  • 情意考課

協調性は、目標達成のための行動や姿勢を評価する「情意考課」に含まれており、周囲と歩調を合わせて仕事をしているかどうかは人事評価につながります。

リーダーの育成につながる

有名なリーダーシップ理論の1つに「PM理論」があります。PM理論では、リーダーを「目標達成機能(P機能)」と「集団維持機能(M機能)」の2軸で評価し、PもMも高い状態が理想のリーダーと定義されています。

協調性を伸ばすことは、M機能ひいてはリーダーの育成につながっているといえるでしょう。

P機能目標達成機能目標や計画立案、メンバーへの指示などにより目標を達成する能力
M機能集団維持機能メンバー間の人間関係を良好に保ち、集団のまとまりを維持する能力。

協調性とは リーダーシップ理論「PM理論」

企業が求める人材:52%が組織の協調性を重視

(独)労働政策研究・研修機構の「構造変化の中での企業経営と人材のあり方に関する調査」(2013)によると、若手正社員の採用にあたり重視する資質として「熱意・意欲」「行動力・実行力」に次いで「協調性」を重視していることが明らかになりました。なんとその割合は52%にも相当します。

多様性が認められ、企業内の組織の和やチームワークの重要性が再認識される中で、協調性は大切な素養といえるでしょう。

参考:労働市場における 人材確保・育成の変化|厚生労働省

自分自身の協調性を身につける方法

どのようなことに気を付ければ、協調性を身につけられるのでしょうか?ここでは、自分自身の協調性を身につける方法を紹介します。

周囲の人の行動を見る、興味を持つ

協調性を培うためには、興味を持って周囲の人を見ることが大切です。周囲の人の行動に興味を持ち観察することで「嫌だけど我慢する場面」や「今日は無礼講」など暗黙の了解を掴み協調性のある行動をとりやすくなります。

さらに、「誰が決定権を持っているのか」「誰に対してどのような仕事を頼めばスムーズに事が進むか」などにも気づき、仕事がスムーズに進むかもしれません。

他の人を尊敬し感謝の気持ちを持って行動する

人は無意識的に思いが態度に表れるものです。相手を尊重し感謝の気持ちを持つと自然と相手に伝わり、協調性として表れやすくなります。

会話をしたり、一緒に行動したりすることを億劫に感じる人もいるでしょう。しかし、相手の頑張りや役割を認めることは自分の心の中だけで行えるため、気負わずに挑戦できるのではないでしょうか。

相手の立場で物事を考えてみる

協調性のない人は相手の立場に立って考えることが苦手な傾向にあります。

キャリアを積むと「私ならこうするのに」と思うことがあるかもしれませんが、立場や経験によってパフォーマンスに差が出ることは当然です。頭ごなしに否定せずに、一旦相手がその言動に至った理由を想像してみましょう。

意見が対立した場合には、まずは相手の意見に最後まで耳を傾けることが大切です。そして、必要な話し合いを行い、相手の意見を尊重すべきだと判断したならば折れることも大切です。

社員の協調性を高める方法

では、部下や社員の協調性を高めるために組織としては何ができるでしょうか?

チームビルディング研修を行う

チームビルディング研修とは、チームメンバーが目標に向かって協力し合い一丸となる体験をすることで、チームワーク向上を目指す研修です。座学による知識習得やゲーム研修などが一般的で、コロナ禍以降はオンラインで行える研修も開発されました。

トップダウンではなく社員を承認し育成する

仕事は通常、上から下への指示、すなわちトップダウン形式で行われます。トップダウンは、衝突が起こりにくい反面、協調性や自主性はあまり引き出せません。そのため、組織側が部下の意見も承認していくことで協調性が育まれます。はじめは部下に気を遣わせすぎたり、衝突したりすることもあるかもしれませんが、経験を通して徐々にうまく意見を伝えられるようになるでしょう。

また、協調性のある上司が対応することで「部下に対しても受容的な態度でいる」風土が継続されます。

人事評価と連動した人材育成を実施する

協調性のある組織を作るためには、協調性の価値を社員に認識してもらうことが大切です。そのためには、適切な人事評価制度を構築し、評価項目に「協調性」を明示した上で人材育成を実施することが大切です。

仕事で高いパフォーマンスを発揮している人の行動特性(コンピテンシー)を評価する人事評価方法を「コンピテンシー評価」と呼びます。コンピテンシー評価を導入すると、評価基準の中に協調性が含まれる可能性は高いでしょう。

企業理念を浸透させる

協調性のない言動の背景には、組織よりも自分を軸にしてしまう考え方が挙げられます。そこで、企業理念など共通目標を明確にすることで、評価軸が組織になり協調性を高められます。この方法では「社員が組織の目標達成のために行ったこと」を認めるフィードバックを継続的に行っていくことが重要です。

面接・採用で協調性があるか見抜く方法

ポテンシャル採用とは、スキルよりも潜在能力を重視して募集する採用方法で、主に20〜30代をターゲットに実施されます。ポテンシャル採用は、新卒採用よりも初期の育成コストを抑えつつ、活躍する可能性がある人材の獲得手段として導入する企業が増えています。

では、ポテンシャル採用で協調性のある人を採用するにはどうしたらよいのでしょうか?

グループ面接を行う

グループ面接は複数の求職者を集めて行うため、組織の中での振る舞いを確認できます。グループ面談で、以下の点を確認してみましょう。

  • 先に話した求職者に比べて話が長すぎ/短すぎないか
  • 他求職者の話を頭ごなしに否定していないか
  • 自己主張ばかりしていないか
  • 他求職者の話を真剣に聞いているか(相槌、目線など)

分かりやすい話し方の人や、他求職者の意見を認める発言がある人は、協調性のある人材の可能性が高いといえます。

チームワークに関する質問をする

面接の中で、チームワークに関する質問をする方法も有効です。「チームワークについてどう思いますか?」の回答で、他者に対する見方や協調性の有無が垣間見えます。ただし、面接では誰もが良い格好をしようとするため、質問を掘り下げて具体的な経験を聞き出すようにしましょう。

協調性を高める企業の取り組み事例

協調性を高めるために企業が行っている取り組みを紹介します。

おもちゃのレゴを用いたチームビルディング|株式会社メルカリ

協調性を育むためには、相手を知ることが大切です。株式会社メルカリでは、レゴを使ったチームビルディングが行われました。同じテーマの作品を作った後に、どのような思いで作ったのかをメンバーに話します。その中で、自分の新たな一面を知れたり、メンバーの考え方をより深く理解できたりしたようです。

このように、おもちゃを通したチームビルディングは、素が見えやすく組織内の関係を深めるきっかけになります。

出典:おもちゃのレゴを用いたチームビルディング|株式会社メルカリ

オンラインでの参加型イベント・研修|株式会社CHINTAI

コロナ渦の影響を受けて新しいコミュニケーション方法を見つけた企業があります。

株式会社CHINTAIでは、コロナの影響を受けて毎年恒例の対面イベントが行えなくなりました。社員間のコミュニケーションが減った課題を解決するために「バヅクリ」というオンラインサービスを利用。食レポや筋トレなどを通して、話したことのない人とも話す機会になりました。そして、その後の業務内でのコミュニケーションも活発化しています。

出典:オンラインでの参加型イベント・研修|株式会社CHINTAI 

もっと詳しく!協調性に関するおすすめ論文と要約

協調性に関する論文や情報を要約して紹介します。

企業間協調における信頼とパワーの効果

この論文は、日本の自動車産業における部品メーカーと自動車メーカー間の協調性に着目しています。特に、自動車メーカーへの信頼と、自動車メーカーからのパワー(影響力)がどのように部品メーカーの協調性に影響を与えるかを分析しています。

研究では、自動車メーカーへの「関係的信頼」とパワーの直接的な行使が、部品メーカーの協調性にプラスの影響を与えることを明らかにしています。関係的信頼とは、長期的な関係の継続や共存共栄への期待を指し、サプライヤーがアセンブラーに対してこのような信頼を持つ場合、より協調的に行動することが示唆されています。

また、論文はパワーと信頼の関係にも着目しています。パワーの直接行使と関係的信頼は並存可能であり、どちらか一方を強めることでサプライヤーの協調性を高めることができることが示されています。しかし、取引関係の解消や新たな取引関係の構築には、組織間信頼が重要な鍵となることが強調されています。

この研究は、自動車産業に限らず、企業間の協調関係を理解する上で重要な示唆を与えており、信頼とパワーのバランスが協調性に及ぼす影響を詳細に分析しています。

出典:企業間協調における信頼とパワーの効果 

協調性とその起源

この論文は、ビッグ5モデルにおける「協調性(Agreeableness)」というパーソナリティ特性に焦点を当てています。この特性は、非利己的で他者に対して受容的、共感的、友好的に接し、競合よりも協力や調和を重視する傾向を示します。著者は、AgreeablenessとCooperativenessの両概念を包含する協調性の概念を採用し、その起源に関する様々な研究を概観しています。

研究によれば、協調性は遺伝と環境の両方の影響を受け、社会的絆の形成や維持に関連する親和性や自己調整に関連する気質とも関連していることが示唆されています。また、協調性には神経生物学的基盤がある可能性があり、これは共感性や親和性などの要素に関連する神経的基盤によるものかもしれません。

論文では協調性の尺度についても議論しており、その内容の再検討の必要性を指摘しています。さらに、協調性の遺伝的起源、気質との関連性、神経生物学的基盤、環境的起源についての詳細な検討が必要であると結論付けています。また、協調性の成立過程や環境的要因についての更なる研究が求められています。

出典:J-STAGE「協調性とその起源― Agreeableness と Cooperativeness の概念を用いた検討」

監修者の編集後記 -協調性について-

協調性とは「他者に友好的に接し、協力しようとする力」のことです。仕事の上で協調性は非常に大切ですが、必要以上に人に合わせる「過剰適応」という状態になっている人もいます。他者に合わせる時は合わせながらも、自分自身の意思も大切にしていただけたらと思います。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。