コミュニケーションとは?鍛える・苦手を克服する方法

この記事のポイント

  • コミュニケーションとは意思疎通や情報伝達を目的に行われる行為で、その方法は言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの2つに分類できます。
  • コミュニケーションが得意な人は、双方向での会話の中で相互理解を深め、信頼関係を築いていくことができます。
  • コミュニケーション能力を高めるためには、相手を尊重し配慮するという基本姿勢を大切に、自分の意見や考えをわかりやすく伝える力を育むことがポイントです。

コミュニケーションとは?

コミュニケーションとは?鍛える・苦手を克服する方法

コミュニケーションとは、「人間が社会生活を営む中で行われる、知覚・感情・思考の伝達」であると広辞苑にて定義されており、日本語では、意思疎通や情報伝達のための行為やそのために用いる手段・ツールを指す際に用いられる言葉です。

ラテン語で「共有する」「公共の」といった意味を持つコミュニス(Communis)が語源であるとされているコミュニケーション(Communication)は、大きく「言語コミュニケーション」と「非言語コミュニケーション」という2種類に分類できます。

言語コミュニケーションと非言語コミュニケーション

言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの違いはその名の通り、コミュニケーションに「言葉」を用いるか否かという点です。

まず言語コミュニケーションでは、自分と他者の双方が抱いている感情はもちろん、意見や考え・価値観・知見などを言語化して言葉や文章で伝えます。

対して非言語コミュニケーションでは、身振り・手振り・表情・視線・声のトーンなどの言葉以外の方法を用いて、意思疎通や情報交換を行います。

この非言語コミュニケーションは「ノンバーバル(非言語)コミュニケーション」とも呼ばれ、言葉だけのコミュニケーションよりも的確かつ簡潔に的確な意思疎通や情報交換が可能となる方法です。

そのため、言語・非言語の両方を適切に併用したコミュニケーションは、ビジネスシーンにおける認識の齟齬や伝達ミスを回避するうえでも、効果的なコミュニケーション方法として注目を集めています。

コミュニケーション能力の構成要素

近年ビジネススキルとしてもその重要性が高まっているコミュニケーション能力ですが、その能力は大きく4つの要素から成り立っています。

意志伝達力

コミュニケーションにおいて、自分の意見や考え・感情を相手に的確に伝える「意思伝達力」は不可欠です。

顧客へのプレゼンテーションや交渉、上司への提案・報告など、日常的にさまざまなシーンにおいて意志伝達力は求められています。意志伝達力が高い人は、相手に合わせて的確に自分の伝えたいことを伝えられるため、仕事を効率的に進められます。

論理的表現力

相手に自分の意見や考えを的確に理解してもらうためには、わかりやすく伝える論理的表現力が必要です。

交渉・提案・報告・協議・相談などのさまざまなビジネスシーンにおいて、伝えたいことを整理し、わかりやすく相手に伝えることで、相手とスムーズな意思疎通が可能となります。

そのため論理的表現力が高い人は、わかりやすい資料作成や説明ができるため、顧客や上司・同僚・取引先などからの評価が高くなります。

好感表現力

相手が好感度を抱くような印象を与える好感表現力は、さまざまな信頼関係を構築することが求められるビジネスシーンにおいて必要な力です。

好感表現力が高い人は、相手に合わせて「感じの良い人」を自己演出できるため、同僚や上司、取引先や顧客などさまざまな人から信頼を得やすくなります。そういった人には、言語と非言語の双方をうまく利用したコミュニケーションに長けているという特徴が見られます。

会話する際の仕草や視線、声のトーンといった非言語コミュニケーションは、正確に情報や考えを相手に伝えると同時に、相手に対しより効果的に好印象を当てる術としても有効な方法です。

対人調和力

相手の気持ちや考えを理解し尊重する対人調和力は、相手と良好なコミュニケーションを図る際に重要な力です。

一方通行で自分の意見ばかりを述べていては、「人の話を聞かない人」というイメージを与えることとなり、コミュニケーションは破綻してしまいます。

一方で、対人調和力が高い人は、相手を理解しようとする姿勢や共感を表す態度を示しながら、バランス良く会話を進められるので、ビジネスで関わるさまざまな人と良好な関係を築けます。

コミュニケーション能力が高い人の特徴

コミュニケーション能力の高い人は、周りの人と良好な関係を築きながらスムーズに仕事が進められているという印象を持つ人は多いのではないでしょうか。

ここからはより具体的に、コミュニケーション能力の高い人に見られる特徴を見ていきましょう。

好奇心が旺盛

他者の考えや感情に配慮し、理解しようという姿勢が自然と取れる人には、好奇心が旺盛な人が多くいます。

豊かな好奇心は、身の回りのことがわからないもしくは知らないことに対して興味や疑問を持ち、調べたり話を聞きに行ったりする原動力です。

自分以外のことに興味を持つ姿勢が、相手の感情や考えに対する配慮や、的確な質問や返答によるテンポの良い会話へとつながっていきます。

観察力が優れている

優れた観察力を持っている人は、相手の仕草や表情を細かく捉え、適切なリアクションを返せるので、会話が進みやすくなります。

相手を深く観察することで、より相手の気持ちや考えていること、「こうして欲しい」などの要望を理解しやすくなり、その結果より細やかな配慮によって相手から信頼を得やすくなります。

傾聴力が高い

相手の話に真摯に耳を傾け、相手の立場に立って感情や考えを理解しようとする傾聴力が高い人は、良好な対人関係を築きやすく、強固な関係性によってビジネスを円滑に進めていくことができます。

ただし傾聴力とは、ただ相手の話を聞いていれば良いというものではなく、表情や相づち、声のトーンにまで配慮して、話者に対して「あなたの話を聴く意思がありますよ」ということを示すスキルのことです。

英語では「Active Listening(アクティブ・リスニング)」と呼ばれるように、相手が心地よく話せるような「聴く」姿勢を示すことが、より深いコミュニケーションを図ることにつながるでしょう。

共感力が高い

相手の立場や感情を深く理解できる共感力の高い人は、相手との間に強い結びつきを築けるので、周囲の人に信頼できる人というイメージを与えます。

「この人ならどう感じるだろう」「この人の立場ならどう考えるだろう」と相手の視点に立つことで、仕事に関する報連相も簡潔かつスムーズに行えます。

また、プレゼンテーションや資料作成においても、見る人の視点から考えることができるため、相手からの高評価を得やすく、良い結果につながっていきます。

寛容である

異なる意見やバックグラウンドに対して理解を示す寛容な人は、相手から話を上手に引き出せます。

寛容な人との会話では、相手は「どのような意見や考えでも受け入れてもらえる」という安心感を抱けるので、率直な意見や考えを話しやすくなります。

どのような相手に対しても柔軟に適切な対応ができることによって、周囲の人から信頼を得やすくなり、ビジネスや組織における問題解決や協力関係の構築を進めやすくなるでしょう。

言語化能力が高い

言葉を選ぶ力や優れた言語表現ができる人は、的確かつ魅力的な表現で会話を彩ることで、相手に良い印象を与えます。

複雑な概念や抽象的なアイデアや感情をクリアに言葉にして表現できる人は、相手を会話に引き込む力にも長けているため、さまざまなビジネスシーンにおいて相手との良い関係性を深めることができるのです。

コミュニケーションが苦手な人の特徴

コミュニケーションが苦手な人には、コミュニケーションを得意とする人に見られる双方向の会話を活発化する力に欠けているケースが多く見られます。

「この人とはコミュニケーションが取りづらいな」と相手に感じさせる人には、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。

空気が読めない

的外れの反応を示したり、相手の反応に関係なく同じ話題を話続けたりすることは、周囲の人との円滑な会話を妨げる原因となります。

先述の通り、コミュニケーションは双方向に意見や情報が交わされることで成り立つため、相手の反応や話の流れを的確に理解して、適切な反応を示すことが円滑なコミュニケーションの基本です。

そのため、場の空気を読まずに発言してしまう人は、「適切な意思疎通ができない人」「こちらの状況を理解しようとしない人」というネガティブな印象を相手に与えてしまいます。

他人の意見を聞かない

自分の意見ばかりを押し通す一方的な姿勢によって、相手からの信頼は大きく損なわれてしまいます。

コミュニケーションとは、双方向に会話を重ねることで相互理解を深めることが重要であるため、一方的な主義主張を重ねるだけでは相手に不信感を与えてしまうためです。

相手の視点や感情を理解しようとしない会話は、組織内や個人間での対立を生む種となり、社内外において人間関係の悪化を招いてしまいます。

先入観が強い

「この人はこういう人だ」「この仕事ではこのやり方が最も適している」などの固定された考え方や価値観を安易に当てはめてしまうことは、良好な人間関係を築くことを難しくします。

先入観に支配された会話は、相手に対する理解や配慮が欠如した状態で進んでしまうため、聞いている相手に不快感を与え、結果的に信頼関係の損失につながってしまうのです。

自分から話しかけられない

自分から積極的に相手にアプローチできない場合、新しい人間関係を築くことが難しくなるため、組織内での孤立を促してしまうことになります。

自分の意見を全く言わない人に対しては「この人は何を考えているんだろう」と周りの人たちは不安になってしまうため、次第に意思疎通が滞っていき、周囲との心理的な距離が広がってしまいます。

また、受け身の姿勢を貫くことは、さまざまな仕事のチャンスや新しい人との交流の機会を逃してしまう可能性が高くなります。貴重な機会を逃すことが積み重なると、協力関係を築いたり、仕事の成果を上げたりすることがより一層難しくなるでしょう。

コミュニケーション能力を鍛えるための方法

ここまでで解説してきたように、良好なコミュニケーションを実現させるためには、双方向での円滑な情報交換と意思疎通が重要です。

コミュニケーション能力を鍛えることで、自分も相手も双方が心地よく有益な会話を図れるので、以下の5つの方法をぜひ参考にしてください。

対面で会話する

対面でのコミュニケーションは、言葉以外にも視覚・聴覚などのさまざまな情報を得ながらコミュニケーションを図れるおで、より細かく深く相手を理解するコツを身につけられます。

ノンバーバルコミュニケーションの機会を積極的に設けることで、互いの視線や声色、表情などから相手の感情や思考を読み解く力やその場の空気を読む力を磨けるでしょう。

相手の立場に立つ

相手の視点に立って会話を進めていくように意識することで、相手との間により良好な関係を築けます。

「この人はなぜこんなことを言ったんだろう」「この人はなぜそのような考えを抱いているのだろう」といった相手の発言の背景にあるものを丁寧に想像し読み解く力を高めることで、相手に寄り添ったコミュニケーションを図れるでしょう。

適度に相づちを打つ

適度な相づちは、相手に対する理解や共感を示し、会話を円滑に進めていくことをサポートしてくれます。

相手の意見や考えを受け入れ、積極的に関与したいという意思を示す相づちによって、相手は安心感を抱き、より強い信頼を抱くようになります。

相手を肯定する

相手の発言に対して好意的な反応を示すことで、相手の自尊心や自己肯定感を高め承認欲求を満たすことから、互いにより強固な信頼関係を築けます。

否定されない会話は大きな安心感につながるため、より建設的でクリエイティブなアイデアが生まれやすくなると言う効果も生まれます。

結論から話す

結論から話し始める方法は、相手にわかりやすく伝える力を磨くうえで高い効果が期待できます。自分が伝えたいことを会話の最初に持ってくることで、相手はこれから話されることの全体像とポイントを把握した上で話を聴けるので、より的確に話者の思いを理解できます。

わかりやすく、かつ伝わりやすい会話を構成する力が身につけることは、自信にもつながるため、徐々にコミュニケーションに対する苦手意識も和らぐでしょう。

具体的に話す

数値や事例を交えた具体性の高い話は、相手に深い理解をもたらすことで会話そのものの解像度を高められることから、双方にとってよりスムーズな意思疎通が可能となります。

また具体的に話す力を高めることで、相手との間により鮮明な共通認識を持つことができるようになるため、認識の齟齬が生まれにくくなり、円滑に仕事を進めることができます。

会社で社内コミュニケーションを活性化すべき理由

社内コミュニケーションの活性化に会社が取り組むべき最大の理由は、組織全体のパフォーマンスを大きく向上させるためです。

まず、社内で情報共有や意思疎通が円滑になることで、同じようなミスが何度も続いたり、業務のヌケモレや重複が発生したりすることの頻度が減ります。そうすると、これまで埋もれていたさまざまな課題が顕在化していくようになり、課題の解決につながるアイデアが社内から生まれやすくなります。

会議などにおけるコミュニケーションのさらなる活発化が促進されることで、社内のさまざまな課題が解決に向かい、組織の透明性が高まることで従業員のメンタル不調やハラスメントも早期の発見や対処がしやすくなります。

個々のメンバーが高い充実感と満足感を持って仕事に臨める職場環境によって、組織全体のパフォーマンスが向上し、その結果、会社の業績アップや企業イメージの向上といったさらなる好循環が生まれることも期待できるのです。

もっと詳しく!コミュニケーションに関するおすすめ論文と要約

コミュニケーションに関する論文や情報を要約して紹介します。

コミュニケーション・スキルの重要性

コミュニケーションスキルの重要性とその向上方法についての深い洞察を提供している論文です。

近年、他者への配慮や双方向のコミュニケーションが不足していることから、社会的なサポートが乏しくなり、個人の孤立や組織内の連携不足が問題となっています。コミュニケーション能力の向上は、円滑な対人関係や組織の活性化に不可欠です。

効果的なコミュニケーションには、自分のメッセージを適切に伝える(記号化)と、他者のメッセージを正確に理解する(解読)ことが含まれます。これにより、個人の活性化と集団の成果が期待されます。

集団や組織では、協同と競争が繰り返され、多くの葛藤が生じます。葛藤は、関係葛藤(価値観やパーソナリティの不一致)と課題葛藤(意見やアイデアの相違)に分けられます。

適切な葛藤の管理は、パフォーマンスの向上につながります。

ほかにも、トレーニングプログラムの実施例が紹介されており、参加者は自己の特徴を理解し、変容を自覚し、維持することが可能であることが示されています。

出典:コミュニケーション・スキルの重要性|独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)

会話コミュニケーションによる相互信頼感形成の共関心モデル

この論文は、会話コミュニケーションの研究において、相互信頼感の形成という側面に新たな光を当て、実際の会話データに基づく分析を通じて、理論的および実証的な貢献をしていることがわかります。

論文では、言語研究の歴史的背景を概説し、従来の研究が主に研究者の直観や実験心理学的方法に依存していたことを指摘しています。これに対し、現実の言語資源を基にしたコーパス言語学のアプローチや、会話分析研究の重要性を強調しています。

論文の主要な焦点は、「関心擦り合わせ (concern alignment)」という概念を用いて、会話を通じた相互信頼感の形成を分析することです。特に医療コミュニケーションの場面を研究フィールドとして取り上げ、実際の会話データを分析しています。

論文では、関心擦り合わせのプロセスが、会話における合意形成と相互信頼感の構築にどのように貢献するかを探求し、このプロセスが他者の行動に対する安定した期待を生み出し、結果として相互信頼感を強化すると主張しています。

また、今後の課題として、共関心モデルのさらなる精緻化と改善、理論内部の整備、および理論外部の課題として談話構造との関係の明確化などが挙げられています。

出典:会話コミュニケーションによる相互信頼感形成の共関心モデル|J-STAGE

監修者の編集後記

コミュニケーションは、言葉だけでも一方的に意見を発信するだけでも成り立たない、バランス感覚が問われる社会的な行為です。

コミュニケーションが苦手と感じる人やもっと上手くなりたいと感じる人は、まず相手の立場に立って、異なる視点や異なる考えを尊重し理解できるよう、意識してみてください。

コミュニケーション不足に悩んでいる人も、日頃から意識することで、より良好な関係を築けるでしょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。