忌引きとは?休暇の申請方法やメールの例文、日数、給料の有無を解説
この記事のポイント
- 忌引きとは、近親者が亡くなった際に仕事や学校を休んで、喪に服することを意味する言葉です。
- 忌引きの際には、亡くなった親族との関係(親等)に応じて、一定日数の休暇を取得できることが一般的です。
- 忌引き休暇の取得には、企業ごとのルールが定められている場合もあるほか、取引先などへの連絡が必要となることもあります。
目次
忌引きとは?
「忌引き」とは、近親者が亡くなった際に喪に服することを意味する言葉です。服喪期間中は、外出することを避け、家にこもって行動を慎まなければなりません。そのため、服喪期間中は、仕事や学校を休む必要があります。
どの程度の期間、どのような行動を慎むべきなのかは、時代や地方によって異なります。しかし、現代における忌引きはもっぱら近親者の葬儀の準備や、参列のために設けられた「忌引き休暇」を意味することが多くなっています。
忌引き休暇の概要、ルール
葬儀の準備や参列のために、「忌引き休暇」の制度を設けている企業は多く存在します。企業によっては、結婚式など慶事のための休暇と合わせて「慶弔休暇」としている場合もあり、名称は企業ごとに様々です。
忌引き休暇は企業の義務?
年次有給休暇(有給)や産前産後休業などの法定休暇とは異なり、企業が従業員に忌引き休暇を与える法律上の義務はありません。つまり、忌引き休暇は夏季休暇やボランティア休暇などと同様に、企業が独自に設定する特別休暇となります。企業独自の休暇制度であるため、正社員にのみ忌引き休暇を認め、アルバイトやパートには認めないとすることも可能です。
忌引き休暇は、法定ではない特別休暇のため、企業が制度を設けないことも自由です。そのため、場合によっては葬儀への参列のために有給を消化することもあるでしょう。しかし、葬儀への参列のために有給を消化させることは、心身のリフレッシュという有給本来の目的から外れています。入社時期によっては、まだ有給が付与されていない場合もあるでしょう。
仕事が休めないために、葬儀へ参列ができないとなれば、従業員の企業へのエンゲージメントは大きく低下してしまいます。また、近親者が亡くなれば葬儀の準備や社会保険手続き、銀行への届出など様々な作業が必要となります。このような事情からほとんどの企業では、従業員が安心して休めるように忌引き休暇の制度を設けています。
忌引き休暇制度の導入状況
厚生労働省が行った調査によると、忌引き休暇制度を設けている企業は96.1%となっています。この調査は、本社における常用従業員数30人以上の民間企業を対象としたものですが、忌引き休暇制度を設ける企業の多さが分かるデータです。
厚生労働省の調査から、慶弔休暇の実施状況を雇用形態別に見てみましょう。調査によると正社員に実施は82.7%、パートに実施は42.2%、いずれにも実施していないは6.5%となっています。なお、この数字は総数のものであり、事業所規模1,000人以上では、正社員に実施が99.7%、パートに実施が71.9%となっています。5〜29人規模でも、正社員に実施が79.8%、パートに実施が39.5%となっており、忌引き休暇制度の普及具合が分かる調査結果といえるでしょう。
忌引き休暇中の給料の扱い
近親者が亡くなれば、葬儀の費用や香典などで出費がかさんでしまいます。そのため、休暇期間中も給与を保証してほしいというのが、従業員の本音でしょう。しかし、忌引き休暇は企業独自の休暇制度であるため、休暇期間中に給与を支給するかどうかも企業の自由です。就業規則や個別の労働契約ごとに忌引き休暇中の給与の扱いは異なるため、気になった場合は確認してみるとよいでしょう。また、忌引きに対しては給与の他に「慶弔金」などとして、一定の金額を支給する企業も見られます。
忌引き休暇の期間・日数
忌引き休暇は、法定の休暇ではないため、その期間や日数も企業が自由に設定可能です。また、休暇の対象となる親族の範囲も企業が自由に定めることができます。
忌引き休暇の対象となる親族
忌引き休暇の対象となる親族の範囲は、企業が自由に設定可能です。しかし、ほとんどの企業では3親等内としている場合が多くなっています。主な3親等内の親族は、以下の通りです。
- 配偶者
- 曾祖父母
- 祖父母
- 父母
- 叔父叔母
- 兄弟姉妹
- 甥姪
- 子
- 孫
- ひ孫
従兄弟(従姉妹)は4親等となるため、忌引き休暇の対象としない企業が多いでしょう。また、企業によっては祖父母や父母、配偶者、子、孫のような2親等内のみを対象としている場合や、1親等内の父母や配偶者、子のみを対象としている場合もあります。どこまでが忌引き休暇の対象となるかは、企業によって異なるため、トラブルを避けるためにも事前に確認しておきましょう。
忌引き日数の数え方
忌引き休暇の付与日数は、企業によって異なりますが、亡くなった親族との親等によって変動することが多くなっています。以下は、3親等内の親族が亡くなった場合の忌引き休暇日数について表としてまとめたものです。
亡くなった親族 | 付与される日数 |
---|---|
配偶者 | 10日間 |
父母 | 7日間 |
子 | 5日間 |
祖父母 | 3日間 |
配偶者の父母 | 3日間 |
兄弟姉妹 | 3日間 |
孫 | 1日間 |
叔父叔母 | 1日間 |
配偶者の祖父母 | 1日間 |
配偶者の兄弟姉妹 | 1日間 |
3親等より2親等など、親族との関係性が近いほど付与日数が多くなっています。同じ父母であっても本人と配偶者で異なった日数になるなど、本人か配偶者で異なる場合が多いでしょう。また、同じ本人の父母であっても、喪主であれば10日、そうでなければ7日といったように喪主か否かで区別される場合もあります。企業が自由に設定可能な日数なため、もしもの時に慌てなくてもよいように事前に日数を確認しておきましょう。
日数自体の数え方も企業によって異なりますが、通常は以下のいずれの考え方によります。
- 対象となる親族が亡くなった日を1日目とする
- 対象となる親族が亡くなった日の翌日を1日目とする。
付与日数が少ない親族の場合には、初日を算入するか否かで大きく予定を組みなおす必要があります。慌てなくてもよいように、事前の確認が必要です。また、休暇中に会社の休日や祝祭日が含まれる場合にも注意が必要となります。休日などを含めて日数を数えるのかも併せて確認しておきましょう。
忌引き休暇の取り方や申請方法
忌引き休暇は、企業独自の休暇であるため、その取得方法や申請方法も企業によって異なります。しかし、通常は上司や人事部への連絡が必要でしょう。
上長へ連絡する
忌引き休暇の取得は、まず直属の上司への連絡が必要です。休暇日数や業務の引き継ぎについて、しっかりと伝えておきましょう。その際には、忌引き休暇中でも連絡可能な電話番号などを伝えることも必要です。また、自分が休んでいる間の業務を引き継いで貰う同僚へも連絡することが望ましいでしょう。
連絡は直接の電話が理想です。しかし、早朝や深夜の場合にはメールやメッセージで伝え、後から電話連絡を行ったほうがよい場合もあります。どのような連絡方法を取るにしても、後の業務への影響を考え、迅速に行動することが肝要です。
忌引き休暇申請の提出
所定の申請書などが必要な場合には記入のうえで提出が必要です。また、申請書自体も「忌引き休暇申請書」として独立している場合もあれば、他の特別休暇と共通の場合もあります。申請書のフォーマットも忘れずに確認しておきましょう。
申請書の形式が決まっていない場合には、以下のテンプレートを利用すると便利です。
人事部へ連絡する
忌引き休暇の申請を受け付ける部署は、企業によって異なります。しかし、多くの企業では人事部や総務部が、その役割を担っているでしょう。通常は事前に申請することが必要となるため、該当部署への連絡が必要となります。近親者が亡くなり、慌ただしい状況であっても、必要となる手続きを忘れずに行うことが重要です。
その他の必要書類の提出
忌引き休暇の取得に対して、証明書の提出が求められる場合もあります。多くの場合は、休暇明けに会葬礼状や葬儀証明書、火葬許可証などを提出することになるでしょう。どのような書類が必要なのか、原本での提出が必要なのかなどについて、休暇申請の際にしっかりと確認しておきましょう。
忌引き休暇取得のメール例文と返信例文
忌引き休暇取得の連絡は、電話などの口頭で行う場合もあればメールで行う場合もあります。本項では、企業や取引先などに対する忌引きメールや忌引きメールへの返信における例文を紹介します。
会社(上司)への忌引きメールの例文
〇〇部長
お世話になっております〇〇です。
〇月〇日に父が亡くなったため、忌引き休暇の取得を申請したく、ご連絡いたしました。
休暇期間および目的は以下の通りです。
期間:〇月〇日から〇月〇日までの7日間
目的:葬儀の準備および事後の手続き
休暇期間中は、下記連絡先へご連絡ください。
000-000-000
急なお願いとなり、誠に申し訳ございません。
何卒よろしくお願い申し上げます。
「どんな目的で」「いつまで必要なのか」といった要件のみを簡潔に伝え、個人的な心境などは記載しないようにしましょう。業務の引き継ぎなども必要となるため、迅速な連絡が何よりも大切です。
取引先への忌引きメールの例文
件名:休暇中のご連絡について
株式会社〇〇 〇〇課〇〇様
いつもお世話になっております。
株式会社〇〇の〇〇です。
〇月〇日まで忌引き休暇をいただいております。
誠に恐れ入りますが、不在時には以下の連絡先へご連絡くださいますよう、お願いいたします。
000-000-000
株式会社〇〇 〇〇課 〇〇
企業や上司へのメールと異なり、取引先への忌引きメールでは、葬儀の準備などといった詳細について触れる必要はありません。ただし、休暇期間中の連絡先が変更となる場合には、連絡先と期間について忘れずに伝えましょう。
忌引きメールへの返信例文
株式会社〇〇 〇〇課〇〇様
この度は、〇〇様のご逝去に際して、謹んでお悔やみを申し上げます。
お辛い時期かと存じますが、何卒お体を大切になさってください。
私どもにお手伝いできることがあれば、ご連絡ください。
略儀ながらメールにて失礼いたします。
こちらから忌引きメールを送る場合だけでなく、取引先などから忌引きメールを受け取る場合もあります。そのような場合には、丁寧に返信をしましょう。文面では、故人の死因に触れない、重ね重ねなどの忌み言葉を使用しないといった相手への配慮が必要です。
忌引き休暇明けの対応方法
忌引き休暇を終えて出社した際には、自分の休暇によって周囲に迷惑を掛けたことへの謝罪や、配慮へのお礼を述べましょう。突然の不幸による負担について、悪く言うような人はいないでしょうが、マナーとして謝罪やお礼を述べることは大切です。周りのサポートがあったからこそ、業務へ復帰できたと考えて、感謝の心を忘れないようにしましょう。
休暇明けには、感謝や謝罪の意を表すためにお菓子を配る場合があります。そのような場合には、食べやすい個包装タイプを選ぶとよいでしょう。また、当日に渡せない同僚や上司がいる場合を考えて、日持ちするお菓子を選ぶことも大切です。ただし、企業によっては社員の負担軽減のため、社内規定で贈り物を禁止している場合もあります。規定ではなく、慣例として禁止している場合もあるため、事前によく調べておきましょう。
監修者の編集後記-忌引きについて-
大切な近親者との別れに十分な余裕をもって臨むためにも、忌引き休暇は大切な制度となっています。しかし、忌引き休暇は企業によって、その日数や給与支払いの有無なども異なっています。いざというときに慌てないためにも、自社の制度を確認するとともに、当記事を通して忌引きについて理解を深めておきましょう。また、現在忌引き休暇制度のない企業であれば、この機会に制度を導入してみてはいかがでしょうか。
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