ワーケーションとは?意味ない?デメリットは?

この記事のポイント

  • ワーケーションとは、本来のオフィスから離れた場所で、休暇を楽しみながら仕事することを意味する言葉です。
  • ワーケーションは比較的新しい概念で、その効果も検証の段階にあり、日本では各都道府県がそれぞれ誘致を進めている状況です。
  • 観光庁などの調査から、ワーケションには従業員のエンゲージメントを高める効果が期待されています。

ワーケーションとは?

ワーケーションとは|意味ない?デメリットは?

ワーケーションとは、本来のオフィスから離れ、休暇を過ごしながら仕事もすることを意味する言葉です。幅広く使われる傾向があり、仕事で訪れた場所で隙間時間に休暇を楽しむようなケースを指すこともあれば、休暇中に少しだけ仕事をするケースもワーケーションと呼ばれます。

ワーケーションの英語表記は?和製英語?

ワーケーションとは、仕事を意味するワーク(Work)と、休暇を意味するバケーション(Vacation)を組み合わせた造語で、英語表記は「Workation」となります。和製英語と思われる方もいるかもしれませんが、実は英語圏の主要メディアで2010年代から用いられてきた言葉だといわれています。

なお、日本で英語表記をする際は、前述の「Workation」表記が主に用いられていますが、欧米のメディアでは「Workcation」などと表記されることもあります。これは、ワーケーション自体が比較的新しい言葉であり、表記が正式に統一されていないためです。

ワーケーションは意味がない?導入状況・データ

ワーケーション自体が比較的新しい概念ということもあり、導入している企業は決して多くありません。また、その効果についても現時点では検証が行われている段階です。

ただし、ワーケーションに関する調査結果については複数公表されており、それらの資料からいくつかのことが読み取れます。その1つとして挙げられるのは、ワーケーションはエンゲージメント強化など、従業員の心理面にポジティブな効果が期待できる点です。

ここでは、ワーケーションの導入状況やその効果などを解説します。

ワーケーションを導入している企業数

2022年に観光庁から発表された「新たな旅のスタイル」の報告書(以下「報告書」)によると、 調査対象とした企業のうち38%程度がテレワークを導入していることに対し、ワーケーションを導入している企業はわずか5%程度にとどまりました。

調査当時は、まだ新型コロナウイルスにより人々の活動が制限されていた時期でしたが、導入している企業は決して多くありませんでした。

なお、同庁による別の報告書(「新たな旅のスタイル」に関する実態調査報告書)によると、企業の規模別に見たとき、大企業ほどワーケーションを導入している割合が高く、300名以下の規模の企業では、導入は検討段階にある企業の割合が多いことがわかります。

参考:「新たな旅のスタイル」に関する 実態調査報告書|観光省 

企業がワーケーションを導入しない理由

前述の報告書を確認すると、ワーケーションを導入しない理由として最も多く挙げられているのは「業態としてワーケーションが向いていないため」でした。その次に多く挙げられたのが「ワークと休暇の区別が難しいため」で、3番めが「ワーケーションの効果を感じないため」と続きます。

業態としてのワーケーションが馴染まない企業があるのは、仕方がないことかもしれません。しかし、ワークと休暇の区別がつきづらい点については、勤怠管理ツールや多様な勤務制度などの導入で、今後は改善に向かう余地があると考えられます。

またワーケーションの効果については、まだ社会全体で検証段階といえるため、今後の動向次第ではイメージが変わり、導入を前向きに検討する企業が増加する可能性もあるでしょう。

ワーケーションの効果について

ワーケーションのもたらす効果の1つとして挙げられるのが、従業員のエンゲージメントの向上です。例えば、報告書ではワーケーションによる効果として、社員満足度やエンゲージメント(会社または組織に対しての愛着や貢献精神)の向上が明らかにされています。

また、パーソル総合研究所の「ワーケーションに関する定量調査」の中でも、ワーケーション後は通常の観光を行った場合に比べ、ワークエンゲージメント(仕事そのものに対しての熱意やポジティブな姿勢)の向上が大きかったことが読み取れます。

なお、パーソル総合研究所の同調査では、ワーケーションの効果を高めるポイントは「職務効力感」にあると分析しています。この場合の職務効力感とは、その体験から得られたものを仕事で活かしていけるという実感です。職務効力感を高めるためには、ワーケーション中の「非日常感」「体験の多さ」「現地交流の体験」「偶発的な体験」が重要だと分析されています。ただし、この点については導入時に工夫が必要な部分といえるでしょう。

参考:パーソル総合研究所 ワーケーションに関する定量調査

ワーケーションのデメリット

ワーケーションは一見、メリットが多いように感じられることもありますが、実際にはデメリットや落とし穴と呼べる点も存在します。また、人それぞれ仕事のスタイルや集中の方法も異なるため、すべての従業員向きとはいえない部分もあります。

したがって、ワーケーションの導入を検討している場合は、それらのデメリットも考慮に入れて進めることが必要です。

仕事とプライベートとの線引きが難しくなる

1つめのデメリットは、仕事とプライベートの線引きが難しくなる点です。勤務方法にもよりますが、ワーケーション中は1日の間に仕事と休暇が混在します。そのため、人によっては仕事とそれ以外の時間の切り替えがうまくいかなかったり、ダラダラと仕事をしてしまい集中できなくなったりするケースも考えられるでしょう。

対策としては、あらかじめ勤務する時間を決定し、上司や同僚に前もって報告するといった方法により、気持ちを切り替える準備することなどが挙げられます。

情報流出などのリスクがある

ワーケーションによりオフィス以外の場所で業務を行う場合は、どうしても情報流出などのリスクが発生します。

ワーケーション中の情報流出として考えられるのは、会社支給のPCやモバイル端末の紛失や、外出先のフリーWi-Fi経由での情報流出などでしょう。フリーWi-Fiは十分なセキュリティ対策が行われていない脆弱なものであることが多いため、マルウェアなどに感染するリスクが高いです。

そのため、セキュリティソフトの導入や社内教育など、状況に合わせた対策が求められます。

勤務中の労務管理が煩雑になる

主に労務管理上の問題ですが、ワーケーションを導入することにより、従業員の勤務中の管理が難しくなる点はデメリットとして挙げられます。

オフィスにいないため業務中の姿が見えないうえに、ワーケーションに際して変則的な勤務時間を採用していた場合などは、より従業員の状況がわかりにくくなります。

企業ごとに状況はさまざまですが、ワーケーション期間が長期間に渡る場合、特に注意が必要なポイントです。

ワーケーション誘致に力を入れる都道府県

現在では、さまざまな都道府県がワーケーションの誘致に力を入れています。地域ごとに取り組み方は微妙に異なっており、行政機関が積極的な誘致を行っている地域や、ホテルや民間企業などが観光の延長として誘致を行っている地域など、それぞれに特色があります。

また、おそらくオフィスの集中する都市部との距離にもよると考えられますが、観光に比重をおいたワーケーション誘致を行う都道府県もあるため、導入の際には自社での目的に合致した地域や施設を選ぶことが必要です。

北海道

北海道は、企業のオフィスの地方分散化の動きに合わせてワーケーションの誘致に取り組む都道府県の1つです。

元々、北海道は企業のオフィス誘致に積極的でしたが、2015年以降は総務省のテレワーク関連の事業等を有効利用し、首都圏からのいわゆる「関係人口(特定地域に継続的に多様な形でかかわる人口)」の創出に努めてきました。

例えば、ニセコ町では前述の総務省の事業なども活用し、かつてデンプン工場だった建物を改築。地域住民や外国人も利用するテレワーク拠点の場として活用されており、東京のIT企業がテレワークを実施したこともあります。道内の他の地域でも、ワーケーションやテレワークに利用できる施設がいくつか展開されているようです。

参考:ニセコ中央倉庫群ホームページ

沖縄県

沖縄は以前からサテライトオフィスの多い地域として知られていましたが、コロナ禍以降は、内閣府沖縄総合事務局がホテルやコワーキングスペースを中心に費用を交付し、より快適な作業環境を構築してきました。

そのため多くの地域で、多彩なコワーキングスペースなどを利用しワーケーションを楽しむことが可能です。

また、沖縄のワーケーション誘致は観光産業の活性化という側面も強く、ホテルなどでも高速Wi-Fiやワーキングスペースを完備した場所が多い点が特徴として挙げられます。多彩な施設の中から、それぞれのワーケーションスタイルにあった場所を選んでみましょう。

参考:沖縄リゾートワーケーション施設ガイド|沖縄リゾートワーケーション推進協議会 
参考:日本人の働き方革命!おきなわの絶景に癒されながら仕事をしよう!|White Bear Family 

和歌山県

和歌山県は、2017年から他の都道府県に先駆けてワーケーション誘致に取り組んできた地域です。元々、県南部ではIT企業の誘致などが盛んであり、そのような土台も相まってワーケーション誘致に積極的な姿勢を打ち出しています。

例えば、空港運営会社である南紀白浜エアポートでは、和歌山県公認のワーケーション総合コンシェルジュとして企業や個人の受け入れに協力しています。このように、和歌山県では南紀白浜を中心に自治体と民間事業者が連携してワーケーションの受入れを推進していることがわかります。地域との長期的な関わりを創出するプログラムが、この地域の特徴といえるでしょう。

参考:わかやまworkation guide|和歌山県情報政策課 
参考:先行取組自治体 和歌山県 株式会社 南紀白浜エアポート|観光庁 

長野県(軽井沢)

都心から程近い避暑地として知られる長野県軽井沢では、リゾートを満喫しながらのワーケーションが可能となっています。リモートワーク環境の整ったホテルやコワーキングスペースを利用してワーケーションを行えます。

例えば、西武グループと野村不動産株式会社、JR東日本が共同で展開する「Karuizawa Prince The Workation Core」は軽井沢駅から徒歩4分と便利な立地にあり、会議室や集中のためのブースも完備されるなど、ワーケーションに最適な環境が整えられています。

その他にもワーケーションに適した施設がいくつもあるため、都心から少しだけ離れてのワーケーションを検討している場合は、軽井沢を候補としてみてはいかがでしょう。

参考:Karuizawa Prince The Workation Core

ワーケーションの費用は経費になる?

ワーケーションの費用は、業務を行う上で必要なものであれば経費とすることが可能です。ただし、ワーケーション自体は新しい概念となるため、それぞれの費用についてはまだ経費となるか否かについて明確な線引きがないものもあります。基準とすべきは、その費用が業務を行うために必要であるか否かという点です。

経理やワーケーションの規程を作成する立場の方であれば、場合によっては税務署に確認を行いながら、損金計上できる範囲で経費のルールを定めることになるでしょう。一方、ワーケーションを行う側の従業員であれば、一般的にワーケーション規程など会社のルールにしたがって経費の申請を行うことになります。

以下では、それぞれの方が参考にできるように、各種費用についての大まかな考え方を解説します。

交通費

ワーケーションのために滞在先まで移動する場合、現地に行くまでの交通費は原則として経費化はできません。ワーケーションの目的が、観光や休暇という側面を持つためです。

ただし、会議や商談など、ワーケーション先で会うべき人物がいる場合などは、交通費の一部を経費として出すことも可能だと考えられます。

なお、会社によっては業務の遂行上必要と認められる期間と認められない期間を、日数等により按分して計算する場合もあるため、その際は業務と休暇の期間を明確にしておきましょう。

宿泊費

ワーケーション中の​​宿泊費については、仕事のために泊まる必要がある場合は経費とすることが可能です。逆にいえば、必要性が証明できない滞在費用については経費化できないことになります。

例えば、ワーケーションとして長期滞在するホテルは経費として認められませんが、滞在先で取引先の担当者と会うために前乗りした場合などは、経費として認められる可能性が出てきます。

ここで重要なのは業務での必要性です。休暇や観光を主な目的として宿泊している場合は、ホテルでの滞在費用は経費として計上できない可能性が高いでしょう。

コワーキングスペースなどの利用料

コワーキングスペース等の利用料については、ワーケーション費用の中でも経費として認められる可能性が高いでしょう。業務を行うために必要な経費と考えられるためです。

もちろん、会社に経費として認められていることが前提であるため、従業員として申請する場合は規程などを確認しておく必要があります。

なお、コーワーキングスペースの利用開始時には、入会金や年会費などの名目で費用がかかる場合があります。それらの費用についても、利用料同様に経費として認められる可能性があるため、会社の規程を確認しておきましょう。

もっと詳しく!ワーケーションに関するおすすめ論文と要約

ワーケーションの効果に関する研究をまとめた主な結果は以下の通りです。

  1. 仕事のストレス軽減と効率向上: 消費者は、ワーケーションが仕事のストレスを軽減し、労働効率を向上させると報告して います (Jo & Kim, 2022)
  2. 地域経済の活性化: ワーケーションは、特に地方地域での経済活性化や地域消滅の防止の手段と見なされています (Jo & Kim, 2022)
  3. 観光と地元への関与への影響: ワーケーションは、観光の副次的資源の開発を刺激し、地元社会設計への参加を促進します (Matsushita, 2021)
  4. 自然環境と整備された施設への好み: 消費者は静かで自然な環境を好む一方、提供者や専門家は整備されたインフラを備えた場所を好む傾向があります (Jo & Kim, 2022)

結論として、ワーケーションはストレス軽減、効率向上、経済活性化、地域への関与向上など、多くの利点を提供し、現代の労働とライフスタイルのダイナミクスにおいて重要な概念であることがわかります。

監修者の編集後記 -ワーケーションについて-

コロナ禍を契機に、多くの企業ではテレワークが勤務スタイルの1つとして定着しましたが、休暇を楽しみながら勤務するワーケーションについては、未だ一般化しているとはいえない状況です。

しかし、ワーケーションを行った企業では、従業員のエンゲージメントの向上など効果を実感している企業も多く、導入を検討してみる価値はあるといえるでしょう。今後は優秀で多様な人材の確保が企業の重要課題であるといえるため、採用や人事戦略の一環として検討してみてはいかがでしょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。