クールビズはいつからいつまで?男女の服装・正装時の選び方を解説
この記事のポイント
- クールビズとは、環境省が推奨する消費電力の削減を目的とした取り組み
- クールビズの服装は「ノーネクタイ・ノージャケット」が基本
- クールビズの注意点は「清潔感・胸元・足元」
目次
クールビズとは?
クールビズとは、政府が5年に開始した取り組みです。夏季の省エネルギーと地球温暖化対策を目的とし、冷房使用を減らすため、ビジネスシーンではネクタイやジャケッを着用せず、軽装を推奨しています。
また、オフィスの冷房温度の推奨温度を28℃とし、エネルギー消費削減とCO2排出量の抑制を図り、快適な職場環境と環境意識の向上に寄与しています。
クールビズはいつからいつまで?
クールビズの基本的な期間は、5月1日から9月30日です。ただし、一部の地域や企業によっては「4月から」「10月まで」など、スタートを早めたり、終了日を延長したりすることもあります。新潟県上越市役所などの一部の自治体では、クールビズを通年化する動きが出ています。
クールビズの目的が「地球の環境負荷軽減」であるため、環境に応じた臨機応変な開始・終了対応となっているのです。
「クールビズ可」との違い
クールビズと混同しやすい言葉の中に「クールビズ可」があります。クールビズ可とは、わかりやすく言い換えれば「クールビズでも良い」という意味合いです。つまり、クールビズ可には「クールビズにするか、通常の装いにするかは柔軟に判断して対応する」というニュアンスとなります。
「ノーネクタイ」との違い
クールビズは、ノーネクタイが基本です。ネクタイは首元を締めるため、シャツの中に熱気がこもりやすく、暑さが増すとも言われています。加えて、暑さを逃がすためにジャケットを着用しない状態が一般的なクールビズです。
一方「ノーネクタイ」とは、文字通り「ネクタイをしない」ということであり、ジャケットを着ないという意味ではありません。
つまり、ノーネクタイとクールビズはイコールではなく、「ノーネクタイ」には、暑さ対策よりも「気軽に」「軽装で」などの意味合いが含まれます。
「スーパークールビズ」との違い
2011年に起きた東日本大震災のときに、日本は一時的な電力不足に陥りました。その際、環境省が省エネを目的に開始したキャンペーンが「スーパークールビズ」です。
スーパークールビズの期間は、クールビズよりも少し短いめの6月1日から9月30日です。クールビズの「軽装」よりもさらに進んだ軽装であり、職場でのカジュアルな装いを指します。シャツではなく、ポロシャツやアロハシャツ、Tシャツやスニーカー、半パンやサンダルが認められる点がクールビズとの違いとなります。
2024年現在、東日本震災当時のような電力不足には陥っていませんが、温暖化防止や2050年のカーボンニュートラル実現に向けた省エネ対策の一つとして、スーパークールビズを採用している企業も増えています。
クールビズの具体的な取り組み
企業で消費される大きな電力の削減には、ノーネクタイ・ノージャケットなどの軽装が大きな役割を果たしますが、クールビズの取り組みは、ビジネスの場での装いだけではありません。
服装以外で消費電力の削減のために取り組める具体例について紹介します。
エアコンの温度設定
先述の通り、クールビズの一環として環境省が推奨しているのが「夏季の室温28℃」です。エアコンは設定温度と外気温の差が大きいほど、多くの電力を必要とします。外気温が高くなればなるほど、電気代が高くなるという仕組みです。
しかし、電気代が高くなるからといってエアコンをつけなければ暑さで体調を崩しやすくなります。反対に部屋を冷やしすぎると外気温との温度差で体調を崩しやすくなるだけでなく、多くの電力が必要です。
夏の間は「室温(エアコンの設定温度ではない)を28℃に保つ」を実践することで、人体にも環境にもやさしい暮らしを目指します。
温度に適した服装
クールビズでは、暑さに対応できる服装が推奨されています。ビジネスの場ではノーネクタイ、ノージャケットが主流です。「ビジネスカジュアル(オフィスカジュアル)」という名称で表されることもあります。
消費電力の削減というクールビズ本来の目的を意識することも重要ですが、年々厳しくなる夏の暑さを少しでも過ごしやすくできるよう、服装で工夫することも大切です。
労働時間の調整
一見あまり関係がないように見える服装と労働時間ですが、服装によって仕事の効率をアップさせ、結果として労働時間を短縮することができます。
クールビズの軽装であれば室温が28℃のオフィスや施設であっても快適に過ごすことができ、快適に働くことで仕事効率がアップし、労働時間を短縮、ワークライフバランスの調整にもつながるでしょう。
企業の設備を工夫
クールビズを実施するために必要なのは、ビジネスパーソンの服装やエアコンだけではありません。機能が整った設備も省エネの追求に欠かせません。下記はクールビズに適した機能的な設備の一例です。
- 高機能エアコン設備
- 風通しの良い窓
- 断熱性の高い壁や屋根
- 日差しを遮るカーテンやブラインド
- サーキュレーター
エアコンは一般的に、新しい機種ほどエネルギー効率が良く、電気代を抑えられる傾向にあります。加えて、省エネ性能の高いエアコンを導入することで、効率的な空調管理が可能になります。他にも、風通しや日よけ、室内空気の循環などに必要な設備を設けることも大切です。
【男性】クールビズの服装
社会人として初めての夏を経験する人や、最近になってクールビズを導入した企業で働いている人は「クールビズ」と言われても、どのような服装であれば良いのかピンと来ないかもしれません。
基本的には勤務先が指定するクールビズのドレスコードに合わせることになりますが、特にドレスコードの指定がない場合は以下の組み合わせが一般的です。
シャツ+ジャケット+スラックス
男性のクールビズで迷ったときは「シャツ+ジャケット+スラックス」の組み合わせが安心です。ジャケットを着ていても、ネクタイをしないだけで暑苦しさが軽減されます。
また、以下のポイントを押さえておくとさらに快適に過ごせます。
- 綿や麻、ポリエステル混合素材
- シャツの下に汗を吸収するインナーを着用する
- 着替え用のインナーを持っておく
特に社外に出ることが多い営業職の人などは、汗をかく機会が多いうえに清潔感が求められます。汗染みや臭いが気にならないよう、素材やインナーで工夫をするとよいでしょう。
ポロシャツ+ジャケット+カジュアルパンツ
クールビズよりもより軽装の「スーパークールビズ」であれば「ポロシャツ+ジャケット+カジュアルパンツ」などがよいでしょう。
ポロシャツは襟がついているため、ジャケットやパンツの合わせ方によって、オフィシャルな印象とすることもできます。さらに、以下の点を意識しておくと快適さとビジネス感を出せるでしょう。
- ポロシャツはシンプルなデザイン
- チノパンなどのカジュアルパンツはシワになりにくい物
- ジャケットを着る場合はカジュアルにも合わせやすい麻や綿を選ぶ
スーパークールビズではアロハシャツも着用可能範囲に入ることがありますが、色柄によってはカジュアルすぎる印象になるので注意が必要です。
【女性】クールビズの服装
普段から、男性のようにジャケット着用が必須でない女性はクールビズのコーディネートに迷いやすいかもしれません。
女性の場合はクールビズの期間中と期間外の装いに大きな変化がないことが多いですが、その分ビジネス感を失わないようにしたいものです。
シャツ+ジャケット+スカートやパンツ
ビジネス感のあるクールビズや、クライアント対応がある職場であれば「シャツ+ジャケット+スカートやパンツ」の組み合わせが一般的です。
女性はネクタイを締める習慣がない人が多いため、ジャケットを羽織ることでビジネス感を出すことが多いことでしょう。以下のことを意識しておくと、さらに上品でさわやかなクールビズスタイルに仕上げることができます。
- 白やライトブルーなどさわやかな色柄のシャツ
- シックな印象のジャケット
- スッキリとしたラインのスカートやパンツ
女性のシャツの場合、色や形のバリエーションが豊富です。着用時に心地よく、かつ周囲にさわやかな印象を持ってもらえるようなものを選びましょう。
ワンピーススタイル
特にジャケット着用の指定がないクールビズであれば、女性にはワンピーススタイルもあります。ワンピースは上下の組み合わせを考えなくて良いため、忙しい朝や何かとわずらわしく感じる暑い日でも選びやすいのでしょう。
ただし、ワンピースはジャケットのように脱いで体温調整をすることができません。着替えが気軽にはできないため、以下の点に注意しましょう。
- 素材によっては汗や熱気がこもりやすい
- タイトな作りで汗をかいたときに動きにくい
- インナーの着替えを持っておく
ワンピース自体の着替えを持ち歩くのは手間だと思います。外回りの後はインナーだけ着替えるなどをして快適性を保つ工夫を心がけましょう。
クールビズの期間中の正装時のマナー
軽装であるほど、「正装時は本当にこの服装で良いのか」と疑問を抱くものです。そこで、クールビズ期間中であっても、社会人として覚えておきたい「クールビズの正装時マナー」を2つ紹介します。
TPOは常に考える
まずは、TPOを考えましょう。クールビズは環境のために環境省が推奨している取り組みですが、ビジネスの場で誰かが不快に感じる装いは禁物です。
特にクライアントと会う日や、改まった場に顔を出す日は注意を払いましょう。男性であればポロシャツよりもシャツ、女性であればジャケットを着用するなど場所や状況に合ったものを選びましょう。
正装時はネクタイ+ジャケットが安心
クールビズ期間中であっても、契約の場や初めての挨拶の場、式典など、正装が必要な場面があります。
正装が求められる場合は、クールビズ期間中であっても「ネクタイ+ジャケット」の組み合わせが安心です。女性であれば、上下セットのスーツやワンピース+ジャケットなどが一般的です。
性別によらず、白×黒や白×グレーなどコントラストのはっきりとした色を組み合わせるとフォーマルな印象に仕上がります。
クールビズに関する注意点
消費電力の削減を目的とした「クールビズ」には、働く人や地球環境への良い影響がたくさんあります。
しかし、同時に注意点もあります。自分が快適でも、周囲への気配りも忘れないように意識しておきましょう。
清潔感を重視する
毎日暑い中の通勤や勤務では、どうしても清潔感を保ちにくくなります。
- 汗による衣類の汚れ
- 汗や生乾きの臭い
- 衣類のシワや傷み
清潔感は、本当に清潔かどうかだけでは足りないことがあります。自分ではきちんと清潔にしているつもりでも、ちょっとした臭いやシワなどで台無しになることもあるかもしれません。仕事で着用する衣類の洗濯やメンテナンスは欠かさないようにしましょう。
胸元を開けすぎない
ノーネクタイが許容されるクールビズでは、胸元から体の熱気を逃がすことができますが、ボタンを開けすぎるなどの露出には注意が必要です。
- シャツのボタンを外しすぎている
- 胸元の広いカットソーを着用している
胸元の露出は男女ともに、周囲へ不快感を与えることがあります。クールビズの胸元は「鎖骨の1/3が見える程度」が目安です。
足元にも注意を
クールビズであっても、足元には注意が必要です。
- 男性は基本的にひも靴、またはローファーなどの革靴
- 女性は通常のビジネスシューズやつま先が見えないサンダル
- バックストラップのないミュールは避ける
企業によってはスニーカーやオープントゥのサンダルが許容されていることもありますが、一般的なクールビズでは着用しません。
また、足裏は汗をかきやすい部位でもあるため、靴下を着用した方が汗を吸収して清潔を保てる場合もあります。
もっと詳しく!クールビズに関するおすすめ論文と要約
クールビズに関する研究(4)
この論文は、ビジネスウェア着用者である男性と、その服装に客観的意見を持つであろう女性の意識に着目し、男女有職者を対象にクールビズ推進を含む職場環境や、夏期における男性のビジネススーツスタイルに対する意識調査を実施した研究です。
この研究の目的は、クールビズ環境下でのビジネススーツスタイルの意義を考え、気候と職場環境に適したビジネスウェアを提案するための資料を得ることです。
結果として、男性のビジネススーツスタイルに対する意識について、男性は7因子で構成され、女性では「ビジネススーツスタイルの必要性」,「スーツやシャツの素材」,「ビジネススーツスタイルの擁護」,「ビジネススーツスタイルのカジュアル化」,「シャツの着こなし」,「個性の表現」,「おしゃれ感」,「身だしなみ感」の8因子が抽出されました。
また、男女ともに職場の室温設定28℃が46%、43%、職場でのクールビズの推進は73%、60%と、職場環境に浸透するなか、男女とも男性のビジネススーツスタイルに否定的でないことがわかりました。
これらから、今後のクールビズにおける衣服環境は、軽装化のみならず涼しく快適に着用できる素材の選定、デザインの提案、着こなしの工夫が不可欠と考えられます。
クールビズに関する研究(1)
この論文は、環境省が推奨し、普及活動を行っているクールビズについて、その社会への浸透度合いや今後の方向性を調査し、男性服のデザイン提案に寄与できる知見を得ることを目的とした研究です。
この調査から、「社会的な規範」、「環境問題に対する意識」、「デザイン性」、「フォーマル性」、「機能性」、「スタイルへのこだわり」の6因子が夏の服装についての意識を構成することがわかりました。
また、年代により「フォーマル性」に対する考え方が相違し、夏の服装についての意識により、20歳代や50歳代は3グループに、その他の年代は2グループに分かれることがわかりました。
夏の服装についての意識には、主に上司や仕事相手がクールビズを取り入れているかどうかの影響が大きく、地球温暖化防止意識の向上や省エネルギー化には、自社におけるクールビズ普及活動が大きく影響することが明らかとなりました。
これらの結果から、今後のクールビズの方向性を推測し、男性服のデザイン提案に寄与できる知見を得ることができました。この研究は、クールビズの取り組みを深く理解し、それを推進するための重要な資料となります。
内容分析と感情分析を用いた新聞報道からみたクールビズ
この論文は、地球温暖化対策であるクールビズについて、メディアが何を市民に伝えたのか、市民はどのように評価したのかを明らかにすることを目的とした研究です。
この研究では、新聞報道の抽出記事と読者の投書記事をテキストデータ化し、内容分析と感情分析を用いて分析を行いました。
内容分析の結果から、クールビズの報道は経済政治面に集中していたことがわかりました。これにはクールビズの官製需要の側面が関係していると考察されています。
また、感情分析の結果から、すべての感情極性値はネガティブな値を示していました。しかし、これは気候変動に関する人々の行動変容の観点から必ずしも悪い結果ではないと考えられています。
監修者の編集後記 -クールビズについて-
「クールビズ」が始まって9年、2024年の今では夏の常識となりました。
30℃を超えることが決して珍しくなくなってしまった日本の夏にうんざり…という社会人は多いですよね。
しかし、一人ひとりの気づかいや工夫が日本、世界、地球全体へと影響します。
周囲や企業と協力し、お互いを理解し合いながら、暑い夏を乗り越えましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。