有給日数の仕組みをわかりやすく解説【バイトも対応】
この記事のポイント
- 有給休暇とは、賃金が支払われる休暇のこと
- アルバイトやパートでも有給休暇は取得できる
- 有給休暇は毎年同じタイミングで増える
目次
有給とは?労働基準法での定義をわかりやすく解説
有給休暇とは、賃金が支払われる休暇のことであり、一定の条件が満たされると、会社から「有給休暇」が与えられます。
有給休暇の取得については、労働基準法第39条に定められており、取得タイミングと取得できる日数には、以下の条件があります。
- 雇入れの日から起算した勤続期間
- 勤続期間に伴った有給日数
また、会社から付与される有給日数は、法律にのっとり、勤務形態や社歴などに個々よって違いがあるので、各自確認する必要があるでしょう。
有給と有休の違い
賃金が発生する休みの有給休暇は「有給」または「有休」と記載されます。「給料が支給される休み」という意味では「有休」の方が適しており、「有給」と言う表記の場合、給与が発生するという意味合いで捉えることもあるかもしれません。
有給の英語表記は?
有給は英語で「paid leave」と表現します。paid leaveとは、労働者が働かなくても給与が発生する休暇を指します。類似の言葉として「paid vacation」もありますが、こちらはpaid vacationは給与の発生する休暇の中でも比較的長期の休みのことです。
そのため、日本の従業員が一般的な権利として取得する有給休暇は「paid leave」の方が適しています。
有給の使い方
有給休暇の使い方には、特に定めはありません。具体的な理由を申告する必要もなく、基本的には従業員の希望した日程で取得できます。
ただし、職場の繁忙期など人材が不足すると業務の遂行に支障をきたす可能性がある場合は、日程をずらして取得するよう指示を受けることもあります。
有給の付与日数の仕組み
有給休暇は、決まったタイミングで決まった最低日数以上の付与が義務付けられています。
採用された日ではなく、雇用から日から6カ月が経過した日から、年次有給休暇付与の対象となります。
有給の付与日数は法律で決まっている
有給休暇の付与日数は、労働基準法によって定められています。
【通常労働者の有給休暇付与日数】
勤務継続年数 | 付与日数 |
---|---|
6カ月 | 10日 |
1年6カ月 | 11日 |
2年6カ月 | 12日 |
3年6カ月 | 14日 |
4年6カ月 | 16日 |
5年5カ月 | 18日 |
6年6カ月以上 | 20日 |
引用:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
上記のように、雇用された日から6カ月が経過した日を起算点として、年次有給休暇の取得が得られるようになります。
また、勤務継続年数とは、その企業の所属在籍期間のことであり、病気やけがなどで別途休暇を得ている期間も含まれます。ただし、会社都合の休業期間は全労働日から除外しなくてはなりません。
会社によって有給の付与日数が違う理由
雇用される企業によっては、付与される年次有給休暇が上記の表の日数よりも多いことがあります。有給休暇は労働基準法によって定められているのに、「なぜ会社によって違うの?」と疑問を抱く方もいることでしょう。
労働基準法によって定めている年次有給休暇日数は「最低限必要な有給休暇日数」であるため、企業によっては勤続6カ月であっても12日間の有給を取得、5年6カ月以上でも21日間有給休暇の取得が可能、ということも考えられます。
条件を満たしているのに有給が付与されないのは違法
年次有給休暇が付与される条件を満たしていても、従業員に有給休暇が付与されないのは労働基準法に対する違法行為です。雇用主は正当な理由なく、従業員からの年次有給休暇の取得申請を拒否できません。
雇用主の「忙しいから」「人が足りないから」などの都合は、有給休暇申請を拒否する理由になりません。従業員と相談の上、有給休暇取得の時期を調整などの工夫が必要です。
アルバイト・パートの有給の付与日数をわかりやすく解説
年次有給休暇と聞くと「正社員だけの権利」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、アルバイトやパート従業員であっても雇用形態にかかわらず有給休暇は付与されます。
有給は雇用形態にかかわらず付与される
年次有給休暇は、正社員、契約社員、時短社員、アルバイト、パートなど雇用形態にかかわらず付与される権利です。ただし、アルバイトやパートには正社員と異なる有給休暇付与条件があります。
条件に満たない場合は日数と勤続年数で付与
アルバイトやパートで働いている場合、有給休暇の付与は、週の勤務日数と、週の労働時間を基準に行います。
以下の表は週の勤務日数が5日に満たない労働者の有給取得日数例です。
勤務継続年数 | 付与日数 |
---|---|
週4日以上勤務 | 7日 |
週3日以上勤務 | 5日 |
週2日以上勤務 | 3日 |
週1日以上勤務 | 1日 |
継続勤務年数が、1年・1年6カ月・2年…など長くなるにつれて、付与される有給休暇日数が増えます。
パートタイム労働の有給額は3種類
一般的な有給休暇は、通常勤務と同じ賃金が支払われますが、パートタイム労働やアルバイトの場合は、雇用主が決めたいずれかの賃金が支払われることもあります。
- 通常賃金が支払われるパターン
- 平均賃金が支払われるパターン
(計算方法:直近3カ月の賃金総額÷休日を含めた全日数、または直近3カ月の賃金総額÷労働日数で割った額×0.6)
- 標準報酬月額が支払われるパターン(計算方法:標準報酬月額÷該当月の日数)
標準報酬月額とは、健康保険料の算定に使う項目です。有給額は企業によって異なることがあるため、上記いずれのパターンが有給額とされているか確認しておきましょう。
基本的には時期や理由にかかわらず取得できる
有給休暇は各個人の取得理由や、取得時期にかかわらず取得ができます。有給の理由を上司や会社へ報告する必要なく、基本的には有給取得時期も個人の希望での取得が可能です。有給休暇の理由を記載する必要がある場合は「私事都合」などで構いません。
繁忙期などにより時季変更権が行使されることがある
年次有給休暇は、いつでも希望の時期に取得ができます。ただし、在籍する企業にとっての繁忙期に該当する場合、社員が希望する有給休暇の取得時期を変更するよう促す「時季変更権」の行使が認められています。
雇用主は、社員の有給取得理由を求めることはできませんが、繁忙期を理由に時期の変更を依頼することがあるため、認識しておきましょう。
予定した有給の買取は認められない
有給の「買取」は法律では認められていません。ただし、以下の場合は例外として有給休暇を賃金へ変えることが可能です。
- 退職時に余った有給休暇を消化するための買取
- 有給取得が可能になってから2年が過ぎた有給休暇の買取
- 法律で定められた休日日数を超えた有給休暇の買取
もともと、有給休暇は従業員のワークライフバランスのための制度ですが、常に買取を可能としてしまえば目的である「ワークライフバランスのための有給休暇」という構図が崩れてしまいます。
上記の3つの例外は、いずれの場合も有給休暇の目的に反しないことから、例外として認められているのです。
有給の理由は何で書けばいい?【例文集】
有給休暇は個人の希望で取得し消化できます。理由についても定めはありません。とはいえ、実際に勤務先で有給休暇を取得する際には上司へ申請を提出しなければならないケースがほとんどと言えるでしょう。ここでは、有給休暇取得理由の例文をご紹介します。
例文1
- 私用のため
- 私事都合のため
- 用事があるため
有給休暇を自分や家族のリフレッシュとして使いたい、という方は多いでしょう。
特に伝えるべき事由でなければ、上記のような簡単な記載で問題ありません。
例文2
- 旅行のため(長期や海外旅行の場合)
- 子どもの学校行事のため
- 役所へ行くため
上記のいずれも「私用」としても問題はありません。しかし、長期旅行や海外旅行など不在中に何かがあったときのために必要と思える理由であれば記載してもよいでしょう。
例文3
- 結婚式のため
- 葬式のため
- 法事のため
冠婚葬祭は事前に日程がわかるものと、そうでないものがあります。特に葬式や通夜は突然のことであるため、後に有給申請をすることもあるでしょう。その際は、申請が後になった理由がわかりやすいように休暇の理由を書いておくのが一般的です。
有給はいつ増える?
年次有給休暇は最初の有給休暇起点日(雇用から6カ月が経過した日)から、毎年同じタイミングで増えます。
そのため、有給休暇を消化していない場合は有給がたまっていく、という仕組みです。
有給はいつ消滅する?
年次有給休暇には、2年間の消滅時効があります。
つまり、有給休暇は取得した日から、2年が経過すると消滅するということです。
有給休暇の消滅は、有給休暇が付与された日から2年であり、雇用から2年ではありません。
忙しさに追われて、気がついたら有給休暇がなくなっていた…という状況は、この消滅時効が原因であることがほとんどです。
連続して有給を使うことは可能
有給休暇は、連続して使えます。ここで言う「連続して使う」とは、有給休暇が20日付与されている場合、20日間まとまった有給休暇を取得することもできる、という意味合いです。土日など企業の休みを合わせると、20日以上の連休になりますが、有給休暇の使い方としては問題ありません。ただし、職場の人員不足など事情によっては希望通りに休めないこともあるので、注意しましょう。
本人の承諾なく有給を消化することは違法
有給休暇は、本人の承諾なく消化することはできません。例えば、体調不良で欠勤をした日にちを上長が勝手に有給休暇として処理することは違法です。ただし、体調不良の欠勤を本人の希望で有給休暇にすることはできます。
いずれにしても、有給休暇は付与された本人のためにあるものであるため、本人の承諾なしに消化することはできないのです。
有給の取得状況に関するデータ
有給休暇を積極的に取得し、個人が外出や旅行を楽しもうという趣旨の国土交通省が推進する『ポジティブ・オフ運動』などで、有給のあり方について再度考えさせられた人は少なくないのではないでしょうか。
過去、日本では有給休暇の取得に対してネガティブなイメージを持つ企業や従業員が多く、有給休暇を消化しないまま消滅させてしまうことが珍しくなかったようです。
ポジティブ・オフ運動をはじめとした有給休暇取得への積極的な取組みによって、最新の調査では過去にない結果が出ています。詳細は次の通りです。
令和4年の調査では有給取得率過去最高値
2022年に厚生労働省が発表した『令和4年就労条件総合調査』では、有給取得率(※付与された有給休暇を取得できている率)が、過去最高値をマークしました。
2015年頃は過去最低の46.6%だったのが、労働者1人あたりの平均年次有給休暇取得率が、2022年には58.3%まで上昇しました。
有給休暇の取得について世間の注目が集まった結果、有給取得状況を見直した企業が多い、という見方もできそうです。
業種による取得日数のバラつきには変化なし
年次有給休暇取得には、業種によるバラつきがありました。厚生労働省の『令和4年就労条件総合調査』でも、業種による取得日数のバラつきに変化はありません。
宿泊業やサービス業、小売業など一般的な休日が繁忙となる業種では、依然として比較的低い取得率となっています。
また、1,000人以上の企業は1,000人以下の企業に比べて有給休暇取得率が63.2%と高い点もポイントです。
有給の計画的付与を行う企業も
企業の中には、計画的な有給休暇付与を行っているところもあります。計画的な有給休暇取得とは、「年次有給休暇は5日を残し、5日を超える有給休暇を計画的な休暇取得に割り振る」ことができる制度です。
5日間の有給休暇は、個人が自由に取得できる日数として残しておく必要があり、残った有給休暇を本人が病気や個人的な事由に充てられるようにしておけば、計画的な有給休暇の付与は可能です。
もっと詳しく!有給に関するおすすめ論文と要約
我が国における正社員の有給休暇及び連続休暇の取得の要因に関する実証分析
この論文「我が国における正社員の有給休暇及び連続休暇の取得の要因に関する実証分析」は、日本における正社員の有給休暇と連続休暇の取得に影響する要因を分析しています。国際的な基準と比較し、日本の有給休暇制度が国際基準に達していないこと、及び実際の有給休暇の取得率が低い現状を指摘しています。著者は、2010年に正社員1,300人を対象に行ったアンケートを基に、有給休暇取得に影響する様々な要因を分析し、政策的な示唆を導き出しています。
分析結果は、有給休暇の取得が企業の属性や個人の属性、家族状況に左右されることを示しています。例えば、大企業の勤務者、専門・技術職、双方が正規雇用の配偶者を持つ者は有給休暇を取得しやすい傾向にあります。また、週労働時間が長い人は休暇取得が少なく、職場の人間関係や高収入は連続休暇の取得を促進します。さらに、年次有給休暇の付与日数が多い人は休暇を多く取得しやすいが、逆に保有日数が多い人は取得しない傾向があります。
これらの結果から、著者は有給休暇を考慮した労働管理、代替要員の確保、ジェンダー平等政策の推進、余暇意識の醸成など、雇用環境や個人の意識を向上させる政策を提案しています。また、労働基準法における有給休暇の繰越制度の再考など、法そのものの改善についても示唆しています。
出典:京都産業大学「我が国における正社員の有給休暇及び連続休暇の取得の要因に関する実証分析」
なぜ日本企業では有給休暇の取得率が低いのか
この論文は、日本の労働者の年次有給休暇の取得率が低い理由について、様々な要因を分析し、その影響を評価しています。論文では、法律・制度、取得方法、企業の態度、労働者の心理という四つの主要な要因を調査し、それぞれが有給休暇取得率にどのように影響するかを探っています。
分析結果からは、法律・制度や取得方法が有給休暇の取得率に直接的な影響を与えていないことが示されました。しかし、企業の態度と労働者の心理は有意に影響を及ぼすことがわかりました。特に、企業が有給休暇の取得を促進する態度を取ることや、労働者が「職場の雰囲気」や「上司の評価」に影響されず休暇を取ることが、取得率の向上に貢献すると結論づけています。
また、論文は、有給休暇の日数を増やすことが取得率に影響を与えないものの、実際に休暇を取得する日数を増やすことは可能であることを指摘しています。さらに、この分析は育児休業や産前産後休業などの似た構造を持つ休暇にも応用できる可能性があるとしています。
論文の結論として、労働者個々の心理や企業の態度が有給休暇取得率に重要な影響を与えること、そして法律や制度の変更だけでは不十分であることが強調されています。また、今後の研究課題として、労働者単位でのより詳細な分析や、実現可能性の高い政策提案の必要性が挙げられています。
出典:甲南大学「なぜ日本企業では有給休暇の取得率が低いのか」
監修者の編集後記-有給について-
有給休暇は働く人全ての権利であり、有給休暇の本来の目的である「ワークライフバランス」を整えるため、仕事のバランスを考えながら積極的に取得していきたいものです。
有給休暇の取得ができる起点日や、取得した有給休暇の日数、消滅時効などをきちんと把握して、与えられた有給はうまく活用しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。