オブザーバーとは?意味や会議での役割、よくある質問について解説
この記事のポイント
- オブザーバーとは、メインメンバーではなく会議を見守る役割として会議に参加し、出席者の意見を公平に聞き、コメントする場合には客観的かつ中立な立場で行います。
- オブザーバーは、会議における議決権を持っていません。
- 業務に関連する他部署の会議にオブザーバーとして参加することにより、部門横断的な情報の共有が可能になります。
- オブザーバーは、アドバイザーとは異なり、自ら積極的に発言することはしません。
オブザーバーの意味とは?
オブザーバー(observer)の辞書的な意味は、事の状態や動き、変化などを注意深く見ながらも、自らそこに加わらない人のことです。会議には出席しても議論には参加しないといったイメージがありますが、実際のオブザーバーは会議において積極的な役割を果たしています。
オブザーバーの言い換え
observerを日本語に訳すと、傍聴者、観察者、監視者、立会人などとですが、ビジネスシーンの「オブザーバー」は、もっと主体的な役割を担うものとして定着しています。
オブザーバーを言い換えるとすれば、学会のコメンテーターが近いでしょう。学会のコメンテーターは、司会者や進行役の指名を受けて発言するという立場ですが、セッションでの質疑応答の活性化や演題発表の場における聴講者の理解支援といった役割を果たします。
ビジネスでの意味・使い方
ここでは、会議の場でオブザーバーが果たしている役割を、いくつかの典型的な例を挙げることで、ビジネスシーンにおけるオブザーバーという言葉の意味・使い方を説明します。
まず、オブザーバーは、会議に参加するけれども、あくまでも会議の流れを観察することに徹しており、自分の意見を述べることはせず、議決権を持ちません。仮にコメントをすることがあったとしても、それは自分の立場による考えではなく、会議の出席者にとって客観的な内容でなければなりません。会議の出席者が気づかなかった論点を述べる形となるのです。
また、オブザーバーは、会議の出席者の発言に対し多角的な視点からコメントすることにより議論の新たな展開をもたらしてくれます。特定の出席者に肩入れすることなく、あくまでも中立的な立場に立ち、会議の公平性を担保します。
ビジネス以外での意味・使い方
国連には、国連憲章には規定のない、「常駐オブザーバー」というポジションがあります。常駐オブザーバーは、国連加盟国ではありませんが、多くの会合や関連文書に自由にアクセスする権利を持っています。日本だけでなく、永世中立国スイスやイタリアなども国連に加盟する前は常駐オブザーバーの立場として動いていました。なお、スイスにおいては、2002年9月10日も国連に加盟しています。
また、コンピュータ・プログラミングの分野にもオブザーバーがあります。この場合のオブジェクトは、プログラムの要素の一つで、データとその操作手段を一つにしたものを「object」として考えています。あるオブジェクトの状態が変わったときに、この変化を把握し、他のオブジェクトにその変更を知らせる役割があるのです。
オブザーバーの役割
オブザーバーは主役ではありませんが、出席者(主役)の発言を適切に導き、会議を有意義なものに導きます。ただし、オブザーバーが、このような役割を果たすことができるのは、テーマについて専門的知見を持ち、議論の進行において客観性と公平性を保っている場合です。
会議のスムーズな進行
会議がスムーズに進行しない原因は、いくつか考えられます。出席者の知見が不足している、ベースとなる概念の理解に齟齬がある、意見の対立が感情的になりつつある、などです。オブザーバーが会議の冷静に流れを観察し、進行役の求めに応じ的確なコメントを提示することで、会議がスムーズに進行していきます。
公平な会議を促す
公平な会議とは、全ての出席者が同じように発言できる機会を持ち、全ての発言が他の出席者に傾聴されることです。活発な提案と正当な反論があってこそ議論が深まり、高い成果を得ることができます。そのためには、知見のあるオブザーバーの参加が有効です。議論の流れを的確に言い換えることで、出席者全員が互いの意見を正しく理解し、尊重し合う姿勢が醸成されます。
議題内容を客観的に確認する
会議の場では、時おり議題の意味を誤解した発言が出てきます。明らかな間違いは進行役や事務局が修正できますが、出席者の間に議論の行方を左右するような誤解が生じた場合、オブザーバーの客観的で的を射たコメントが求められます。こうした場合も想定し、会議の主催者は、事前にオブザーバーに会議の趣旨などを説明しておきましょう。
コンプライアンスを遵守する
会議によっては、一定の方向性に議論が集約するにつれてヒートアップし、状況によっては自己中心的な議論になってしまう恐れがあります。論点がずれてくると、往々にして結論にコンプライアンス上の問題が生じるリスクが懸念されます。このようなときに必要なのが、視座の高い客観的なコメントを提起してくれるオブザーバーの存在です。オブザーバーが参加することで、会議のメンバーに適度な緊張感が生まれ、冷静で責任ある発言を促してくれます。
業務の情報共有
他部署の業務との関連が強いテーマについて会議を開く際、その部署の担当者にオブザーバーとして参加してもらう場合があります。こうしたことを相互に行うことで、関連する部署の間で情報共有が行われ、横断的な連携や協力が促進されることが期待されます。
また、プロジェクト会議の場に上司がオブザーバー参加することで、プロジェクトの進捗状況や課題などを把握することも可能です。
オブザーバーを入れた方が良い会議
会議におけるオブザーバーの役割を整理してみると、その客観性、公平性、専門性を発揮することで会議の成果を高めるところにあります。こうした役割を活かす場面としては、次のような会議が考えられます。オブザーバーにふさわしい人物の参加を検討してみてください。
若手社員中心の会議
若手社員中心の会議で懸念されるのは、業務に関する知識や経験が乏しいため議論が発展しないことです。また、同様の理由で発言に客観性がなく自説に固執してしまうケースもあります。こうした場面で必要なのは、議論の幅を広げたり、深めたりする知見やものの見方の提示、あるいは客観的かつ広い視点からのコメントです。こうした能力を備えた人物にオブザーバー参加を依頼することで会議の成果が期待できます。
参加人数が多い会議
参加者が多い会議では、進行役は議論を進めるのに手いっぱいとなり、他のことに行き届かない可能性もあります。議題についての発言内容を適切なタイミングで整理してくれるオブザーバーが同席することで、進行役の負担が軽減され、会議の進行がスムーズになります。出席者にとっても、さまざまな意見を集約したコメントを得ることで会議の全体を把握しやすくなります。議題が多岐にわたる場合には、複数のオブザーバーの参加を求めることも検討しておきましょう。
社員研修や育成を目的とした会議
例えば、ロールプレイングやプレゼンテーションなどの実践的研修の場に、上司がオブザーバー参加し、研修終了後に気づいた点などを指摘し、助言を与えることで有意義な研修になります。
それとは反対に、若手社員をオブザーバーとして上位職の会議に参加させるのも有効な研修方法です。上位職の視点や考え方を直接知ることができる貴重な機会になることでしょう。
マンネリ化してしまった会議
まずは、マンネリ化の原因を探ることが第一です。その中で、出席者の知識や経験の不足、情報の不足などが原因となっている場合には、オブザーバーの参加によってマンネリを打開できます。議論を縦に深掘りする場合には専門性のある人物を、横に広げる場合には他部署に協力を依頼することが考えられます。
他部門と情報を共有したい会議
他部門と情報共有する場合、その部署の担当者をオブザーバーとして出席を求める場合があります。例えば、部署の案件に対するスタンスが決まっていない場合、情報共有の意味で当方の議論を把握してもらいたいという目的でオブザーバーとして参加を求められることがあります。
オブザーバーが心がけること
オブザーバーのメインの役割は、会議を見守ることです。発言については、原則として進行役に求められたときにだけ行えます。ここが、アドバイザーの役割と異なる点です。
議論の流れによっては、ここでコメントを入れるべきだという場合があります。その場合には、オブザーバーは、その趣旨を進行役に説明し、了解を得たうえでコメントをする場合も時おりあります。ただし、これは例外であり、やむを得ない場合です。
オブザーバーについてのよくある質問
オブザーバーは、重要な機能を持ってはいますが、組織の中に明確に位置づけられているわけではありません。そこで、オブザーバーについての「よくある質問」をまとめておきます。
オブザーバーの席はどこを用意するのがよい?
オブザーバーの席は、求める役割や職位に応じて設定します。また、机の設置については、メインテーブルだけかサブテーブルも置くかによっても席の配置が異なってきます。若手社員が研修の一環として上位職の会議にオブザーバー参加するのであれば、サブテーブルが適切です。それ以外の場合であれば、メインテーブルに席を用意したうえで、職位などに配慮した設定をします。
オブザーバーは意見を言ってはいけない?
オブザーバーは進行役から求めがあった際に発言するのが原則です。ただし、進行役が不慣れで議論の停滞や錯綜が生じていたり、出席者の間に緊迫した意見の対立があったりする場合には、オブザーバーの判断で適宜発言することはあります。ただし、この場合でも進行役の了承を得てから発言するのが基本です。
オブザーバーには議決権はある?
オブザーバーは、あくまでも会議を見守る立場であり、会議を取りまとめる当事者ではありません。したがって、会議における議決権はありません。このルールを逸脱することは、会議のコンセプトを崩してしまうことになります。
オブザーバーにはどんな人を参加させればよい?
新人や若手をトップマネジメントの会議に参加させる、上位職が業務の進捗状況を把握するために参加する、といった場合であれば、人選の問題は生じません。
問題が発生するのは、議論の白熱が予想される会議、議論が停滞し積極的な発言が乏しい会議、特定のメンバーがつながって議論の方向性をずらす恐れのある会議、技術や法律、マーケティング、財務などの分野で深掘りしたい会議などの場合です。会議の主催者は、上記のような展開を見極めてオブザーバーを人選する必要があります。
オンライン会議でオブザーバーが気をつけることはある?
オンライン会議であっても、オブザーバーの役割は変わりません。参加にするにあたり、自分に求められているものが何であるかを会議の主催者に確認し、それを踏み外さないようにしましょう。
監修者の編集後記 -オブザーバーについて-
オブザーバーという言葉は、すでに日本語として定着しているように思われます。ただし、辞書的な訳語である日本語では、オブザーバーが本来持っている積極的な役割を表すことができないでしょう。
今後は、どこかしら曖昧なイメージを与えるオブザーバーの位置づけをビジネスシーンで明確化し、さらなるブラッシュアップしていくことが必要だと思われます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。