自己肯定感の基礎知識-高める方法・チェックリスト

この記事のポイント

  • 自己肯定感(self-esteem)とは、自分自身の良い面も悪い部分も肯定できる感覚を指しています。
  • 自己肯定感が高いと物事に対してポジティブな思考ができる一方で、自己肯定感が低いと自分に自信が持てず物事をネガティブに考えがちです。
  • 自己肯定感を高めるには、生活の中で小さな成功を積み重ねていくことが大切です。また、思考の癖を理解することで必要以上にネガティブに考えずにすむでしょう。

自己肯定感とは?

自己肯定感の基礎知識-高める方法・チェックリスト

自己肯定感(self-esteem)について、平石賢二氏(1990)が論文の中で「自己の態度が好ましい、あるいは望ましいと評価することである。その場合、個人の中で認識し、評価する領域と、他者や集団から自己がどのように映っている のかを理解し、判断する領域の2つが存在する」と述べています。

つまり「自分自身を評価したときに、良い面も悪い部分も肯定できる感覚」と言えるでしょう。また、似たような言葉に「自尊感情」があり、ほぼ同じ意味を持っています。

自己肯定感の形成には、幼少期の家庭環境が大きく影響するといわれていますが、大人になってからの経験や環境によっても変化していきます。

参考:<資料>青年期における自己意識の発達に関する研究 (I) : 自己肯定性次元と自己安定性次元の検討|名古屋大学学術機関リポジトリ

日本人における自己肯定感に関するデータ

長年のさまざまな調査によって、自己肯定感は人の心身や社会スキルに影響を与えることが明らかになっています。ここでは、その一例を確認しておきましょう。

自己肯感と幸福感の関係

伊藤正哉氏と小玉正博氏(2005)の研究では、自己肯定感が幸福感に影響を及ぼすことが分かりました。

自尊感情が高い人は幸福感も高く、自尊感情が低い人は幸福感も低い傾向が明らかになっています。さらに、自己肯定感が低い場合には抑うつ傾向が見られたそうです。

参考:自分らしくある感覚(本来感)と自尊感情がwell-beingに及ぼす影響の検討|J-STAGE

自己肯定感とレジリエンスの関係

レジリエンスとは、「傷ついた時や落ち込んだ時に立ち直る力」を指しています。

齊藤和貴氏と岡安孝弘氏(2014)の研究から、自己肯定感が高い人はレジリエンスも高い傾向が明らかになりました。つまり、自己肯定感が高い人は嫌なことがあっても回復しやすいといえるでしょう。

ただし、自己肯定感が低くてもコミュニケーション能力や対人スキルが高い場合にはレジリエンスが高くなる結果も示されました。自己肯定感が低い場合でも、相談できる人がいたり現実的な解決方法を知っていたりすると回復しやすいと考えられます。

参考:大学生のソーシャルスキルと自尊感情がレジリエンスに及ぼす影響|J-STAGE

自己肯定感が低い人の特徴

自己肯定感が低い人には、一定の特長がみられます。ここでは、自己肯定感が低い人のおもな特長を紹介します。

失敗や挑戦を避けようとする

自己肯定感が低いと、「どうせ失敗する」と思って挑戦を避ける傾向が高いです。一方、自己肯定感の高い人は失敗でも肯定的に捉えており、失敗を回避せずに挑戦します。

本音を言えない

自己肯定感が低い人の特徴として「主張が苦手」が挙げられます。「間違っているんじゃないか」「相手に嫌な思いをさせそう」と思った結果、本音がなかなか言えません。本当は嫌なことでも断れず、疲労や後悔が溜まることもあります。

注目や賞賛を求める

自己肯定感が低いと、自分自身の評価が低かったり、安定しなかったりします。その結果、他者からの注目や賞賛を求める傾向がみられます。

営業成績や資格など社会に適応した注目の求め方もあれば、嘘や自傷行為といった人に迷惑がかかるような注目の求め方もありえるでしょう。

怒りっぽい

自己肯定感が低い人は、自分に対する不満からストレスが溜まりやすいです。ストレスのサインが人によっては、怒りっぽさとして表現されることがあります。なお研究の結果、このような傾向は男性に多く見られるようです。

自己肯定感が仕事にもたらす影響

続いて、自己肯定感の高低がどのように仕事に影響を及ぼすか見てみましょう。

自己肯定感が高い場合の仕事への影響

自己肯定感が高い人は、自分のやり方や意見に自信を持って仕事を進められるためストレスを抱えずらい傾向があります。新しいことでも失敗を恐れずに取り組める人が多いため、出世しやすいと考えられているようです。

なかには、自己肯定感と能力に差がある人もいます。自己肯定感が高くても能力が見合っていなければ、本人ではなく周囲が困ってしまうでしょう。

自己肯定感が低い場合の仕事への影響

自己肯定感が低い人は、周囲の顔色を伺いながら仕事をするためストレスが溜まりやすい傾向があります。新しいことを避けようとするため、出世の機会を逃してしまうこともあるかもしれません。

ただし周囲の顔色を伺う力や、人を立てる力が生きる仕事も少なくないことも事実です。上手く力を活かせれば、ストレスはかかるかもしれませんが大きな結果を残すこともあるでしょう。

自己肯定感のチェックリスト

自己肯定感のチェックリストを準備しました。人と比べて自分自身の自己肯定感は高いのか低いのかチェックしてみましょう。

いいえどちらかといえばいいえどちらかといえばはいはい
1私は自分に満足している。1234
2私は自分がだめな人間だと思う。4321
3私は自分には見どころがあると思う。1234
4私は、たいていの人がやれる程度には物事ができる。1234
5私には得意に思うことがない。4321
6私は自分が役立たずだと感じる。4321
7私は自分が少なくとも他人と同じくらいの価値のある人間だと思う 。1234
8もう少し自分を尊敬できたらと思う。4321
9自分を失敗者だと思いがちである。4321
10私は自分に対して、前向きな態度をとっている。1234

引用:桜井(2000)、「ローゼンバーグ自尊感情尺度日本語版の検討」

35点以上→自己肯定感は高い方です。

34〜22点→自己肯定感は平均的な範囲です。

21点以下→自己肯定感は低い方です。

こちらのチェックシートを、客観的に自分を理解するための目安としてもらえれば何よりです。

自己肯定感を高めるための方法

どのようなことに取り組むことで、自己肯定感を高めることができるのでしょうか。ここでは、自己肯定感を高めるための方法を紹介します。

小さな成功体験を積み重ねる

自尊感情を育むためには、成功体験が大切です。しかし初めから大きな目標を立てると挫折してしまい、かえって自尊感情が下がってしまいます。そのため、無理のない小さな目標を立てて、それを確実に成功させていくと良いでしょう。

成功しても「こんなことできて当たり前」と卑下する方がいますが、「これなら確実にできる力があるんだ」と捉えることが大切です。

自分の考え方の癖を知る

「失敗を1つ指摘されただけで、全人格を否定されているような気持ちになる」「人と話した後、相手の気を悪くさせたのではないかと思う」など、必要以上にネガティブに考える癖のある人はいます。このような人は、合理的な考え方をすることが大切です。

「失敗を1つ指摘されたけど、他の部分はできている」「人と話して、怒られたわけでも悲しんでいたわけでもないから大丈夫」と考えることにより、自己肯定感の低下を防げます。

合理的な視点を思いつくためのヒントは「人からこのことを相談されたら、何とアドバイスするだろう」と考えることです。はじめから合理的に思えなくても問題はありません。まずは、時間をかけて考え方の癖を知ること、そして現実的な思考に気付くことが大切です。

自分を大切にしてくれる環境で生活する

自己肯定感を上げるためには、周囲の環境が非常に大切です。自分を大切にしてくれるパートナーや職場環境に身を置くと、徐々に「自分は大切にされるべき存在なんだ」と思えるようになり自己肯定感が上がっていくでしょう。

逆に自分を傷つけたり大切にしてくれない環境の側にいると自己肯定感が下がりやすいため、時には勇気をもって環境から離れることも大切です。

もっと詳しく!自己肯定感に関するおすすめ論文と要約

自己肯定感についてもっと詳しく知りたいという方に、2つの論文を紹介します。

自己の諸側面と自己全体の肯定的意識との関連

研究の主な目的は、個人の自己の側面(例えば、容姿、経済力など)の評価が自己肯定感、幸福感、意欲、自尊感情にどのように関連しているかを明らかにすることです。また、この関連性が年齢層や性別によってどのように異なるかも検討の対象となっています。

研究では、自己の側面を「身体能力」「健康」「容姿」「知的能力」「性格」「人間関係」「家庭」「仕事上・家事上の能力」「経済力」「社会における立場」という10のカテゴリーに分類し、これらの側面の評価が自己全体の肯定的意識(自己肯定、幸福感、意欲、自尊感情)にどのように影響するかを分析しています。

研究の結果、自己の側面の評価と自己全体の肯定的意識との間には強い関連があることが示されました。特に、「容姿」と「社会における立場」が自己肯定に関連し、「家庭」が幸福感に関連し、「仕事上・家事上の能力」が自尊感情に関連する傾向が見られました。また、性別や年齢層によってこれらの関連性に違いがあることも明らかになりました。

この研究は、自己の側面の評価が個人の心理的健康や幸福に重要な影響を与えることを示しており、自己認識や自己評価の理解に貢献しています。また、異なる年齢層や性別における自己の側面の重要性の違いを明らかにすることで、より効果的な心理的支援や教育プログラムの開発に役立つ可能性があります。

出典:自己の諸側面と自己全体の肯定的意識との関連|モチベーション研究所・IMSAR

コミュニケーション行為による自己肯定感向上に関する研究

この研究は、不況や社会の変化の中で将来に不安を感じる子どもたちに焦点を当て、コミュニケーション行為を通じて自己肯定感を高める方法を探求しています。

研究の要旨では、現代社会における子どもたちの不安感や自信の喪失、将来への希望の喪失などの問題を指摘し、これらの問題に対処するためにキャリア教育の視点から道徳性を育成することの重要性を強調しています。研究では、コミュニケーション行為を通じて道徳教育を実践し、その結果として自己肯定感の向上と道徳的価値の変化を検証しています。

研究の第一部では、現代社会の問題点として、若者の人間関係の構築の困難さ、意思決定の不足、自己肯定感の欠如などが挙げられています。また、コミュニケーション不足がこれらの問題に大きく関与していると指摘されています。

第二部では、自己肯定感の必要性について詳述されており、特に「浅い自己肯定感」と「深い自己肯定感」の違いが説明されています。この部分では、自己肯定感を深めることの重要性と、そのために必要なコミュニケーション行為の充実について論じられています。

第三部では、自己肯定感を高めるための道徳授業の実践概要が示されています。ここでは、ハーバーマスのコミュニケーション行為理論を参考にして、道徳教育の実践において一定のルールを用いた授業方法が紹介されています。また、具体的な授業例として、メジャーリーガーイチローの野球人生を題材にした授業が挙げられています。

出典:コミュニケーション行為による自己肯定感向上に関する研究―キャリア教育の視点からみた道徳授業実践を通じて―|モチベーション研究所・IMSAR|岡山大学学術成果リポジトリ

監修者の編集後記 -自己肯定感について-

自己肯定感とは、自分自身の良い面も悪い部分も肯定できる感覚のことです。

人間は誰しも完璧ではなく、苦手なことや、失敗した経験があり自己肯定感が下がる要因を持っています。その一方で、必ず良い部分や、成功した経験など自己肯定感が上がる要因も持つことも特長です。

すぐに自己肯定感を上げることは難しいかもしれません。しかし、自分の良い部分は素直に良い部分として理解しておくことで、自己肯定感の向上につながるでしょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。