ラポールとは?意味やビジネスのメリット、信頼関係を築く5つのテクニック
この記事のポイント
- ラポールとは、相手との間に築かれる信頼関係のことです。
- ラポールは社内の上司や部下、同僚などの人間関係だけではなく、取引先との良好な関係性作りにも活用でき、ビジネスにおいて注目されています。
- ラポールを形成するメリットは、信頼関係の構築や円滑なコミュニケーション、生産性の向上など数多くあり、企業内で実践されています。
目次
ラポールとは?
ラポール(rappol)とは、相手との間に築かれる信頼関係のことです。「橋をかける」という意味のフランス語が語源となることから、相手と心が通じ合っている状態を表します。ラポールの形成とは、お互いの気持ちが通じ合う状態を指します。
ラポール形成の様々なシーン
ラポールは、身近なところで知らず知らずに形成しており、親子関係や友人関係もその一つです。また、ビジネスでは上司と部下、取引先などでラポールが形成されると信頼関係が築かれ、職場環境の改善やビジネスの成果アップが期待できます。
ラポールの形成が上手な人とは?
ラポールの形成が上手な人は、相手と信頼関係を築くことが得意です。良好なラポールが形成されると、「尊敬されている」「話を聞いてもらえている」「見てもらえている」と相手に感じさせることができるでしょう。
ビジネスで注目されている理由
ラポールは、社内の人間関係だけではなく、取引先との良好な関係性も築くことができます。ラポールは幅広い場面で活用できる点や、組織にもたらすメリットが大きいことから、ビジネスシーンにおいて注目されています。
ラポール形成のメリット
ここからは、ビジネスシーンでラポールを形成するメリットを5つ紹介していきます。
信頼感を高められる
相手に対して不信感があると、仕事の指示がスムーズに通らないことや、契約が思うように進まないこともあるでしょう。ラポールを形成すると、お互いのことをよく理解できるようになるため、不信感が取り除かれます。「この人なら大丈夫」といった信頼感を高められるのです。
自分の考えや意見を発信しやすい
ラポールを形成すると相手に対する信頼感が高まり、安心して自分の考えや意見を発信できるようになります。部下や同僚、顧客に対してお互いの考えや意見を積極的に伝え合うことができるため、よい循環が生まれます。
円滑なコミュニケーションが図れる
ビジネスシーンでは、意思疎通が十分でないとプロジェクト進行に支障をきたすこともあるでしょう。ラポールが形成されていると、お互いの感情や思考を伝えやすくなるため、より円滑なコミュニケーションを図ることが可能になります。
建設的なフィードバックにつながる
ラポールが形成されると、チーム内に協力的な関係が築かれます。チームのメンバー同士、気兼ねなく意見を言い合えるようになり、建設的なフィードバックを行えるようになるでしょう。そのため、コミュニケーションがスムーズになり、課題解決や目標達成などの成果につながります。
生産性の向上が期待できる
ラポールの形成によって、組織内のメンバーへの安心感や信頼感があれば、スムーズなやり取りや思い切りのよい行動が可能になります。必要最低限のコミュニケーションで業務を進めることができるため、無駄を省き、組織の生産性を向上させることができるのです。
ラポール形成のための5つのテクニック
ラポールを形成するためには、いくつかのテクニックがあります。ここでは、実際のビジネスシーンで活用できる5つの手法を紹介します。
ミラーリング
ミラーリングとは、相手のしぐさや行動をまるで鏡のように合わせていくテクニックです。相手と動作を合わせることで、好意や共感を示すことができます。相手からやや遅れながら真似することがポイントです。
ペーシング
ペーシングは、相手のペースに合わせるテクニックです。相手の話す速度がゆっくりであれば自分もゆっくりと話すようにすると、親近感が生まれて心を開きやすくなります。初対面の人であってもペーシングを行うことで、コミュニケーションが円滑に進むでしょう。
マッチング
マッチングとは、話すテンポや声の強弱などを相手と合わせるテクニックです。ペーシングと似ていますが、より相手の話し方を意識することがポイントです。相手の話し方や呼吸のタイミングなども観察して、同じように会話することで話しやすさを感じてもらうことができます。
キャリブレーション
キャリブレーションは、相手の言葉以外のサインから心理状態を読み取ることです。相手が「疲れていない」と言っても、顔色が悪いようであれば体調が万全ではないことがわかります。「でも、具合が悪そうだよ」と気遣うことがキャリブレーションであり、信頼感や好感が得られるのです。
バックトラッキング
バックトラッキングとは、相手の言葉を返すことです。相手が「話しを聞いてほしい」と思っているタイミングで行うのがポイントです。自分と同じ言葉が返ってくることで、「きちんと話を聞いてくれている」と相手に好感を持ってもらえるでしょう。
ラポール形成のためのポイント
ここでは、ラポールを形成するための3つのポイントについて解説していきます。
相手を肯定・尊重すること
ラポールを形成するには、相手を肯定・尊重することが最も重要です。「相手をコントロールしたい」という気持ちでは、真のラポールは形成されません。たとえ自分と考えが違う場合であっても、まずは相手を肯定して尊重する姿勢を持ちましょう。
相手のペースに合わせた行動をすること
相手のペースに合わせた行動をすることも、ラポール形成のための重要な要素です。人は自分と似ている人間に好意を抱くことが多いとされています。そのため、相手の話し方や行動に合わせることで、よい関係性を生み出すことができます。
自然にふるまうこと
ラポール形成のテクニックをあからさまに行うと、不自然となり逆効果です。相手に不信感を与えてしまう場合もあるでしょう。相手に合わせようとする気持ちがあれば、自然と行動が伴うものです。テクニックだけに頼りすぎず、自然なふるまいで相手に安心感を与えることを目指しましょう。
ラポール形成を実践している企業の事例
ラポールの形成は、社員同士のコミュニケーションを促進して企業内で多くのメリットを生み出します。ここでは、ラポールの実践に取り組む企業の事例を紹介します。
1on1ミーティング|ヤフー株式会社
ヤフー株式会社は、上司と部下が週1回30分間対話する「1on1ミーティング」を2012年から実施しています。「1on1ミーティング」の実施により、部下のモチベーションが高まり、業務効率の向上につながっています。
30分の対話は、基本的に部下が自分の考えを話す時間です。上司は言葉にならない部下の思いを引き出すために、研修を受けて面接に臨みます。
「1on1ミーティング」は、上司と部下のラポールを形成するための取り組みとも言い換えることができます。上司が部下一人ひとりへの理解を深めることで、部下の隠れた能力ややる気が引き出されるのです。
参考:「1on1ミーティング」で強い組織をつくる 人材育成のための部下とのコミュニケーション|ヤフー株式会社
mertip(メルチップ)制度|株式会社メルカリ
株式会社メルカリでは、リアルタイムに感謝を送り合う「mertip(メルチップ)」という制度を導入しています。mertipでは、社員同士が社内コミュニケーションツール上で「感謝」を贈り合うことができます。
感謝の気持ちを伝えることは、ラポールを形成する上でも効果的です。在宅勤務で顔を合わせる機会が減っている中でも、mertipで感謝を伝え合い、気軽にコミュニケーションを取ることができます。
mertip導入後のアンケートでは社員の満足度が高く、同社のようなコミュニケーションを日々積み重ねることで、良好な信頼関係を築くことが可能になるでしょう。
参考:メルカリのピアボーナス制度「メルチップ」、メッセージ累計数が100万を突破しました|メルカリ株式会社 mercan
もっと詳しく!ラポール形成に関する論文と要約
ラポール形成に関する論文を要約して紹介します。
初対面の3人会話におけるあいづち ―ラポール構築の観点から―
あいづちの定義、種類、そしてそれが会話においてどのように機能するかについて詳細に説明されています。また、3人の初対面の男性による日本語の会話を分析し、あいづちがラポール(相互理解や協調の構築)にどのように貢献するかを探求しています。
一つの会話では、あいづちを頻繁に打つことにより、ラポールが効果的に構築されました。この会話では、一人の参加者が主に聞き手の役割を担い、共話的な会話展開が行われました。
もう一方の会話では、あいづちがほとんど使われず、ラポールの構築がうまくいかなかったことが示されました。この会話では、参加者が互いに自分の意見や経験を語り、時には対立を生む情報も含まれていました。
この研究では、うなずきや視線などの非言語行動は考慮されていませんでした。非言語行動も会話の流れやラポールの構築に影響を与える可能性があります。
出典:初対面の3人会話におけるあいづち―ラポール構築の観点から―|岐阜聖徳学園大学
監修者の編集後記-ラポールについて-
ラポールを形成すると、良好な信頼関係を築けるようになり、円滑なコミュニケーションを促進します。社内の職場環境が改善されるだけでなく、取引先との関係も良好になり、業績アップにもつながるでしょう。ラポールが多大なメリットをもたらすことから、積極的に導入して成果を上げている企業もあります。ぜひ本記事を参考に、ビジネスシーンでのラポール形成に役立ててください。
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