MECEとは?考え方や活用場面、具体例を解説(テンプレート付き)

この記事のポイント

  • MECE(ミーシー)とは、ビジネスで使われる思考法の1つ。漏れや抜け、ダブりがないという意味合いで使われる。
  • MECEを使う中で行き詰った場合は、トップダウンアプローチやボトムアップアプローチで考えるとよい。
  • MECEの注意点は、すべての事象が分類できるわけではない。

MECE(ミーシー)とは?

MECE(ミーシー)とは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字から取っている造語です。直訳は「お互いに重複せず全体的に漏れがない」です。ビジネスで活用するときは、漏れ・抜けがない、ダブりがないという意味合いで使われます。物事を整理するときに必要な要素をすべて網羅して、漏れがないよう整理する目的があります。

また、販売戦略の立案やプロジェクト管理に重宝される考え方です。なぜビジネスでMECEが必要なのか解説します。

MECEはロジカルシンキングの基本

ロジカルシンキングとは、問題を解決するために道筋を立てて考える思考のことです。例えば、取引先とのトラブルを解決する際に、問題の原因や解決策を考えるときにロジカルシンキングが役立ちます。

ロジカルシンキングを使う際には、重複せずに、全体的に漏れがないように整理する必要です。漏れや抜け、ダブりがないという考え方が元となるため、MECEは必要不可欠な要素といえます。

なぜビジネスでMECEが必要なのか

ビジネスでは、複雑な問題を論理的思考でシンプルに整理することが大切であるため、MECEが必要です。そうすることで漏れや抜けがないようになり、より効率的に解決する方法が求められるためです。

もし、MECEを活用していなければ、重複することが多く、プロセスが増えることで余計な時間が取られることも少なくありません。

ビジネスはスピード勝負です。MECEを意識することで、全体的な事象から必要ないくつかの要素を分割して考えられます。

また、活用することで問題解決へ向けて正しく取り掛かり、導き出せます。情報の整理や課題の細分化を促進するために必要です。

MECEを考える際のイメージ

MECEを考える際のイメージとして、2つ挙げます。

  • 漏れもなくダブりもない
  • MECEに当てはまらない例

MECEに当てはまらない例を3つ紹介します。例を知り、活用できないか考えてみましょう。

漏れもなくダブりもない

MECEの2つめのEである、Exhaustive(漏れもなくダブりもない)状態に分類します。

例えば、雇用形態ごとの分類です。

  • 正社員
  • 契約社員
  • 派遣社員
  • 業務委託
  • アルバイト

上記のように分類すると、漏れもなくダブりもない状態となります。

MECEに当てはまらない例

MECEに当てはまらない例として3つあります。

  • 漏れがあり、ダブりはなし
  • 漏れがあり、ダブりもある
  • 漏れはないが、ダブりがある

1つ目に漏れがあり、ダブりはない状態の例です。

  • 大人向け
  • 子ども向け
  • 男性向け
  • 女性向け

この4つのうち、1つでも抜けていたら、漏れがあるため、MECEに当てはまりません。

2つ目に漏れがあり、ダブりがある状態について紹介します。例えば、ある店舗一覧のエリアの分類です。

北海道・東北
関東
中部
大阪
近畿
四国
九州

地方で分類しているはずが、大阪府が混ざっています。そして、大阪府は近畿地方の中に分類されるため、ダブりが生じます。さらに、中国地方が抜けているため、MECEに当てはまりません。

3つ目に漏れはなし、ダブりありの例は、ターゲットを年齢層で分類するとします。30代以下、30代、40代をターゲットとする場合。30代以下は、30歳を含むため、ダブりがある状態です。

このように、MECEに当てはまらない例もあるため、考える際には、しっかりイメージさせましょう。

MECEを用いた思考が活用できる場面

MECEを用いた思考が活用できる場面として、5つ挙げられます。

  • 新規事情や新商品の企画検討
  • 販促戦略の立案
  • 市場調査
  • ターゲットの選定
  • プロジェクト管理

実際に取り入れて、活用するとよいでしょう。以下に一つひとつ解説します。

新規事業や新商品の企画検討

新規事業の計画を立てるときに使用するとよいのが、要素分析である3C分析です。3Cは顧客(customer)、自社(company)、競合(competitor)の頭文字を指します。

3C分析を活用することで、外部環境と内部環境の2つの側面から考慮して事業の方針や、商品の売り方を決められます。新商品を企画検討する場合、商品を全体像として、機能性や利便性、金額などの切り口でMECEになるように要素を細分化するために使われることが多いです。

販促戦略の立案

販促戦略の立案では、4P分析が有効です。商品をどのように効率的に販売できるかの戦略をするために使われます。

4Pとは、Product(製品)Price(価格)Place(流通)Promotion(プロモーション)の頭文字です。それぞれ、細分化して分析をおこなうことで戦略が立てられます。

製品に関するMECE(機能性やデザイン)流通では、どこまでの販売範囲にするかを決めるために活用されます。

プロモーションでは、広告活動や宣伝方法のやり方などを決めるために活用することが多いです。

市場調査

市場調査では、顧客を年齢や性別など属性で分け、それぞれの特性に合わせた施策を検討するケースに使えます。漏れなく行えるため、分析の速さと正確さが上がるでしょう。

このようなときMECEに分類すると、対象の要素を漏れなくダブりなく考えられます。そのため、問題や課題にも正しく着手できるとされています。

ターゲットの選定

MECEはターゲットの選定に活用できます。例えば、人を採用する場合です。

  • 国家資格を持つ人を採用の条件とするなど、必須要件を言語化する
  • ターゲットをMECEに分類できる要素を決める(年齢別や地域別など)
  • 設定したターゲットが市場にどれくらいいるか調べる

また、採用担当者のプロセスの管理にも活用できます。採用要件ヒアリングして、求人票を出して、面談して内定決定などに分解します。

情報を重複なく整理することで、ターゲットの特性やニーズをより正確に理解し、それに基づいたアプローチを取ることができるでしょう。

プロジェクト管理

MECEの思考を使って、プロジェクトを管理できます。プロジェクトのリソースやタスクをMECEを用いて考えることで、タスクの重複やリソースの把握ができ、見落としを防げる効果があります。

プロジェクト全体のタスクを重複なく進められるため、効率的に管理できます。活用してみましょう。

MECEを用いて全体像を考える方法

MECEを用いて全体像を考える方法は2つあります。

  • トップダウンアプローチ
  • ボトムアップアプローチ

全体像を考えることで、細かく分解しやすくなるでしょう。それぞれの概要や注意点について解説します。

トップダウンアプローチ

トップダウンアプローチとは、全体をみて大きな枠を決め、そこに細かな要素をあてはめていくという手法です。

例えば、性格にあてはめる場合、誠実性や協調性、外向性などと大きく分類できます。このように、性格という全体像から細かな要素へ変えるという手法です。

トップダウンアプローチは全体が明確で、全体をイメージすることができ、分ける部分が明確になっている場合に有効な手法です。ノウハウがある場合、トップダウンアプローチを使うことが多いでしょう。

注意点は全体がぼんやりしていたり、切り分ける要素が曖昧であれば分類しても漏れやブレが出てしまったりすることです。

ボトムアップアプローチ

トップダウンアプローチとは逆で、先に要素を切り分けてから全体像を導く方法です。他にも、以下の使い方があります。

  • 要素を並べてグルーピングして、分類の仕方を決める
  • どのように分類すればいいか悩んだときに使える

全体がぼんやりしている状態でも、使えるアプローチ方法です。注意点は、要素の洗い出しに失敗すると、ブレや漏れが生じる可能性があることです。

MECEを用いて切り口を考える方法

MECEを用いて切り口を考える方法として、4つ挙げます。

  • 要素分解
  • 因数分解
  • 対象概念
  • 時系列・ステップ分け

使い分けることで、さまざまなビジネスに活用できます。以下で1つずつ確認していきましょう。

要素分解

要素分解とは、大きな問題や課題を小さな部分に分解することです。

やり方は、課題や問題の全体像を把握して、各要素へと分解します。分解した要素をあわせたときに全体像になるよう、切り分ける手法です。「積み上げ型」と呼ばれることがあります。

因数分解

因数分解というと、数学の問題のように思われるでしょう。実は、ビジネスのシーンでも因数分解ができます。

例えば、仕事で実施する内容を細かく分けることです。細かく分けることで、マルチタスクに見えていた仕事が、分業化が可能となり、やるべき仕事の整理が行えるようになります。

このように、因数分解をして見える化をおこなうことで、漏れなく仕事が進むようになるでしょう。

対称概念

対称概念で分類する方法は、対照的な2つの事柄で物事を分類することです。

  • 上下
  • メリット・デメリット
  • 固定・変動
  • 量・質
  • 経験者・未経験者

カテゴリーが2つにしか分けられないため、分類がしやすいのが特徴です。

時系列・ステップ分け

時系列・ステップ分けをおこなう方法です。対象を段階で分類する方法の例を紹介します。

  • ステップ1 原材料を仕入れる
  • ステップ2 原材料を加工する
  • ステップ3 商品が完成する
  • ステップ4 出荷する

このように、商品が作られて出荷するまでの流れをステップごとに分類する方法などが該当します。

MECEの無料テンプレート

MECEを使うと、わかりやすく、論理的に説明できるようになります。また、正しい全体像の把握や要素の分解を可視化することで、思考が整理されるため、ビジネスに活用されています。

物事の整理や分類をおこないたい方は、MECEの無料テンプレートを活用してください。ダウンロードは下記リンクからできます。テンプレートを使いビジネスに活かしましょう。

MECEの注意点

MECEの注意点は、すべての事象をきれいに分類できないことです。明確にグループ化ができない場合は、効果がありません。

MECEの分類に力を入れて、本来の目的を忘れてしまうことは避けましょう。何のために分類をするのか、目的をはっきりさせてからおこなうようにする必要があります。

もう1つの注意点として、ダブりよりも漏れに気をつけることです。抜けや漏れを無くすための思考方法のため、ダブりよりも漏れに重点を置くとよいでしょう。

活用するメリットは多くありますが、MECEの考え方にこだわりすぎて、結果が得られないとならないように注意しましょう。

監修者の編集後記 -MECEの法則について-

MECEは、ダブり、漏れがない状態にすることです。ビジネスで、新規商品の販売戦略や、プロジェクト管理などに用いられます。

MECEを用いて全体像を考えるには、トップダウンアプローチ、ボトムアップアプローチの活用が必須です。それぞれの特徴にあわせて使い分けるとよいでしょう。

注意点として、MECEを考えることに時間を使いすぎないことです。目的を達成するための手段であるため、本来の目的を忘れないように活用しましょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。