出張とは?期間や距離・費用相場や規程の作成方法、経費精算を解説

この記事のポイント

  • 出張とは、業務目的で一時的に会社や住まいから離れた場所へ赴くこと
  • 出張手当とは、食費や雑費を補填する経費
  • 出張申請から経費精算までは5ステップ

出張とは?期間や距離

出張

出張とは「一時的に勤務先や職場から離れた場所で業務に従事すること」です。通常の勤務ではなく、出張の機会として主に次の4つがあります。

  • 業務研修やOJTトレーニング
  • 会議や打ち合わせ
  • 展示会などのイベント参加
  • 現地調査や視察

上記以外の目的でも会社が必要と判断すれば、出張扱いです。なお、日帰りになっても距離によって出張扱いになる場合があります。例えば、東京勤務の人が日中名古屋の出張で夜に帰京する場合は、日帰り出張に該当します。

出張はどこから?通勤との違い

出張と勘違いしやすいのが「遠方への通勤」です。例えば、通勤は勤め先が遠方であっても、日常的に出勤をするは通勤です。他にも不定期で仕事のために移動することは出張の要件として含まれるでしょう。

また、通常は支店出勤で半年間だけ本社出勤というケースなどは、出向という扱いになる場合があります。

出張費の相場

出張には移動費や宿泊費など、さまざまな費用がかかります。移動費や宿泊費は、移動手段・宿泊先によって金額に差が出ますが、基本的には会社負担です。

企業によっては、総務担当が予算内で移動手段や宿泊先を選び、予約することもありますが、出張する本人がそれらの手配を行う場合もあります。

出張日当の相場

出張日当とは、出張で発生する食事代や飲み物代、チップや雑費のことです。

【出張日当の相場】

  • 国内:10,000~20,000円 ※役職によって金額が異なる場合がある
  • 海外(アジア諸国):10,000~20,000円
  • 海外(NYやロンドンなどの都市部):30,000円~

出張日当は、出張先の物価に影響されます。そのため、国外の中でも物価が高いとされるニューヨークやロンドンへの出張日当は高くなる傾向です。

宿泊費の相場

自分で出張の宿泊先を選ぶ際、留意したいのが宿泊費です。

出張の宿泊費の相場は以下を参考にしましょう。

  • 【国内】ビジネスホテル:1泊/5,000~10,000円
  • 【国内】シティホテル:1泊/10,000~20,000円
  • 【国内】リゾートホテル:1泊/15,000~30,000円
  • 【海外】アジア地域:1泊/5,000~15,000円
  • 【海外】欧米地域:1泊/15,000~30,000円

ホテルの宿泊費は、予約経路やシーズンなどによって日替わりすることも珍しくありません。同じホテルであっても、予約の仕方で宿泊費が異なることもあるので、よく検討しましょう。

また、市街地になるほどホテル代が高いとは限りませんし、街から離れたところにあるから安いとも限りません。場所によっては、周囲に価格競争するホテルがないことで、宿泊費がやや高額に設定されていることもあります。

出張に関わる交通費

出張は、基本的には通常よりも遠いところに赴くので、通勤定期券などではカバーできないのが前提です。

宿泊費と同様に、出張の往復交通費は会社が負担します。

  • 新幹線:10,000~30,000円
  • 飛行機:20,000~40,000円

新幹線、飛行機ともに移動距離や早割キャンペーンなどによって金額が異なるため、上記は一般的な相場と考えてください。

また、飛行機については運賃の安い「LCC」を利用するかどうかで、金額に大きな差が生じます。飛行機を利用する出張の場合は、会社の出張規程や指定航空会社があるかどうかを事前に確認しましょう。

出張の際に支払われる手当

出張の際には、出張経費と出張手当の2つが支給されます。企業によっては、出張経費と出張手当を一括りにして支給する場合もありますが、厳密にはそれぞれ別の費用です。

出張経費

出張では、出張先で必要となると予想される雑費をまとめた経費である出張日当が支給されます。詳細は以下の通りです。

  • あらかじめ社内で決定されている固定額の支給
  • 使用目的は出張中の食費や飲み物、歯ブラシなどの雑費
  • 領収書は不要(実費精算不要)

出張時の食事や飲み物の購入は業務上、必要な経費であり、かつ高額ではないため、まとめて出張経費として申請することがあります。

出張手当

出張手当とは、「出張で発生する必要経費」のうち、実費精算が必要なものを指します。出張経費との違いは、出張手当は帰社後に領収書による精算が必要だという点です。

以下が出張手当に含まれるものです。

  • 宿泊費
  • 交通費
  • 駐車場代
  • 施設利用費(会議室のレンタル費用など)

上記の経費は、支払い時に領収書を受け取り、帰社した後に領収書を基に精算を行います。会社では出張の予算を組んでいるため、相場よりも高い宿泊費や無駄と判断される交通費は承認ができない可能性があるかもしれません。社会的な相場と社内の状態をよく把握したえうえで対応するのが適切です。

出張には出張旅費規程の作成が必要

企業が出張の際の旅費を支給する場合には、「出張旅費規程」を作成します。出張旅費規程とは、労働条件や服務規律を定めた就業規則の一つです。

出張旅費規程を読めば、出張の目的や出張の申請方法、経費の精算方法などがわかります。

出張旅費規程を定めるメリット

出張旅費規程を定めるメリットは多くありますが、特に以下の5点は実務的にも必要なメリットです。

  • 経費支給と利用の公平性や透明性
  • 予算管理の効率化
  • 業務の円滑な実行
  • 社員の意識向上
  • コンプライアンス順守の確保

社内の費用について行き違いが起こる理由の多くは、暗黙の了解や慣例、習慣と言われています。出張はまとまった費用が必要です。担当者は出張の目的や公平性、正しいルールを明記し、周知しましょう。

出張旅費規程で定める内容

出張旅費規程で定める主な内容は以下の通りです。

  • 出張旅費規程の目的
  • 出張旅費規程の適用範囲
  • 出張の定義
  • 出張の申請と承認について
  • 交通費の規程
  • 宿泊費の規程
  • 出張日当について
  • 食事代について
  • 雑費について
  • 出張経費の精算方法
  • 出張経費精算の提出期限
  • 例外対応
  • 規程の見直しについて

これらは、あくまでも出張旅費規程に記載される内容の一例です。企業によっては、さらに細かい項目が設定されているもの、反対に少ない項目で設定されているものもあります。

出張旅費規程の無料テンプレート

出張旅費規程の無料テンプレート

出張旅費規程が会社にない場合は、従業員が適宜作成できます。こちらは、決まった形式はなく、項目も自社に必要なものだけを抜粋しても問題ありません。

無料のテンプレートもありますので、ダウンロードし、自社の規程に合ったものを作成しましょう。

出張時の労働時間

通常の出勤に比べて、出張時はいつからいつまでが労働時間なのかがわかりにくいものです。特に移動時間や残業については疑問を抱く方もいることでしょう。

以下では、出張時の移動時間と出張時の残業が労働時間としてカウントされるか否かについて解説します。

出張時の移動時間

出張時の移動時間の扱いについては、労働基準法上の解釈と実務上の取り扱いに注意が必要です。労働基準法上、使用者の指揮命令下にある時間は労働時間とみなされます。したがって、出張の移動時間中に業務を行っている場合や、使用者の指示により特定の交通手段や経路での移動が義務付けられている場合は、原則として労働時間としてカウントされるでしょう。

ただし、単に移動するだけの時間で、労働者に自由な利用が認められている場合は、労働時間に該当しないと考えられます。

出張時の残業

出張先であっても、残業をする場合があります。この場合の扱いも、使用者の指揮命令下において労務が提供されているかがポイントです。

出張先の人やクライアントとの会食を伴う打ち合わせについては、その内容や状況によって労働時間としての扱いが異なる可能性があるでしょう。業務上必要な打ち合わせであれば、会食を伴っていても労働時間としてカウントされる場合があります。一方、単なる親睦を目的とした会食の場合は、労働時間外として扱われることになるでしょう。後でもめることのないように、事前に出張時の残業の認識を社内で確認しておきましょう。

出張申請から経費精算までの流れ-無料テンプレート

実際に出張の必要が発生した場合、具体的に何をしたら良いのか、あまりわかっていない方もいることでしょう。

そこで、出張の申請から出張後の経費精算までに必要な5つの流れを簡単に紹介します。

①出張計画書の作成と提出・承認

はじめに、出張計画書を作成して上司へ提出し承認をもらいます。出張計画書には、主に以下の内容を記載しましょう。

  • 目的
  • 場所(滞在先)
  • 出張に必要な日数
  • 日程
  • 出張時の予定経路
  • 出張時の予定経費

②出張

次は、出張計画書に記載した内容に沿った出張を行います。

  • 変更が生じた場合は上司へ連絡を入れ判断を仰ぐ
  • 領収書やレシートは適宜管理しておく

出張先での仕事の都合で延泊が必要になった場合などは、費用面での変更も必要です。

③経費精算所の作成・提出と承認

出張を終えて帰社したら、出張で使った費用を経費清算書に記載(入力)します。

  • 出張先
  • 出張期間
  • 出張で発生した費用の内訳
  • 領収書やレシートの添付

経費の精算方法は企業によって異なります。自社のルールに則った経費精算を行いましょう。

出張した日から日数を経過してしまうと、経理の締めをまたぐことになったり、詳細部分を思い出せなくなったりするので、出張後、速やかに経費精算書の対応をしましょう。

④経理への提出と承認

作成した経費精算書に上司の承認をもらったら、次は経理部への提出と承認が必要です。経理部の提出方法や承認ルートは企業によって異なりますが、上司の承認があっても経理部より指摘を受ける場合があります。

以下のケースが主な指摘事項です。

  • 交通費が予定よりも高い
  • 食費が複数人分で高額
  • 日にちや時間が明確でない
  • 手書きの場合、雑で読みにくい

お互いの手間がかかり、かつ処理に時間を要するので、指摘が入らないよう気をつけましょう。予算よりも多くの費用が発生している場合は理由を記載し、電話やチャットアプリなどを参考にできるだけ正確な日時を記載するなどの配慮が必要です。

また、必要という範囲を超える部分は、所得税法上、給与として課税されるため注意が必要です。

⑤経費精算の支払い処理

経理部の承認が下りたら、経費の精算を行います。先払いで出張経費を受け取っていた場合は釣銭の返却、立替をした場合は領収書を基にした支払いを受けます。

経費支払の方法は、その場で現金支払だけでなく銀行口座への振込、給与との合算支払などもあるので事前に確認しておきましょう。

出張費の仕訳方法

企業の経理では、社内で使われるすべての費用を簿記ルールに基づいて記録します。この簿記ルールでの記録で欠かせないのが、借方(かりかた)と貸方(かしかた)という項目です。

借方:支払項目(旅費交通費など)/貸方:現金

 
というふうに、何のための費用をどのようにして支払ったか、ということがわかるように記載するのが簿記ルールです。

一方、会社の出張では後に精算する経費を先払いで渡したり、領収書と引き換えに後払いで精算したりすることもあります。また、従業員による立替が発生していても領収書がない場合などがあります。

仕分の詳細は、以下の通りです。

先払い

まず「先払い」の借方/貸方は「仮払金20,000円/現金20,000円」などとなります。出張に必要な経費(20,000円)を前もって現金で渡した状態です。

次に、出張を終えた従業員は先払いされた経費から、実際の費用を精算します。

その場合の借方/貸方は「旅費交通費20,000円/仮払金20,000円」などです。つまり、先払いで出張に必要な費用を受け取った場合は、仕訳を2回行うことになります。

後払い

出張に必要な費用を従業員が一度、立替処理を行い、後で精算を行う場合の借方/貸方は「旅費交通費20,000円/仮払金20,000円」となります。

さらにその後、経理では「現金20,000円/仮払金20,000円」と、2回目の仕訳を行って終了です。ただし、後払いの場合は「支払の証拠」となるレシートや領収書が必要です。

  • 領収書:支払った金額がまとめて記載される
  • レシート:購入した品目とそれぞれの金額が記載される

「経費精算=領収書」と思い込んでしまいがちですが、使用目的や品目によっては、領収書ではなくレシートが必要になります。例えば、出張先に差し入れでお菓子やジュースを購入した場合などです。状況に応じた支払いの証拠がわかるようにしておきましょう。

領収書がない場合の精算方法

「経費となるはずの支払をしたのに、領収書(またはレシート)を失くしてしまった」という経験がある方もいることでしょう。

ただ、領収書がないからといって絶対に精算ができないとも限りません。支払内容や、金額などにもよりますが、以下の書類や記録を基に会社に交渉することはできます。

  • 電子マネーやクレジットカードの明細
  • 請求書
  • 振込明細書(※振込で支払をした場合)
  • 出金伝票(※ただし上司の承認が必要)
  • その他、支払をしたことがわかる証拠

最適なのは、領収書やレシートをきちんと管理することですが、どうしても証拠が見つからない場合は、上司や経理担当に相談しましょう。

監修者の編集後記 -出張について-

「出張」は少し前の時代に比べるとずいぶん減っているようです。コロナ禍に利用者が激増したWeb会議などで完結する仕事も多くなったことが要因だと思われます。

仕事で不慣れな土地に出向くのは少し気が重いという方もいるかもしれませんが、いつもとは異なる場所での仕事は良い刺激にもなります。

出張の目的を果たすことはもちろんですが、そこでしか見られない景色や人とのコミュニケーションを自分へのお土産として持ち帰ることができるのは、出張の大きなメリットになるかもしれません。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。