ポテンシャルとは?意味や使い方、社内のポテンシャル向上が急務の理由

この記事のポイント

  • ポテンシャルとは、本人が気づいていない潜在的に持っている能力。将来的に発揮できる可能性のある力です。
  • ポテンシャルが高い人は、物事をポジティブに捉え、向上心があるのが特徴です。
  • ポテンシャルを高める方法として、目標を明確にして自発的に行動することです。前向きに努力する姿は周りにも良い影響を与えるでしょう。

ポテンシャルとは?

ポテンシャル(potential)とは、人が潜在的に持っている能力や将来の可能性を指す言葉です。また、未だに本人自身が意識的に力を発揮できていない能力もポテンシャルだといえます。語源は、ラテン語で力や可能性を意味する「potent」です。

現在は能力を出せていなくても、将来的に発揮できる可能性のある力であるため、多くの企業の人事部が採用基準の1つとして取り入れています。

ビジネス用語の場合、ポテンシャルは「潜在能力」を意味します。そのため、将来が有望である人に使われることが多いです。

ポテンシャルとモチベーションの違い

ポテンシャルとは「潜在能力」のことで、自分自身の秘めている力のことであり、与えられた条件や機会によって発揮するものです。

一方、モチベーションは目標を達成しようとする意欲やエネルギー、やる気を表します。ビジネス用語では「動機を与える」という意味です。好奇心や成長への欲求や報酬、認識によって促進されます。

ポテンシャルの使い方・例文

主に、ビジネスで利用するポテンシャルという言葉の使い方を4つ紹介します。

  • 社員のポテンシャルを引き出すために、プロジェクトを任せてみる
  • ポテンシャルが低い人は、受け身で自分から考えて動かないという特徴がある
  • アイディアを積極的に受け入れ、ポテンシャルを最大限に引き出せる人だ
  • ポテンシャルを高めるには目標を設定し、努力し続けることが大切だ

ポテンシャルは「高い・低い」「ある・ない」と表現されることが多いです。また、本来持っている能力を引き出せる可能性が高いという意味や、潜在的に持つ力を強めるという意味でも使われます。

ポテンシャルが高い人の特徴

ポテンシャルが高い人の特徴は、主に以下の5つが挙げられます。

  • ポジティブに捉える
  • 向上心がある
  • 自分を客観視できる
  • 人の意見をよく聞く
  • 責任感が強い

それぞれの特長を解説します。

ポジティブに捉える

何事もポジティブに捉える人は、ポテンシャルが高いといわれるケースが多いです。仕事に対してポジティブに考える人は、いつでも前向きに進む姿勢があり、失敗しても挫けず、成果や成功へ向けて諦めない気持ちが強いためです。

またポジティブであれば、失敗しても悪い方向に進まないという特徴もあります。日々起こる出来事をポジティブに受け入れるため、さまざまな機会に触れられ、自身の成長にもつなげられるでしょう。

向上心がある

ポテンシャルが高い人は、向上心があります。向上心とは、高い目標に向かっていく気持ちや努力する姿勢、心のことです。成長意欲もあり、自分自身の能力をさらに高める気持ちも持ち合わせています。

チームや部下をいい方向へ導く力もあるため、周りを引っ張っていける人材である人が多い傾向です。また自信を持っているため、失敗しても次の機会に経験を活かせるでしょう。

自分を客観視できる

客観視できるのもポテンシャルが高い人の特徴です。客観視とは、自分自身を第三者と捉えて見ることです。今の自分を冷静に把握することや、怒りや喜びなどの感情を無くした観点で見られるため自分自身の改善にもつなげられます。

自分の強み、弱みを客観視することで、視野を広く持てるため、間違ってしまったときに軌道修正ができるでしょう。

人の意見をよく聞く

人の意見をよく聞く人は、自分の成長にもつなげられる点が特長です。人の意見は自分とは同じでないことが多いため「このような意見もある」と受け入れ、自分では思いつかないアイディアを生み出しやすくなるでしょう。

素直に意見を受け入れることで、自分が間違ったときにすぐ改善できることや、効率よく物事を進められるため、ポテンシャルが高いと評価されやすくなります。

責任感が強い

責任感が強い人もポテンシャルが高いといわれます。トラブルが起こっても、自分の役割や任務を全うしようとする気持ちが強い傾向にあります。改善しようと諦めずに努力し、前向きに行動できる人は頼られる存在となり得るでしょう。

このような姿勢は、部下など周囲の人から厚い信頼を得られるため、会社にとっても良い影響を与える人材です。

ポテンシャルを高める方法

ポテンシャルを高める方法は、おもに4つ挙げられます。自分自身でも取り組めることがあるため、実践して自分を変えるきっかけにしてください。

  • 目標を明確にする
  • 社員の適性を考慮した配置にする
  • 自発的に行動する
  • 新しいことにチャレンジする

以下で各方法について解説します。

目標を明確にする

目標を明確にすることにより、やるべきことや進むべきことが見えてきます。具体的であればあるほど行動に移しやすくなり、目標達成に向けて自分で考える力や能力も高まるでしょう。

人に言われるがまま、指示されるまま動くのではなく、自分で決めて行動できるため成長にもつながります。目標を持つことで、努力しようと気持ちを高められるため、ポテンシャルが高くなっていくでしょう。

社員の適性を考慮した配置にする

上司や経営者が、社員の能力や適性を考慮した配置にすることで、ポテンシャルを高めるきっかけにもなります。

自分の秘めている能力が開花するきっかけにつながり、社員のモチベーションアップにもつながるでしょう。また、別の部署やプロジェクトを任せることで発揮できることもあるため、社員の適性を見極めて、社員の能力を存分に発揮できるような環境を作ることも大事です。

自発的に行動する

他人や上司から言われたことばかりをやる人は、向上心がなくポテンシャルは低いと判断される可能性があります。受け身の人はどうしても成長が遅くなりがちです。自発的に行動することにより、自分の能力を磨き、ポテンシャルが高まるきっかけにもなるでしょう。

さらに、自発的に行動することで周りの環境も変えられることもあり、自信の構築や人間関係、仕事で成長できます。

新しいことにチャレンジする

ポテンシャルが低い人は「自分はこれぐらいしかできない」と決めてしまう傾向にあります。できないことにもチャレンジする精神が大事です。

やったことがないこと、苦手なことに取り組むことで、意外とできたり、能力を発揮できたりすることもあります。失敗を恐れずに、学びの機会として受け入れることで、チャレンジするハードルも下がります。「まずは小さなことからチャレンジする」ことを心がけましょう。

ポテンシャル採用とは?

ポテンシャル採用とは、求職者の潜在能力を評価した採用のことです。即戦力ではなく、個々の持っている能力に期待をし、将来を見越して人を雇い入れます。

今後の成長を見込めるかというのがポイントであり、未経験の業種でも、潜在能力に期待されれば採用されるケースもあります。

新卒採用・中途採用との違い

新卒採用とは、3月末に大学を卒業する人を対象に採用することで、中途採用は年齢は問わない傾向にあり、経験者である人が採用対象です。

ポテンシャル採用は、20~30代の経験が少ない、または未経験の人材を採用する傾向があります。

採用時期は、新卒が年間1~2回の定期採用で、中途採用は不定期です。ポテンシャル採用は、不定期ではありますが、1年を通して実施される場合が多いでしょう。

ポテンシャル採用をするメリット・注意点

能力を発揮させる可能性のある人材を獲得できることが、ポテンシャル採用を行うメリットです。同業種からの転職者ほどの経験はないものの、一度社会に出ているため、自分のやりたかったことを明確化して、行動した結果の現れだと受け取れるためです。そのため、行動力がある人だと捉えられるでしょう。

また社会人経験もあるため、仕事のやり方やビジネスマナーなど基本的な土台が身に付いていることもメリットです。初期教育をしなくてよいため、すぐ仕事を学ばせられます。早めに仕事に慣れるため、環境への適応力が高いと捉えられます。

ただし未経験の採用のため、業務の習得に時間がかかる点には注意は必要です。1人前にするための教育コストがかかることも予想されるため、長期的に成長できるプログラムを準備する必要があります。

働く人のポテンシャル向上が急務の理由

働く人のポテンシャル向上が急務の理由として、人口減少による担い手不足や人生100年時代が挙げられます。人口は減少しますが、高齢者は年々増えていきます。そのため、高齢者でも働きやすい環境を作ることにより、担い手不足に歯止めをかけられるでしょう。

また、近年は人生100年時代ともいわれており、人々のライフプランも年々変わっています。生きていくためには働かなければならず、生涯現役(エイジフリー)で活躍できる社会へと変えることが重要です。

このように、女性や高齢者の就業率を上げることや、1人ひとりの能力を開発させるなど、働く環境を改善する取り組みが必要です。

参考:厚生労働省 令和時代の社会保と働き方のあり方|厚生労働白書

ポテンシャルを高める企業の取り組み事例

ポテンシャルを高める企業の取り組みとして、2社紹介します。

  1. 働きやすい環境の創出が各々のポテンシャルを最大限に引き出す|駿河重機建設株式会社
  2. 社員の健康は企業のポテンシャルを向上させる|株式会社タニタ

企業が積極的にポテンシャルを高める取り組みをすることで、社員も向上心を持って、仕事ができるようになるでしょう。また、働きやすい環境を作り出せると、人材不足や長期雇用にもつながります。

働きやすい環境の創出が各々のポテンシャルを最大限に引き出す|駿河重機建設株式会社

駿河重機建設株式会社では、働き方改革として、3つのことに取り組んでいます。

  1. 就業規則の見直し
  2. ICT建機の導入による業務の効率化
  3. 資格取得の支援と柔軟な働き方

就業規則の見直しとして、時間単位の年休制度導入や充実した休暇制度を導入しました。その結果、時間外労働が0になり、年次有給休暇の取得率も100%近くにまで改善されたそうです。

また、ICT建機と呼ばれる情報通信技術を取り入れた重機を導入したことにより、人材不足をカバーするだけでなく、作業時間の短縮と安全性の確保もできています。

さらに、資格取得を資金面でもサポートしたり、女性が生き生きと働ける環境を整えたりするなど、働きやすい環境の創造がポテンシャルを引き出すための効果も期待できそうです。

参考:厚生労働省 働きやすい環境の創出が各々のポテンシャルを最大限に引き出す|駿河重機建設株式会社

社員の健康は企業のポテンシャルを向上させる|株式会社タニタ

株式会社タニタでは、企業のポテンシャルを向上させるために以下の取り組みを行っています。

  1. 社員の健康状態を見える化
  2. 「歩数イベント」を開催し、社員表彰も行うことで、健康づくりへのモチベーション向上
  3. 社員食堂でヘルシーなメニューを提供

歩数計や血圧計など数値をデータ化した健康管理で、社員の健康状態を見える化した結果、健康的な社員が増えていきました。

社内イベントで表彰を行い、社員のモチベーション向上や、社員食堂でヘルシーなメニューを提供して、社員を健康にしてポテンシャル向上を目指して日々取り組んでいます。

参考:厚生労働省 第3章 健康寿命の延伸に向けた最近の取組み

もっと詳しく!ポテンシャルに関するおすすめ論文と要約

ポテンシャルに関する論文や情報を要約して紹介します。

すべての働く人に必要な能力に関する考察―学校と企業とが共用する「基礎力」の提唱―

「すべての働く人に必要な能力に関する考察」では、どの業種・職種でも共通して必要な「基礎力」について論じています。

学校と社会の間には、働く上で必要な能力に関する共通言語がなく、学校で学んだことが社会でどう活用されるかが不明確であると指摘しています。論文では、業種や職種を超えて必要とされる基礎力を提唱し、これを5つの基礎力(対人基礎力、対自己基礎力、対課題基礎力、処理力、思考力)に分類しています。

また、米国政府の取り組みを例に挙げ、基礎力の重要性とその教育方法についても言及しています。論文は、学校教育と社会のニーズの間のギャップを埋め、効果的なキャリア教育を提案することを目的としています。

出典:リクルートワークス研究所「すべての働く人に必要な能力に関する考察」

能力観の形成過程について :調査のための分岐視点

この論文は、中学生と高校生の学業成績と生まれつきの能力の関係、および能力についての観念(能力観)の形成過程を探求するものです。著者、河合淳子は、能力観が進路意識に深く関わっていると述べ、この観念がどのように形成されるかに焦点を当てています。欧米の能力に関する社会心理学的研究と日本社会の能力平等観に基づく努力主義的意識が比較されています。

論文は、学校における能力観の形成過程を解明するための視点を提供し、特に日本社会における能力平等観が強い背景とその影響を考察しています。この観点は、能力に関する社会的構成説という考え方に基づいています。これは、能力や能力観が社会的に構成されるという理論です。

河合は、学校の組織構造が生徒の能力観形成に深く関与していると指摘し、学校の組織構造の違いが能力観にどのように影響するかを分析しています。また、性差が能力観の形成過程に影響を与えることも明らかにしています。さらに、日本の選抜システムと進路指導体制が努力信仰の維持に関与している可能性についても議論しています。

この研究は、日本の学校教育における能力観の社会的構築と、それが生徒の進路選択や自己評価にどのように影響を与えるかを理解するための重要な視点を提供しています。また、性差と教育システムの構造的要因が能力観の形成に与える影響についてのさらなる研究を促しています。

出典:京都大学「能力観の形成過程について :調査のための分岐視点」

監修者の編集後記 -ポテンシャルについて-

ポテンシャルといわれる、潜在能力や本人が自覚していない能力を発揮するには、仕事をする上で重要です。ポテンシャルを高めるためには、新しいことへのチャレンジや、目標を明確にして行動する必要があります。

人生100年時代で人口減少にある日本は、エイジフリーや社員の継続的な雇用を視野に入れる必要があり、ポテンシャルを高めることが重要だといえるでしょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。