ジョハリの窓とは?やり方や活用例、ひとりで診断を行う方法を解説

この記事のポイント

  • ジョハリの窓は、自己と他者の両面の視点から自分を理解するためのツールです。自分の性格を4つの窓に分類することで分析を行います。
  • 自分と相手の認識のズレを認識したり、自分の内面をオープンにしたりすることで、組織のコミュニケーションが活発になります。
  • 複数人のグループで行う方法が一般的ですが、自己分析ツールを用いてひとりで行うことも可能です。

ジョハリの窓とは?

ジョハリの窓とは?やり方や活用例、ひとりで診断を行う方法を解説

ジョハリの窓は、自己理解を促進するための心理学モデルの1つです。自己と他者の視点から理解できるため、円滑なコミュニケーション方法を考える上で役立ちます。本項では、ジョハリの窓が生まれた背景や意味、目的について詳しく解説します。

ジョハリの窓が生まれた背景

ジョハリの窓は、サンフランシスコ州立大学のジョセフ・ルフトとハリントン・インガムが1955年に提唱したモデルです。2人の名前を組み合わせて、ジョハリの窓と呼ばれています。

対人関係では、自分の内面や特性の全てが相手に伝わるわけではなく、気づかれない側面が存在します。また、自覚していない側面を相手から指摘されて気づくこともあるでしょう。

「自分から見た自分」「他者から見た自分」としての情報を整理し、自己理解を深めるために作られたモデルがジョハリの窓です。

ジョハリの4つの窓

ジョハリの窓では、人の性格や特性、理解している側面を以下の4つの領域に分類します。

  • 開放の窓
  • 盲点の窓
  • 秘密の窓
  • 未知の窓

ジョハリの4つの窓

【開放の窓】

自分も他者も知っている自分自身の領域です。例えば、名前や性別、年齢などのわかりやすいプロフィールから、考え方や趣味などの価値観が関係する特徴も含みます。個人の開放度によって、開放の窓に含まれる特徴は異なります。

【盲点の窓】

他者は知っているが自分は気づいていない領域です。他者から見たときの自分であり、客観的な視点で自己理解するために役立ちます。例えば、口癖、話し方などの無意識的な行動や、意外な長所・短所が挙げられます。他者からのフィードバックで気づく領域です。

【秘密の窓】

自分は知っているが他者は知らない領域で、オープンにせず秘密にしている側面を指します。例えば、人に知られたくないコンプレックスや悩み、失敗体験などネガティブな側面が代表的です。

【未知の窓】

まだ誰も気づいていない未知の領域です。例えば、自分でも自覚していない長所や能力などが挙げられます。誰も気づいていない側面を認識することは、成長の機会を得るために効果的です。

ジョハリの窓でわかること

ジョハリの窓を用いて自己分析することで、他者から自分がどのように捉えられているかを認識できます。自分の行動と他者から見た姿のズレを認識することで、正しい自己理解につながるでしょう。

例えば、「口下手でスピーディーに話せない」と思っていても、周囲の評価を聞くと「丁寧でわかりやすい」と言われるかもしれません。周囲のフィードバックをもらうことで、自覚していなかった側面を意識できるようになるでしょう。

ジョハリの窓が使われる場面、活用例

ジョハリの窓は、研修として社員の能力発見や、組織のコミュニケーションを促すチームビルディングとして用いると効果的です。2つの活用場面について解説します。

社員研修:能力発見に役立つ

社員研修やセミナーでグループワークとして取り入れると、社員の能力発見につながります。自己の視点だけでなく、他者からのフィードバックを含めて分析することで、自分の強みを深く理解できます。

ただ、自分の内面をオープンにしたり、他者から指摘を受けたりすることにストレスを感じる人もいるかもしれません。実施上のデメリットも説明した上で行うとよいでしょう。

チームビルディング:対人コミュニケーションを円滑にする

チームのメンバー間の信頼関係を構築するチームビルディングの方法としても、ジョハリの窓は有効です。ジョハリの窓を行うことで、自己開示を積極的に行い、他者からのフィードバックを受け止めるコミュニケーションを促進します。

価値観や考え方など、業務上のやりとりで表面化しない側面を知れるため、メンバーの深い理解につながります。また、フィードバックをしやすい関係を築けると、思ったことを気軽に話せるので、問題が大きくならないうちにミスを防げるでしょう。

ジョハリの窓を活用するメリット

社員の能力発見だけでなく、組織形成の面にも活用できるジョハリの窓ですが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

自己理解が深まり他人との認識のズレがわかる

フィードバックしてもらうことを通して他人から見た姿を理解するため、より深く自分を知ることが可能です。他人からフィードバックされて気づく側面もあれば、改めて大切さを認識することもあるでしょう。

現状を正しく知ることで、自分の強みと弱みに気づき、組織の中でどのような役割を果たすべきかが明確になります。

対人関係がスムーズになる

ジョハリの窓により開放の窓を広げることで、対人関係でのやりとりがスムーズになります。とくに、自分の意図が相手にどのように伝わっているのかを知ることが可能です。

例えば、「上司として常に冷静な態度で接するべきだ」という価値観をもつリーダーがいたとします。価値観に沿って真摯に部下に接していても、部下からは「冷たい態度」と捉えられてしまうかもしれません。

自分では正しいと思って接している態度でも、相手にはその意図が伝わっていないことがあります。自分の意図がどこまで伝わっているかを認識し、接し方を修正することで、コミュニケーションの質を高められます。

信頼関係が構築できる

ジョハリの窓を活用することで、メンバーの知らない一面に気づけます。秘密の窓にある特徴をオープンにしていくことで、チームのメンバーや同僚のことを深く理解できるようになります。

業務上のやりとりだけではわからなかった価値観や趣向を知れるため、メンバー同士の信頼関係を構築することに役立つでしょう。

ジョハリの窓を活用するデメリット

自己理解を深めるツールとして有効なジョハリの窓ですが、活用するにあたってデメリットもあります。活用する際に注意すべきデメリットについて解説します。

相手によってはストレスを感じる場合がある

ジョハリの窓は、オープンにしていない自分の側面を他者に開示していくために役立ちます。ただ、どこまでをオープンにするかは相手との関係性によります。あまり知らない相手や上司などには、内面をオープンにするのにストレスを感じるかもしれません。

そのため、精神的な負担がかからないよう、実施の際には注意する必要があります。例えば、信頼できる人と取り組むことや、トラウマやコンプレックスを無理に開示しないようにする配慮が重要です。

他者からのフィードバックに傷つく恐れがある

他者から見た姿をフィードバックしてもらうことで、なかにはショックを受けてしまう人もいるでしょう。ジョハリの窓に取り組む際には、否定的なフィードバックは控えるよう、ルールを設定しておくことが大切です。

ジョハリの窓を使った自己分析のやり方

社員研修やセミナーで活用できるジョハリの窓ですが、具体的にはどのようにして自己分析を行うのでしょうか。グループで行う場合のやり方について解説します。

ステップ①:参加者を集める

まず初めに、ジョハリの窓を用いて自分分析を行うメンバーを集めましょう。信頼できる同僚やチームメンバーなどが適しています。初対面であまりよく知らない相手は避ける方がよいでしょう。

ステップ②:性格を表す言葉を用意する

ジョハリの窓 性格を表す言葉を用意する

自己分析しやすいように、性格や特性を表す言葉を選択肢として複数用意しましょう。例えば、以下のような「思いやりがある」「頼りがいがある」などの具体的な言葉です。性格を表す言葉は非常に膨大な数があるため、あらかじめ決めておくと選びやすいでしょう。

  • 思いやりがある
  • 知的だ
  • 頼りがいがある
  • 自信がある
  • 論理的
  • 愛情深い
  • 観察力が鋭い
  • 飾らない
  • 気が利く
  • エネルギッシュ
  • 我慢強い
  • 観察力が鋭い
  • 発想力がある
  • 優しい

性格を表す言葉を書いた用紙は、自分と他のメンバーの両方に用意しましょう。次に、上記の図のように、自分が当てはまると思う項目に○をつけます。そして、他のメンバーにも同じように○をつけてもらい、回収します。

ステップ③:4つの領域に分類する

ジョハリの窓 4つの領域に分類する

自分や他のメンバーが○をつけた項目を以下のように4つの窓に分類していきます。別の用紙に格子状に4つの枠を作り、記入していくとよいでしょう。

  • 開放の窓:自分○/相手○
  • 盲点の窓:自分×/相手○
  • 秘密の窓:自分○/相手×
  • 未知の窓:自分×/相手×

分類できたら、グループ内で共有します。盲点の窓に分類された特徴について、他のメンバーから詳しい話を聞くと、自己理解がさらに深まります。

「ジョハリの窓」診断をひとりで行うには?

ジョハリの窓は、他者から見た自分の特徴をフィードバックしてもらうことで自己理解を深めます。そのため、ひとりだけではなく、複数人のグループで行われるのが一般的です。

しかし、グループでの実施は時間や集める手間がかかり、参加するメンバーの関係や性格によっては深い内容まで明らかにならない場合があります。また、性格を表す言葉はあらかじめ用意された中から選んで実施するため、偏りが生じる可能性もあるでしょう。

そのため、分析をひとりで行うことも有効です。ひとりで行うときは、性格特性を知る適性検査や自己分析などの診断ツールが役立ちます。診断ツールの結果を「盲点の窓」の特徴としてジョハリの窓に整理してみると、主観と客観の視点から自己理解が深まります。

もっと詳しく!ジョハリの窓に関するおすすめ論文と要約

ジョハリの窓に関する最新の研究をもとにした情報を以下にまとめます。

アルブケルケら (2022) は、ジョハリの窓を使用して従業員の視点からマネージャーのプロファイルを分析し、リーダーと従業員の間のコミュニケーションの明確化を促進することで、組織の活動のパフォーマンスを向上させることができることを示唆しています (Albuquerque et al., 2022)。

ジョハリの窓は自己認識トレーニングとしても有効であり、例えば、シドアルジョのアイシヤ孤児院でのティーンエイジャーの自己信頼を高めることに成功しています。このトレーニングは、ティーンエイジャーの自己信頼に有意な向上をもたらしました (Warsito & Widyastuti, 2022)。

ジョハリの窓モデルは、教師や学生など、さまざまな個人やグループに対する自己認識やコミュニケーションスキルの向上に役立つことが、多数の研究で示されています。これは、個人の潜在的な能力や改善の余地を識別し、それらを開発する手助けとなります。

これらの研究は、ジョハリの窓が個人の自己認識、相互作用、およびコミュニケーションのクオリティを高めるための強力なツールであることを示しています。

監修者の編集後記 -ジョハリの窓について-

ジョハリの窓は、自己と他者の両面の視点から自己分析をするための方法論です。気づいていない短所や長所を知り、成長の可能性を引き出すために効果的な方法といえます。そして、個人の潜在能力を発揮し、企業全体の成長を促すことにもつながるでしょう。

また、組織のコミュニケーションを活性化させる土壌づくりとしても役立ちます。本記事で紹介した方法をもとに、個人やチームの力を最大限に高められるよう、取り組んでいきましょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。