契約社員とは?正社員との違いやメリット・デメリットを解説
この記事のポイント
- 契約社員とは、企業と有期雇用契約を締結するフルタイムの労働者を指しており、企業によっては契約社員から正社員への登用制度を設けている場合もあります。
- 契約社員と正社員は、業務の内容や給与形態、福利厚生などの待遇に違いが存在しており、一般的に正社員の方が待遇面で充実している傾向があります。
- 契約社員には転勤がないなどのメリットがある一方で、デメリットも存在します。
目次
契約社員とは?
契約社員とは、一般的に企業と有期雇用契約を締結したフルタイムの労働者を指しています。契約社員に法律上の定義はないため、どのような契約内容の従業員を契約社員とするかも企業の自由です。また、契約社員をどのように呼称するかも企業によって様々です。契約社員を指して、準社員や臨時社員、期間社員などと呼ぶ場合もあります。
契約社員とパートとの違い
契約社員とパート従業員を同様に扱う企業も存在するでしょう。両者は、期間を限った雇用契約を締結する非正規雇用であるといった共通点も存在します。また、契約社員もパート従業員も時給制で働くことが多い雇用形態です。しかし、一般的に契約社員とパート従業員は区別されており、両者には違いが存在します。
契約社員は、フルタイムで働くことが多い一方で、パート従業員はその名の通り、パートタイムで働きます。つまり、両者は労働時間において異なっているわけです。また、契約社員は正社員に準じた業務内容であることも多くなっています。人件費削減の観点から正社員を削減し、代替として契約社員を雇用している企業も多いでしょう。しかし、パート従業員は正社員などの正規雇用従業員の指示を受けて、定型的な業務に従事していることが一般的です。両者は担っている業務内容においても異なっているといえるでしょう。
契約社員と正社員の違いは?
契約社員とパート従業員に違いがあるように、契約社員と正社員にも違いが存在します。項目ごとに両者に違いを見ていきましょう。
契約期間
正社員をどのように定義づけるかは企業の自由です。しかし、一般的には期間の定めない無期雇用契約の従業員を指して、正社員と定義している企業がほとんどです。一方の契約社員は、原則として3年以内の有期雇用契約で働く場合が多いため、両者は契約期間において明確に異なっています。高度な専門的知識を有する労働者を、当該知識が必要となる業務に就かせる場合であれば、契約期間を5年とすることも可能です。しかし、この場合であっても有期雇用であることに変わりはありません。
業務内容
有期雇用である契約社員は、契約で定められた範囲内の業務を行い、責任を負います。そのため、業務内容や責任の範囲は限定的であり、決まった勤務地や部署で決まった職務を担当していることが通常です。しかし、無期雇用である正社員は、組織の基幹部分を担う将来の幹部となることが期待されています。そのため、正社員は様々な職務を経験する必要があり、勤務地や所属部署が変更されることも珍しくありません。契約社員が正社員と同様の業務を行う場合もありますが、あくまでも限定された範囲内です。
給与
契約社員の給与形態については、企業が自由に設定可能です。そのため、月給制や週給制、日給制で働いている場合もあるでしょう。パート従業員やアルバイトと同様に、時給制を採用している企業も多くなっています。一方の正社員は、ほとんどの企業において月給制が採用されており、それ以外の給与形態は非常に珍しくなっています。両者の給与形態は同じ場合もありますが、異なっている場合が多いでしょう。
昇給
正社員には、人事考課に基づく査定による昇給の機会が設けられていることも珍しくありません。能力や実績によって昇給できるのであれば、仕事へのモチベーションも高くなるでしょう。しかし、契約社員は契約に基づいた給与額が支給されるため、基本的に昇給はありません。期間満了による契約更新時に実績や能力を評価され、給与が高くなる場合もありますが、正社員の昇給制度とは異なったものといえるでしょう。
ボーナス
ボーナスの支給は、法律上の義務ではありません。そのため、雇用形態を問わずボーナスの支給は企業の任意となっています。正社員と契約社員双方にボーナスを支給する場合もあれば、両者ともにボーナスを支給しない場合もあるでしょう。
正社員にのみボーナスを支給する企業は珍しくありませんが、契約社員にのみボーナスを支給する企業はほぼ見られません。また、契約社員にボーナスを支給する場合であっても、正社員より低い水準としている企業も存在します。一般的に両者はボーナスの支給においても差があるといえます。
退職金
ボーナスと同様に退職金の支給も企業の自由です。そのため、正社員や契約社員に退職金が支給されるかは、就業規則や個別の契約内容によって異なります。しかし、一般的に退職金は一定年数以上の在籍を要件としている場合が多く、有期雇用の契約社員が要件を満たすことは難しいでしょう。そのため、契約社員は正社員に比べて退職金が支給されない場合が多いといえます。
福利厚生
健康保険や厚生年金保険といった法で義務づけられた法定福利厚生は、正社員や契約社員、パート従業員などの雇用形態による違いはありません。要件を満たしていれば、雇用形態を問わず加入することになります。一方で、企業が法定福利厚生とは別に設ける法定外福利厚生においては、正社員と契約社員で異なった扱いがされる場合もあります。
異なった取扱いをする場合であっても、その格差は不合理なものであってはなりません。正社員と契約社員の双方が自動車で通勤し、その距離などにも違いがないような場合であれば、支給する通勤手当にも差を設けることは許されません。通勤手当は通勤に必要な費用を補助する趣旨で支給される手当であり、無期雇用か有期雇用かによって通勤費用が異なるものではないからです。
契約社員になるメリット
契約社員は、契約内容に従って業務を行います。契約によって勤務地や職務内容も固定されているため、通常部署の変更はなく、転勤など転居を伴う異動も行われません。この点は、人事異動の対象となり、転勤も命じられる正社員と異なっています。育児や介護を行っている場合には、転勤に応じることが難しくなっています。そのような人にとって、転勤のない契約社員はメリットのある働き方といえるでしょう。
契約社員は、職務内容が限定されており、責任も正社員に比べて重くありません。そのため、突発的な業務が発生する可能性は低く、残業や休日出勤も正社員に比べて少なくなっています。つまり、契約社員は自由な時間が作りやすくなっているということです。このことは、ワークライフバランスを重視する方にとってメリットとなります。
また、契約期間が限られていることも、必要な期間だけ働くことが可能と考えれば、メリットといえるかもしれません。契約社員は、正社員に比べて時間の融通が利きやすく、柔軟な働き方が可能な雇用形態といえるでしょう。
契約社員になるデメリット
契約社員は、必要な期間だけ働くことが可能です。この点はメリットにもなり得ますが、雇用が不安定という意味ではデメリットともなります。仮に企業業績が悪化しても、無期雇用の正社員を解雇することは容易ではありません。しかし、有期雇用の契約社員は業績が悪化すれば、契約が更新されない可能性も高くなっています。雇用が不安定なことは、契約社員を含めた非正規雇用共通のデメリットです。
雇用が不安定な契約社員は、正社員に比べて社会的信用の度合いが低い傾向が見られます。社会的信用は、ローンの審査などにも影響するため、大きなデメリットといえるでしょう。また、ボーナスが支給されない場合も多く、金銭的な意味でもデメリットのある働き方となります。
契約社員に向いている人
契約社員は、正社員に比べて裁量の幅が狭く、責任も重くありません。そのため、決められた仕事のみをこなしたいという人には、契約社員が向いています。また、残業も少ないためプライベートの時間を確保したい人も契約社員という働き方が向いているといえるでしょう。残業だけでなく、休日出勤も少ないため、子育てや介護との両立も図りやすくなっています。
契約社員は特定の業務のみを担当することが通常です。異動などもないため、特定の分野でスキルを高めたい人にも向いているといえるでしょう。その一方で、契約社員は様々な仕事を経験したい人にも向いています。契約期間ごとに別の職場を選ぶことで、様々な業種や職種を経験することも可能だからです。
契約社員から正社員を目指すには?
企業によっては、契約社員やパート従業員などの非正規雇用従業員を対象とした正社員登用制度を設けている場合があります。もし、契約社員から正社員を目指すのであれば、当初から正社員登用制度を設けている企業を選ぶとよいでしょう。ただし、登用制度があっても登用実績のない企業も存在します。登用制度によって正社員を目指す場合には、登用実績のある企業であるか確認することが大切です。
契約期間が通算5年を超える場合には、労働者からの申し出により、無期雇用契約へと転換される、いわゆる無期転換ルールが利用可能です。そのため、通算契約期間で無期雇用を目指すこともできます。ただし、あくまでも無期雇用に転換できるだけであり、転換後の待遇が正社員と同様でない場合もあるため、注意が必要です。
現在契約社員として働いている企業の正社員にこだわらないのであれば、他企業の正社員採用試験を受けてみるのもよいでしょう。契約社員として培ったスキルを活かせる分野であれば、契約社員としての経験は強みにもなります。
もっと詳しく!契約社員に関するおすすめ論文と要約
以下に、契約社員に関するおすすめの論文を紹介します。
- 契約社員の人事管理と基幹労働力化:この論文では、契約社員の人事管理の特徴を整理し、どのように契約社員を活用し、どのように処遇すれば契約社員の基幹労働力化が進むのかについて検討しています。特に、1990年代半ば以降、正社員数が減少する一方で、非正社員数が増加していること、そして契約社員数の増加幅が大きいことを指摘しています。また、契約社員の人事管理と基幹労働力化との関係を明らかにするために、人事管理の基盤システムと賃金管理に注目しています。
- 多様化する雇用形態の人事管理:この論文では、「雇用形態の多様化」が日本企業の人事管理にどのような影響を及ぼしているかを検討しています。特に、正社員と非正社員の間の均衡(著者曰く「between」)と、正社員と非正社員それぞれ内部の雇用区分間の均衡(同「within」)の二つの視点を重視しています。
- 組織における契約の諸相:この論文では、「契約」という概念を哲学や社会学、法学に立ち返って整理し、組織と個人の間の雇用契約に関する議論を捉え直しています。特に、正社員と非正社員の間の均衡処遇と基幹労働力化の関係について深く探求しています。
監修者の編集後記- -契約社員について--
働き方改革により、多様で柔軟な働き方が注目されるようになっています。契約社員は、正社員に比べて、柔軟な働き方が可能となっており、ワークライフバランスを重視するのであれば、メリットのある雇用形態といえるでしょう。しかし、社会的信用が低いなどのデメリットも存在するため、自身の置かれた状況を考慮したうえでの選択が必要です。当記事を参考に、自身のキャリアを考えてみてください。
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