嘱託社員とは?給与や雇用契約、解雇、無期転換ルールについて解説

この記事のポイント

  • 嘱託社員とは、定年後に再雇用される非正規の契約社員や専門的な業務をするために雇用される契約社員のことです。
  • 人事担当者は、「同一労働・同一賃金の原則」や「有期雇用契約者の無期転換ルール」など、嘱託社員の労働に関するルールの理解が必要です。
  • 自社の業務に精通し即戦力として期待できる嘱託社員を効果的に活用しましょう。

嘱託社員とは?

嘱託社員

法律上、嘱託(しょくたく)社員という雇用形態はありませんが、一般的には次のケースなどで雇用される「非正規の契約社員」のことです。

  • 定年後に再雇用される場合
  • 専門的な業務に雇用される場合

それぞれについて解説します。

定年後に再雇用される場合

嘱託社員の多くは、定年後に再雇用された人です。高年齢者雇用安定法では、企業に65歳までの雇用機会の確保を義務付けており、60歳定年の企業の中には、定年後に嘱託社員として継続勤務する制度を設ける企業が多いためです。

(60代前半の継続雇用者の雇用形態)

  • 嘱託・契約社員:企業の57.9%
  • 正社員:41.6%
  • パート・アルバイト:25.1%

参考:高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)|労働政策研究・研修機構

定年前と比べて給与が下がるのが一般的ですが、定年後も仕事を続けたいと希望する従業員にとってはメリットのある制度だといえます。

専門的な業務に雇用される場合

定年後の再雇用以外でも、専門的な業務を任せるために企業が一定期間、嘱託社員として人材を雇用することがあります。経営環境の変化や情報技術の進展に対応するため、専門的な知識やノウハウを持った人材を確保するのが主な目的です。

具体的には、次の職業が該当します。

  • 産業医として勤務する医師
  • 法務部門を担当する弁護士
  • 期間限定の事業を任せる機械や建築、土木の技術者
  • IT関連業務を任せるシステムエンジニアやプログラマー など

嘱託社員とほかの雇用形態との違い

嘱託社員には明確な定義がないため、他の雇用形態と紛らわしい点があります。次の雇用形態との違いを確認しておきましょう。

  • 正社員との違い
  •  契約社員との違い
  •  パート・アルバイトとの違い
  • 業務委託との違い

正社員との違い

正社員と嘱託社員との大きな違いは、雇用期間の有無です。正社員は雇用期間に定めがない「無期雇用労働者(定年はある)」であるのに対し、嘱託社員は雇用期間に定めがある「有期雇用労働者」です。定年後の嘱託社員は、1年ごとに契約更新するのが一般的です。

給与や待遇については、嘱託社員より正社員の方が恵まれているのが一般的です。また、正社員はフルタイム勤務であるのに対し、嘱託社員の中には労働時間を短縮して働く人もいます。

契約社員との違い

嘱託社員は契約社員の一種であり、有期雇用契約をしている嘱託社員もいます。

ただし、嘱託社員は定年後再雇用される人や専門的な業務を任される人に限定されるのに対し、契約社員は未経験者やパート、アルバイトなど幅広い労働者が対象です。

また、労働基準法では契約社員の雇用期間は原則「3年以内」と定められているのに対し、60歳以上の嘱託社員や専門的な知識を有する嘱託社員は「5年以内」まで認められています。

パート・アルバイトとの違い

パートやアルバイトは、短時間勤務の契約社員のことです。定年後再雇用の嘱託社員の中にも短時間勤務で働く人はいますが、給与制度が異なります。

パートやアルバイトの賃金は「時給制」ですが、嘱託社員は「月給制」であるのが一般的です。また、パートやアルバイトは未経験者が多いのに対し、嘱託社員は社内の業務について精通しています。そのため、嘱託社員は経験や知識を活かした仕事に就くことが多いでしょう。

業務委託との違い

業務委託とは、企業が報酬を支払って自社の業務を社外の人や企業に委託する仕組みのことです。業務の委託を受ける人と嘱託社員との大きな違いは、契約形態(または雇用関係の有無)です。

業務委託では、企業と「業務委託契約」を締結し業務に対して報酬を受け取ります。一方、嘱託社員は、企業と「雇用契約」を結び給与を受け取ります。嘱託社員は会社の従業員(被用者)になりますが、業務の委託を受ける人は個人事業主です。

嘱託社員を雇用する企業側のメリット

嘱託社員を雇用する企業側の主なメリットは次の通りです。

  • 即戦力の人材を採用できる
  • ミスマッチを防げる
  • 働き方や労働時間を調整できる
  • 人件費の抑制につながる

即戦力の人材を採用できる

定年退職した嘱託社員は自社の経験者であるため、即戦力として次の仕事を任せられます。

  • 在職中と同じ仕事の全部(または一部)
  • 在職中の知識やノウハウを活かした仕事

また、専門的な知識やノウハウを持った社外の人材を嘱託社員として採用する場合、自社の人材では対応できない(または対応が難しい)分野の仕事を任せられます。

ミスマッチを防げる

定年退職後に嘱託社員として雇用する場合、本人の能力や経験、性格などを把握し適性を考慮して配置できるため、雇用のミスマッチを防げます。また、従業員もどのような仕事をするのかが事前にわかるため、継続して仕事を続けるかどうかを判断しやすいでしょう。

ただし、嘱託採用する前に本人の希望(仕事の内容や勤務時間、勤務場所など)を聞き、労働条件をきちんと話し合うことが必要です。

働き方や労働時間を調整できる

正社員はフルタイムで働くことが前提ですが、嘱託社員は企業や社員の都合に応じて働き方や労働時間を調整しやすいというメリットもあります。

労働時間については、労働日数や労働時間の短縮、フレックス制の適用などが考えられます。勤務場所や仕事の内容、責任を限定して、従業員が働きやすい条件も検討してみましょう。

健康でやりがいを持って仕事をしてもらえれば、正社員に負けない働きも期待できます。

人件費の抑制につながる

嘱託社員は正社員より給与や待遇が劣るのが一般的であるため、企業にとっては人件費を抑制できるというメリットがあります。定年前とあまり変わらない仕事をしていても、再雇用時に定年前の給与がリセットされ、年功に応じた昇給も不要になるためです。

ただし、同一労働・同一賃金の原則には注意が必要です。正社員と同じ内容の仕事をしている場合、責任が限定されている、残業や転勤がない、などの合理的な理由がないと給与に差をつけられません。

嘱託社員の給与や労働条件

定年後再雇用された嘱託社員について、次の労働条件を解説します。

  • 給与・賃金
  • 賞与・ボーナス
  • 社会保険
  • 有給休暇

給与・賃金

嘱託社員の給与や賃金は、正社員より低いのが一般的です。再雇用時に定年前の給与がリセットされるだけでなく、労働時間が減ったり、仕事の負荷や責任が減ったりするためです。ただし、給与や賃金を下げる場合、合理的な理由が必要です。

また、再雇用後の給与が60歳時の給与の75%未満となる場合、雇用保険から「高年齢雇用継続給付」が支給されるので覚えておきましょう。従業員が申請手続きすることも可能ですが、勤務先が申請するのが原則です。

参考:雇用継続給付|ハローワークインターネットサービス

賞与・ボーナス

嘱託社員に賞与やボーナスを支給するかどうかは、法律上の定めはありません。そのため、企業によって支給の有無が異なります。賞与やボーナスを支給する場合でも、正社員と異なるため定年前と比較して少ないのが一般的です。

社会保険

嘱託社員になっても、原則給与から社会保険(厚生年金保険料や健康保険料など)が天引きされます。ただし、労働時間を短縮した嘱託社員など、次の被保険者要件を満たさなければ、社会保険料の給与天引きはありません。

  • 原則:1週間または1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上
  • 短時間労働者:勤務先が一定規模以上ならば賃金が月8.8万円以上など

社会保険の天引きがない場合、公的年金への加入は不要(国民年金の加入は原則60歳まで)ですが、居住地の市区町村で国民健康保険と介護保険の加入手続きが必要です。

有給休暇

有給休暇については、定年後再雇用された場合でも、雇用が継続したものとして取り扱うため注意が必要です。主なポイントは、以下の通りです。

  • 定年前の有給休暇を使える
  • 有給休暇の付与日数を計算するときに使用する勤続期間は定年前の期間を通算する

再雇用時には、雇用契約書や労働条件通知書に記載するとともに従業員にきちんと説明しましょう。

嘱託社員の無期転換ルールとは?

有期雇用契約者には、「無期転換ルール」という法律上の定めが適用されます。「有期雇用契約の期間が5年を超える場合、その契約が終了するまでに企業に申し出れば無期契約に転換できる(労働契約法)」というものです。

ただし、嘱託社員はこのルールの例外となるため、無期転換できません。例外となる労働者は次の通りです。

  • 高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者
  • 定年後引き続き雇用される有期雇用労働者

嘱託社員は、長期雇用ではなく期間を定めて働くことを前提とした雇用形態であるための例外規定です。

嘱託社員との雇用契約や解雇に関する注意点

嘱託社員を雇用するときは、契約社員と同様に次の点に注意しましょう。

  • 1年更新の場合、労働基準法などに定める事項(労働条件や雇用期間など)を明記した労働契約を毎年締結する
  • 同一労働・同一賃金の原則に基づいて給与など労働条件を決定する
  • 「やむを得ない事由がある場合」でなければ、契約満了までに解雇(雇い止め)できない

ただし、一般の契約社員と異なり「65歳までの雇用機会確保義務」により65歳まで雇用契約を継続しなければならない一方、一定要件を満たせば「無期転換ルール」が適用されないことも覚えておきましょう。

もっと詳しく!嘱託社員に関するおすすめ論文と要約

嘱託の法則に関するおすすめの論文を紹介します。

  • 嘱託社員(継続雇用者)の活用方針と人事管理─60歳代前半層の賃金管理」:この論文では、60歳代前半層の非正規社員(再雇用者)を対象にした人事管理について詳しく説明しています。特に、60歳以降も引き続き雇用する高齢社員と現役正社員との人事管理上の継続性をどのように取り、それに合わせて高齢社員用人事管理をどのように整備するかが大きな課題として挙げられています。
  • 日本教育工学会 論文誌 Vol.45 No – J-STAGE」:この論文では、従業員規模3,000名を超える大手素材系製造業であるY社の人事部門について、組織を統括し、組織業績評価の上位20%以上に相当するマネジャーであり、中堅社員を部下にもち、本社・事業所人事部門が部下育成に定評があると判断したマネジャーを選定してもらった結果、42名が抽出されたと述べています。

監修者の編集後記 -嘱託の法則について-

定年後に従業員を嘱託雇用する場合、雇用契約や労働条件、法律上のルールなどをよく理解した上で対応が必要です。

高齢の労働者が増えるとともに、嘱託社員の雇用に関する手続きは増えることが予想されます。少子高齢化の影響で人材不足が深刻化する中、即戦力として期待できる嘱託社員を有効活用することが組織の維持・発展に役立つでしょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。