承認欲求とは?満たし方・なくしたい場合は?【公認心理師監修】

この記事のポイント

  • 承認欲求とは「他人から一目置かれたい」「自分を認めてほしい」という誰もが持ちあわせている欲求です。
  • 承認欲求が強すぎると、他人の評価ばかり気になって仕事や普段の生活に支障をきたすことがあります。
  • 過剰な承認欲求が現れたら、小さな成功体験を積み重ねたり自分自身を認めたりしていくことで、ネガティブな気持ちを解放できます。

承認欲求とは?簡単に解説!

承認欲求とは?満たし方・なくしたい場合は?【公認心理師監修】

承認欲求とは、「他人から一目置かれたい」「自分を認めてほしい」という欲求です。ネガティブな意味で使われることもありますが、承認欲求を満たすことは人間の自然な欲求の1つでもあります。

しかし、あまりにも承認欲求が高すぎると、普段の生活にも良くない影響が生じます。例えば、上司に認めてもらえないことに落ち込んでしまったり、小さなことをいつまでも気にしてしまってミスをしたりするなど悪循環に陥ることがあるでしょう。

承認欲求とマズローの欲求5段階説の関係性

アメリカの心理学者であるマズローは、人間の欲求を5つの階層にわけた「欲求5段階説」という理論を提唱しました。

マズローの欲求5段階説

図のように5つの欲求はピラミッド型で、最下層から欲求を満たすごとに、次の階層の欲求へと向かっていきます。

  • 1段階目 生理的欲求

    最下層に当たるのが、生理的欲求です。生理的欲求とは、食事や睡眠、排泄といった人間が生きていくために必要な欲求のことです。

  • 2段階目 安全の欲求

    生理的欲求が満たされると、次は「食料確保を維持したい」「安心して眠れるところがほしい」と思うものです。安全の欲求とは、身辺の安全を確保したいという欲求です。

  • 3段階目 社会的欲求

    社会的欲求は、「帰属欲求」「所属と愛の欲求」とも呼ばれる欲求です。集団に所属したい、仲間を得たいという欲求が社会的欲求となります。

  • 4段階目 承認欲求

    マズローの承認欲求は「他者承認欲求」と「自己承認欲求」の2つに分けられます。このうち「他者承認欲求」は他人に認められたいという欲求で、一般的に使われている承認欲求にあたります。「自己承認欲求」とは、自分に価値を感じたい、自分自身を尊重したいというという欲求になります。

  • 5段階目 自己実現の欲求

    マズローの5段階説の最上位に位置するのが、「自己実現の欲求」です。自己実現の欲求とは、「自分が満足できる自分になりたい」と願う欲求です。1段階目の生理的欲求から順番に4段階の欲求階層を満たしていくことで、最終的にこの5段階に到達することができます。

承認欲求を英語で示すと?

承認欲求を直訳すると、「desire for approval」「desire for recognition」となりますが、心理学では「esteem needs」や「need for approval」が用いられます。

他者からの評価や理解といった「承認の欲求」以外にも、自分を尊重するといった「尊重の欲求」が表現の中に含まれています。承認欲求という言葉は、英語表現では日本ほど否定的な意味で用いられていないことがわかります。前述したように、マズローが定義した承認欲求の概念が含まれています。

自分は承認欲求が高い?診断・チェックリスト!

自分の承認欲求の高さを知るために、次の項目をチェックしてみましょう。各項目に対して当てはまるかどうか、心の中で振り返ってみてください。

  1.   自分の魅力を知ってほしい
  2.   意見を言うとき、 反対されないか気になる
  3.   人と仕事をするとき、自分の良さを知ってもらいたい
  4.   関係が悪くなるぐらいなら、話し合いは避けたい
  5.   チャンスがあれば、目上の人に一目置かれたい
  6.   相手に不愉快な表情をされると、 すぐに機嫌を取る
  7.   初めて会う人には、自分をアピールする
  8.   場違いなことをしていないか、いつも気を配る
  9.   自分が注目されていないと、 つい人の気を引きたくなる
  10.   まわりから変な目で見られないか気になる
  11. 責任がある立場につくことは、 自分を印象づけるチャンスだ
  12. 自分の意見が批判されると、動揺してしまう

普段のあなたにどれくらい当てはまっているでしょうか。上記の項目に「当てはまる」項目が多い場合、承認欲求が高い可能性があります。

承認欲求を満たすための方法

承認欲求が高すぎる人は「他人から評価されたい」「他人から認められたい」と、他人からの賞賛で自分を満たそうとしている状態ともいえます。自己肯定感を高めたり、自分を大切にしたりすることで承認欲求は満たされていきます。ここでは、承認欲求を満たすための4つの方法を解説します。

自分の感情を尊重する

自分の感情や気持ちを尊重し、否定せずに受け入れることが大切です。小さなことからで良いので、自分が今したいことをやってみましょう。例えば、「コーヒーを飲みたい」「本を読みたい」など、小さなことをひとつずつ叶えていくことで、自分の心が満たされ自分を認められるようになっていきます。

自分を磨く

新しいことに挑戦したり、資格を取得したりすることで、自分の価値が上がったように感じられ、自己肯定感が高まります。他にも、「好きな服を着る」「部屋をきれいにする」といった日常でできることも、自己肯定感の向上につながるので、試してみましょう。内面的な成長だけでなく、外見やスキルの向上といった目に見える成果が出るものは特に、自分に自信を持つことにつながります。

ポジティブ日記をつける

日記といっても、たくさん書く必要はありません。今日あった良かったこと、褒められたことなどを短く3行ほどで書いてみましょう。小さなことでも感謝されたり、認められたりしたことがあるはずです。せっかく褒められていてもそのことに気づいていない場合があるので、日記を書くことで日々の楽しいこと、褒められたことを見つけていきましょう。

ポジティブな日記をつけることで、自分の成功や良い出来事にフォーカスし、自己評価を向上させられます。周囲の評価に頼らなくても、自分の中から満たされるようになります。

SNSでポジティブな発信をする

SNSで「いいね」をもらうと、自分の書いた内容を誰かが読んで共感してくれていると感じます。「いいね」をもらうことばかりに必死になり、疲れてしまうようでは良くありませんが、SNSは承認欲求を手軽に満たせる便利なツールです。自己肯定感を上げることにもつながるので、日記と同じように日常で良かったことなどを、適度に発信して活用すると良いでしょう。

承認欲求をなくしたい!なくすための方法

承認欲求が高い人の中には、「承認欲求をなくしたい!」と思う人もいるでしょう。それでは、承認欲求をなくすことはできるのでしょうか。ここからは、承認欲求をなくすための方法を4つ紹介していきます。

承認欲求があることを認める

人間には誰しも承認欲求があります。承認欲求があるからこそ努力をしたり、自信を持ったりできる良い側面もあるのです。そのため、承認欲求自体をなくすことは無理があります。

もし、他人からの評価がどうしても気になってしまい、自分に否定的な感情が生じるのであれば、それも自分の欲求の1つであると受け入れましょう。承認欲求を否定するのではなく、認めることも大切です。

深く考えすぎない

承認欲求が強い人は「周囲の目を気にしすぎる」ことがあります。「こんな服で外を歩いたらどう思われるだろう」と悩むのではなく、自分がその服が好きなのであれば、その服を着て外に出ましょう。

「人からどう思われてもいい」と割り切ることが重要ですが、それは難しいので、あまり考えすぎずに自分の気持ちに正直に行動することを心がけると良いです。人に迷惑をかけることでなければ問題ないので、自分の気持ちを優先する経験を重ねることが大切です。

SNSから距離を置く

SNSは手軽に承認欲求を満たせるツールである一方で、依存性も強く、のめり込みすぎてSNSの評価ばかりを気にしてしまう人もいます。もし、SNSを1日に何度もチェックしてしまうのであれば、一旦SNSから距離を置いてみましょう。

ありのままの自分を受け入れる

強すぎる承認欲求を克服するには、自分自身の価値を認めることが大切です。自分の短所やコンプレックスに目を向けてしまうと、ありのままを受け入れることは難しいこともあるかもしれません。自分の長所を認め、自分ができる小さな成功体験を積み重ねていきましょう。

少しずつでも自分を大切に思う気持ちを感じられるようになると、短所も含めた自分を認められるようになっていきます。次第に、他人の目や評価から解放され、不安や焦りが減っていることに気がつくでしょう。

承認欲求の強さに男女差はある?

承認欲求と性差を比較した研究「承認欲求と種々のデモグラフィック要因」によると、「他人に認めてもらいたい」「他人に評価されたい」という欲求は男性の方が高いことが示されました。一方で、「嫌われたくない」「まわりから変な人だと思われたくない」という欲求は女性の方が高い結果が出ています。しかし、その研究の母集団の大半の男性は就業しており、ほとんどの女性は専業主婦であるということから、属性の影響も考えられます。

参考:承認欲求と種々のデモグラフィック要因|東京未来大学研究紀要

承認欲求は、性差だけではなく本人の性格や環境が影響することが他研究から報告されています。

もっと詳しく!承認欲求に関するおすすめ論文と要約

承認欲求に関する論文や情報を要約して紹介します。

承認欲求とソーシャルメディア使用傾向の関連性

この論文は、承認欲求とソーシャルメディア使用傾向の関連性についての研究です。主な内容は以下の通りです。

概要

  • ソーシャルメディアの使用は、承認欲求と密接に関連している。
  • 承認欲求の高い人はTwitterやInstagramをよく利用し、承認欲求の低い人はこれらのプラットフォームをあまり利用しない傾向がある。
  • 承認欲求の高い人は、勉強時も含めてネット検索を頻繁に利用し、スマートフォンに常時接触している傾向がある。

研究の背景

  • ソーシャルメディアの普及により、多くの人が「インスタ映え」などのトレンドに影響されている。
  • 一方で、SNS疲れやオンラインコミュニケーションによるトラブルも増加している。

承認欲求

  • ソーシャルメディアの「いいね」機能などは、人々の承認欲求を刺激する。
  • 承認欲求の高い人は、ソーシャルメディアでの承認を求め、スマホ依存に陥りやすい。

研究方法

  • 山形県内の専門学校と大学生22名を対象に質問紙調査を実施。
  • 承認欲求とソーシャルメディアの利用頻度、スマートフォンへの依存度を調査。

結果

  • 承認欲求の高い人はTwitterやInstagramを頻繁に利用し、スマートフォンに常時接触している。
  • 承認欲求の低い人はこれらのプラットフォームをあまり利用せず、スマートフォンへの依存も低い。

考察

  • 承認欲求を満たすためにソーシャルメディアを利用することが、スマホ依存につながる可能性がある。
  • 承認欲求をソーシャルメディア以外の方法で満たすことが、スマホ依存を克服する手段となる可能性が示唆された。

結論

  • 承認欲求が高い人はソーシャルメディアを頻繁に利用し、スマホ依存に陥りやすい。
  • 今後の研究では、より多くの被験者を対象に同様の傾向があるかを調査する必要がある。

この研究は、ソーシャルメディアの使用と承認欲求の関連性を明らかにし、スマートフォン依存の問題に対する新たな理解を提供しています。

出典:J-STAGE「承認欲求とソーシャルメディア使用傾向の関連性」

人間関係における「承認」を考えるために

この論文は、現代社会における人間関係と「承認」の概念に焦点を当てています。主な内容は以下の通りです。

概要

  • 現代の人間関係において、「優しい関係」がどのように変化しているかを探求。
  • 「承認」の概念が人間関係に与える影響について考察。
  • ソーシャルメディア(SNS)の使用と承認欲求の関係を探る。

「優しい関係」とは

  • 「優しい関係」は、対立を避け、摩擦のない平和な関係性を指す。
  • この関係性は、表面的には対立がないが、コミュニティからの排除や苦しみをもたらす可能性がある。

「承認」とは

  • 「承認」は、他者からの認識や評価を受けること。
  • 現代社会では、承認の基準が「コミュニケーション能力」や「キャラ」に依存している。
  • 「キャラ」としての承認を求めることは、他者への依存度を高め、自己意識の安定を損なう可能性がある。

SNSと承認欲求

  • SNSは、容易に承認を得る手段を提供し、承認欲求を満たす。
  • 「いいね」機能などは、相互承認のプロセスを容易にする。
  • SNS上での自己表現は、現実の人間関係よりもコントロールしやすい。

結論

  • 「優しい関係」は変化しており、現代の人間関係において「承認」が重要な役割を果たしている。
  • 自己の存在を承認するためには、他者との相互承認に基づく関係性の構築が重要。
  • しかし、このような関係性が人間関係の「重さ」を解消しているかどうかは不明。

この論文は、現代社会における人間関係の変化と、それに伴う「承認」の概念の重要性を探求しています。特に、SNSの使用が承認欲求に与える影響について詳細に分析しています。

出典:佛教大学「人間関係における「承認」を考えるために」

監修者の編集後記 -承認欲求について-

承認欲求は、誰もが持つ自然な欲求の1つです。しかし、承認欲求が高すぎると他人からの評価ばかりが気になって、職場や日常生活の中での人間関係を悪化させてしまうこともあります。過剰な承認欲求は、小さな成功体験の積み重ねや自分自身を認めていくことで、ネガティブな気持ちを解放することができます。本記事で紹介したポイントを参考に、組織内での人間関係に役立ててください。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。