パーソナルスペースとは?広い人狭い人の特徴、ビジネスでの活用例
この記事のポイント
- パーソナルスペースとは、他人が近づくと違和感を感じる心の距離感を指します。相手と適度な距離を保つことが円滑なコミュニケーションには必要です。
- 年齢や性別、関係性、性格によってパーソナルスペースの広さは異なります。人との距離感は4つに分類されており、親密で対等な関係ほど距離は近くなります。
- パーソナルスペースに注意することで、緊張感を高めたり、チームの結束を強くしたりするなど、ビジネス上の関係構築に役立ちます。
目次
パーソナルスペースとは?
パーソナルスペースとは、他人に近づかれると不快に感じてしまう空間のことを指します。円滑なコミュニケーションを行うために必要であり、適度な距離感を意識して関わることが大切です。
パーソナルスペースを意識しないと、相手に不快感を与える可能性があります。また、性別や年齢、性格によってもパーソナルスペースの広さは異なるため、一人ひとりに合わせた対応を意識することが重要です。ここでは、パーソナルスペースの意味や特徴について、3つのポイントから詳しく解説します。
相手を不快にさせない距離感である
パーソナルスペースは、他人と関わるときの警戒心と関連しています。そのため、相手のパーソナルスペースを見極めて、適切な距離感を保つことが大切です。
しかし、目に見えない空間であるため、無意識のうちに踏み込んでしまうことがあります。距離が近すぎると相手に不快感を与えてしまいかねません。場合によってはハラスメントと受け取られることもあるので、注意が必要です。
適度なパーソナルスペースを保ち、双方にとってストレスのないコミュニケーションを行えるのが理想でしょう。
親密で協力的な関係ほど距離が近くなる
パーソナルスペースは、相手との関係性によって異なります。以下のような関係性であると、パーソナルスペースは狭く、距離が近くなりやすいとされています。
- 親密
- 協力的
- 対等
同僚や友達などの対等であり親密な関係ほど、距離は近くなるといえます。一方で、上司のような社会的地位の高い相手には、距離が遠くなりがちな傾向があります。
年齢や性別によって距離感が異なる
パーソナルスペースは、心理学的な研究から年齢や男女の差が見られることが分かっています。年齢に関しては、警戒心が少ない子どもの方が狭く、距離が近いとされています。精神的に自立していく中で広くなり、40歳前後をピークとして徐々に狭まるのが特徴です。
男女差については、男性同士はパーソナルスペースを広く取りやすいとされています。男性は女性に比べると緊張感を与えやすく、男性同士だと互いに警戒して距離を空けやすいためだといえるでしょう。
年齢や男女差があることが示されているものの、実際は相手との親密度や立場の違いを含めた複数の条件が影響します。例えば同じ男性でも上司と同僚だと親密度や緊張感は異なります。そのため、「相手と自分はどんな関係性か」を客観的に意識して接することが大切です。
パーソナルスペースの4つの距離
パーソナルスペースは、相手との関係性によって異なります。アメリカの文化人類学者であるエドワード・T・ホールが行った実験から、4つの距離に分類されています。
密接距離(45cm以下)
パーソナルスペースのうち、最も親密な関係性で取られる距離です。身体に触れたり、抱きしめたりするなどのスキンシップができる距離感といえます。恋人やパートナー、子どもなどの親密な相手以外が入ってくると不快感を感じやすいでしょう。
仲のよい友人や職場の同僚だとしても、よほど親密でない限りは入らないようにすることが重要です。
個体距離(45~120cm)
友人や家族と会話するときに適しており、自分と相手の双方が手を伸ばせば届く距離です。相手の表情が分かりやすく、軽いボディタッチもできる距離感であり、親しい関係であれば心地よいでしょう。
社会距離(120~360cm)
相手との会話はできますが、お互いの手が届かないくらいの距離です。プライベートの領域に踏み込まれるような脅威を感じないため、ビジネスの場面に適しています。例えば、職場のデスクや、商談を行う取引相手との座席などは社会距離を保つと安心しやすいでしょう。
公衆距離(360cm以上)
セミナーや会議など、複数人がいる場で前に立って話すときに適した距離です。社会的地位の高い相手に対してとる距離であり、緊張感を持ってコミュニケーションを取りやすいでしょう。
パーソナルスペースが広い人・狭い人の特徴
パーソナルスペースが広いかどうかは、外向性や親和性といった性格が影響しているとされています。とくに、社交的であるほど距離が近くなる傾向があります。具体的には、どのような特徴が見られるのでしょうか。
パーソナルスペースが広い人の特徴
パーソナルスペースが広い人は、警戒心が強く、人と距離を取ることで安定する傾向にあります。内向的で、人と接するよりも自分一人の時間を大切にするのが特徴です。そのため、集団行動よりも単独行動を好む傾向があり、自分のペースを守ります。
人との関わりに慎重であるため、親密になるまでに時間がかかることがあるでしょう。一方で、必要以上に相手に近づきすぎず、適度な距離感を保ちやすいという側面もあります。
パーソナルスペースが狭い人の特徴
パーソナルスペースが狭い人は、相手との距離が近く、誰とでも分けへだてなく接する社交的な性格の人が多いでしょう。人への好奇心が強いため、積極的に関心を持って関わろうとします。
親密な関係を築きやすいといえますが、一方で相手との距離が近すぎて警戒されてしまうこともあるでしょう。
パーソナルスペースが広い人・狭い人への接し方
パーソナルスペースの広さに応じて、接し方を柔軟に変えることが円滑なコミュニケーションにつながります。実際の場面では、どのように接すればよいのでしょうか。
パーソナルスペースが広い人への接し方
警戒心が強く慎重であるため、急に距離を縮めるとストレスを与えやすいでしょう。そのため、相手のペースに合わせ、徐々に距離を縮めていく必要があります。相手が少し視線を合わせてくれたら、こちらも視線を合わせるようにするというように、少しずつ距離を縮めることが大切です。
相手が少しずつ話してくれるようになったら、その内容に共感し、興味を持っていることを示しましょう。共感が伝わることで、警戒心が少なくなり、協力的な関係を築きやすくなります。
パーソナルスペースが狭い人への接し方
人に対する関心が強く、関わることを好むタイプであるため、聞き役に回ることが大切です。話を傾聴し、反応したり褒めたりするような関わりをするとよいでしょう。
しかし、ボディタッチやプライベートすぎる質問をされるなど、距離感が近すぎるとストレスを感じるかもしれません。許容範囲を決めておき、自分がストレスを感じる行動はやんわり指摘するようにしましょう。
ビジネスでのパーソナルスペースの活用法
ビジネスの場面では、パーソナルスペースをどのように活用すると効果的なのでしょうか。場面や目的別に5つの活用法を紹介します。
協力的な関係を構築する
部下との距離を縮め、チームの結束を強めたいときには、パーソナルスペースを狭くするようにアプローチするとよいでしょう。
協力的な関係性を築くためには、横並びで作業を行うことがおすすめです。平等な立場であると認識しやすく、距離を縮めやすいでしょう。
本音を引き出す
1on1ミーティングのような面談場面では、120cmの社会距離よりも少し近い距離を意識するとよいでしょう。距離を小さくすることで、仕事上の話だけではなく、本音の話を引き出しやすくなります。
また、距離を縮めることに加えて、座席位置にも配慮することが大切です。相手から見て45度の位置に座ると、視線が合いにくく安心して話しやすいでしょう。対面に近い状態であるため、ほどよい緊張感とともに真剣な雰囲気をつくることにも役立ちます。
リーダーシップを強調する
会議のように複数人が同席している場面で、リーダーシップを執りたいときには、距離を広げることを意識しましょう。また、座席の位置を上座にすることで、緊張感を高められます。
商談を行う
取引先との商談のように、フォーマルな場では一定の距離感が必要です。120cmの社会距離を意識し、テーブルを挟んで対面することで、ほどよい緊張感を保ちながらやりとりできます。
快適な職場環境をつくる
従業員が安心して働ける職場環境づくりには、パーソナルスペースの配慮が重要です。デスクの配置に関しては、最低でも120cmの社会距離を確保することで、作業に集中しやすくなります。
また、作業を行うための集中ブースを設けることもおすすめです。パーティションで区切り、騒音や視線をシャットアウトすると集中力が高まります。
チームの親密さを高めたいときは、コミュニケーションスペースをつくることも有効です。使用するテーブルは円卓型にすると、近くに座っても違和感を抱きにくく、メンバー全員の顔を見渡しやすいでしょう。親密さを深め、平等な関係性を築きやすくなるので、チームワークが強くなることが期待できます。
もっと詳しく!パーソナルスペースに関するおすすめ論文と要約
パーソナルスペースに関する最新の研究は、様々な文化、状況、または技術の発展が個人のパーソナルスペースの認識にどのように影響するかを探求しています。ここでは、いくつかの興味深い論文を紹介します。
- パーソナルスペースの境界
Maleina (2020)は、プロフェッショナルな活動期間中の「個人的」な概念を指すために「パーソナルスペース」という表現を使用することを提案しています。この研究は、個人のパーソナルスペースへの侵入が従業員と雇用者の間の秘密やプライバシーに対する関心のバランスとして定義されるべきであると結論付けています【Maleina, M. (2020). Lex Russica】。 - COVID-19パンデミック中のパーソナルスペースの増加
Holtら (2021)は、COVID-19パンデミック中にパーソナルスペースの境界が拡大したことを発見し、これは実際の感染リスクレベルとは独立していることを示しています【Holt, D., Zapetis, S., Babadi, B., & Tootell, R. (2021). Frontiers in Psychology】。
これらの研究は、パーソナルスペースの認識が文化的背景、現代の社会行動の変化、そして特にパンデミックのような外部の出来事によってどのように形成され変化するかを示しています。
パーソナルスペースは単なる物理的な距離ではなく、個人の快適さ、安全性、および社会的相互作用に関連する複雑な心理的な概念であることが強調されています。
監修者の編集後記 -パーソナルスペースについて-
パーソナルスペースは、他人に入られるとストレスを感じる個人的な空間のことを指します。目には見えない空間であり、広さは一人ひとり違います。そのため、距離感を見誤ってしまうことがあるかもしれません。
相手との関係性や性格に合わせたコミュニケーションを心がけることが大切です。本記事で紹介したパーソナルスペースの特徴や活用方法を参考に、円滑なコミュニケーションができるように取り組みましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。