メラビアンの法則とは?具体例やビジネスでのコミュニケーション活用法

この記事のポイント

  • メラビアンの法則とは、人とのコミュニケーションにおいて、声のトーンや表情といった非言語コミュニケーションが重要なことを示した心理学の法則です。
  • メラビアンの法則を正しく理解することで、上司や部下、取引先などとのビジネスシーンにおいて円滑なコミュニケーションや信頼関係構築に役立ちます。
  • 伝えたいことは、言葉の内容と表情や態度を一致させることで、より一層相手に伝わりやすくなります。

メラビアンの法則とは?

メラビアンの法則とは?具体例やビジネスでのコミュニケーション活用法

メラビアンの法則とは、人とのコミュニケーションにおいて、声のトーンや表情といった言語以外の「非言語コミュニケーション」が重要なことを示した心理学の法則です。

何気なく人と会話している場面でも、人は単に言葉から得られる情報だけではなく、声のトーンや話し方など聴覚や視覚から得られる情報も受け取っています。この聴覚や視覚からの情報こそが、非言語コミュニケーションです。

メラビアンの法則を正しく理解し、非言語コミュニケーションを効果的に活用すれば、職場や取り引き先などとのビジネスシーンで大きな助けとなるでしょう。

メラビアンの法則が生まれた背景

メラビアンの法則は、カリフォルニア大学の心理学者であるアルバート・メラビアンによって1971年に提唱されました。

メラビアンは、声のトーンや表情といった非言語コミュニケーションの影響について研究をしています。その中で、コミュニケーションの3つの要素が矛盾している場合、聞き手はどの情報から影響を受けるかについて実験しました。話す言葉、表情、話し方をバラバラにして伝えたとき、相手は話している人の感情をどう判断したかを調べています。

結果、言葉そのものの影響はわずか7%、表情や話し方などの非言語コミュニケーションの影響が93%であることが明らかになったのです。

3Vの法則:7-38-55ルール

メラビアンの実験結果から導き出されたのが、3Vの法則です。3Vとは、言語情報(Verbal)・聴覚情報(Vocal)・視覚情報(Visual)の頭文字を取って名付けられています。

3Vの法則では、言葉、声、表情・態度が矛盾している場合、言語情報7%、聴覚情報38%、視覚情報55%という割合で相手に影響を与えることが示されています。この数字を取って、3Vの法則は「7-38-55ルール」とも呼ばれています。

しかし、この法則は感情を伝える場面で言語・聴覚・視覚が矛盾している状況で成り立つもので、すべてのコミュニケーションで法則どおりの数値になるとは限りません。

メラビアンの法則におけるコミュニケーションの3要素

メラビアンの法則では、「言語情報」「視覚情報」「聴覚情報」の3つの要素がコミュニケーションを取る上で重要とされています。ここからは、それぞれの要素について詳しく解説します。

言語情報

言語情報とは、言葉そのものが持つ意味を指します。言語情報では、データや事実などの客観的な情報を伝えられるのがメリットです。

一方で、メールやチャットなどの言語情報だけのコミュニケーションでは、解釈のずれが起きやすい点がデメリットとなります。声のトーンや表情といった非言語的なコミュニケーションでのやり取りができないため、本心が伝わりにくく、冷たい印象を与えてしまうケースも少なくありません。

聴覚情報

聴覚情報には、声のトーン、話すスピード、抑揚などが含まれます。話す内容は同じであっても、明るいトーンで話すか、暗いトーンで話すかによって、相手の受け取り方は違うものになります。

また、声のトーンだけでなく、言葉の強弱の付け方によっても異なる意味で伝わることもあるでしょう。電話で話しをする場合は、相手の顔が見えないため、聴覚情報から受け取る情報が多くなります。

視覚情報

視覚情報は、表情やジェスチャー、姿勢、目線といったボディーランゲージと呼ばれるものです。メラビアンの法則では、この視覚情報こそが気持ちや感情を伝える上で、最も影響を与える情報とされています。

言葉を使わずに表情や身ぶり手ぶりなどのジェスチャーでも、ある程度の気持ちを相手に伝えられます。このことからも、視覚情報はコミュニケーションを取る上で大きな役割を果たしています。

メラビアンの法則の具体例

メラビアンの法則は、ビジネスシーンでも強力に効果を発揮します。ここでは、具体例を2つご紹介します。

会議での提案

会議で提案する際、用意してきた言葉を読み上げるだけの棒読みでは、上司や同僚に思いが伝わりません。良い提案であっても、暗いトーンでぼそぼそとした話し方では、提案内容の評価まで下がりかねないでしょう。

提案するときは、ハキハキとした口調で身振り手振りを交え、しっかりとアイコンタクトするように心がけることが大切です。聴覚情報や視覚情報に訴えかける話し方を意識することで、相手により一層提案が伝わりやすくなります。

上司から部下へのコミュニケーション

上司から部下へのコミュニケーションでは、とくに部下は上司の言葉や態度に敏感です。言葉や態度によっては、誤解させてしまうこともあるでしょう。そのため、言葉と態度と表情の3つの要素をそろえて、伝えることが重要です。

たとえば、取引先との大きな仕事を終えた部下に「お疲れさま」と上司が目も合わさず不機嫌そうな表情で声をかけても、ねぎらいの気持ちは伝わりません。逆に不安になる部下もいるかもしれません。上司が笑顔で明るく「お疲れさま!」と声をかけると、率直にねぎらいの気持ちが伝わって部下のモチベーションアップにつながるでしょう。

メラビアンの法則をビジネスで活用するには?

メラビアンの法則は、上司と部下の間のコミュニケーション、営業、採用面接など多くのビジネスシーンで活用できます。ここでは、メラビアンの法則をビジネスで活用するために、重要な点を2つ紹介します。

 3つの要素をそろえる

最も大切なことは、言語情報・聴覚情報・視覚情報の3つの要素をそろえることです。たとえば、上司が大切なプレゼンの前に、部下に対して「頑張れ」と言ったとします。その際、高圧的な態度で厳しい表情をしながら言ったとしたら、部下は「絶対にミスするなよ」と言われているように思い、プレッシャーに感じるかもしれません。

もし、言葉通りにエールを送りたいのであれば、笑顔で明るい口調で言うと、その気持ちが伝わります。部下も混乱することなく高いモチベーションでプレゼンに挑めるでしょう。このように、すべての要素を一致させて、相手と接することが重要です。

 非言語情報をおろそかにしない

メラビアンの法則では、コミュニケーションにおいて視覚情報や聴覚情報などの非言語情報が相手の印象に大きく影響します。そのため、コミュニケーションを取るときには、表情や口調にも気を付けて相手と接するようにしましょう。

また、服装や髪型に気を配ることも重要です。とくにビジネスシーンでは、信頼性にも関わるため、清潔な印象を持ってもらえるよう身なりは意識して整えましょう。電話の場合も、表情を変えながら話すと声音も変わります。電話の内容によっては意識的に笑顔をつくったり、謝罪する場合は申し訳なさそうな顔をしたりして対応することで、気持ちが伝わりやすくなります。

メラビアンの法則のよくある誤解

メラビアンの法則は、しばしば誤った解釈をされることがあります。「人は見た目が9割」などは、過大解釈と言えるでしょう。なぜなら、メラビアンの法則は、「感情を伝えるコミュニケーション」上での「話し手の言葉、声、表情・態度が矛盾している」という限られた特殊な環境下の実験結果に過ぎないからです。

実際の日常生活では、実験場面と比べて複雑なコミュニケーションが行われています。そのため、日常生活のすべての場面が、メラビアンの法則に当てはまるわけではありません。メラビアンの法則を誤解して「話す内容はほとんど伝わらないから」と、相手に対する言葉の内容を軽視してしまわないように注意しましょう。

もっと詳しく!メラビアンの法則に関するおすすめ論文と要約

メラビアンの法則(Mehrabian’s Law)に関して最新の研究情報を紹介します。メラビアンの法則は、コミュニケーションにおける非言語的要素の重要性を示すものであり、特に感情的なメッセージの伝達において、言葉(7%)、声のトーン(38%)、非言語的な手がかり(55%)がどのように影響するかを示しています。

最新の研究では、この法則の適用範囲や限界、および現代のコミュニケーション環境での意味合いについてさらに探求されています。

  1. 非言語的手がかりと関係品質の推測
    Dunbarらによる2021年の研究では、非言語的手がかりだけを使用しても、人々が完全な音声手がかりを使用した場合とほぼ同じ精度(75%〜90%)で、肯定的な対人関係と否定的な対人関係を識別できることが示されました【Dunbar, R., Robledo, J., Tamarit, I., Cross, I., & Smith, E. (2021). Journal of Nonverbal Behavior】。この研究はメラビアンの主張を支持し、非言語的コミュニケーションの重要性を再確認しています
  2. 環境刺激の認識と感情反応
    環境に関するメラビアン・ラッセルモデルを応用した研究では、サービスや空間のデザインが消費者の感情状態や行動意向にどのように影響を与えるかが調査されています。例えば、Ryuらによる2021年の研究では、高級レストランの物理的環境と従業員のパフォーマンスが、顧客の感情反応(快楽と覚醒)に重要な影響を与えることが示されています【Ryu, K., Kim, H. J., Lee, H., & Kwon, B. (2021). Sustainability】。

これらの研究は、メラビアンの法則の基本的な概念を現代のコンテキストにおいてさらに展開し、非言語的コミュニケーションの理解とその応用の可能性を探っています。コミュニケーションの研究が進むにつれて、メラビアンの法則は新しい視点から再評価され、さまざまな状況や文化的背景での非言語的手がかりの役割について新たな洞察が得られています。

監修者の編集後記 -メラビアンの法則について-

メラビアンの法則を理解し、正しく活用することで信頼関係が高まり、周囲の人とのコミュニケーションがスムーズになります。職場内の信頼関係づくりやストレス軽減につながり、気持ち良く仕事ができるようになるでしょう。

営業やプレゼンでも活用できるため、提案が伝わりやすく、取引先とも良い関係を築ける可能性が高まります。本記事の内容を参考にして、ぜひビジネスシーンで役立ててください。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。