インターンシップとは?給料や期間、仕事内容や必要な契約について解説
この記事のポイント
- インターンシップとは、学生が在学期間中に企業で就業体験などを行うことを指す
- 参加する学生及び受け入れる企業それぞれにメリットのある制度で、実際の実施方法や期間は企業によりさまざま
- 実施方法によっては雇用契約と見なされることもあるなど、注意点もいくつか存在します。企業側としては、事前に注意事項を網羅したうえで望むことが必要
目次
インターンシップとは?
インターンシップとは、学生が在学中に一定の期間、実際に企業で就業体験を行うことを指します。参加者側(学生)の主な目的としては、就職する前に自分自身の適正を把握したり、実際の就業のイメージを持つことです。
就職を希望している企業であっても、実際に働き始める前だと具体的なイメージがつきにくかったりするため、事前に向き不向きや自分自身の実力を把握するいい機会となるでしょう。
なお、インターンシップを期間で大別すると、短期インターンシップと長期インターンシップに分けられます。短期の場合は最短で1日からというものもある一方で、長期に関しては半年以上や数年に及ぶケースも存在します。
アルバイトとの違い
インターンシップとアルバイトの違いとしては、主に就業の目的が挙げられます。前述の通り、インターンシップは学生側が自分自身の適正等を確かめるために就業する意味合いが強いと言えます。
一方、アルバイトの一般的な目的は、金銭としての収入を得るためです。もちろん、アルバイトと一口に言ってもさまざまなため、実際には自分自身の適正を見極めスキルを身につけたり、就職のイメージをつけるために働いたりしている方もいます。これらは、あくまで一般的な位置付けの違いと捉えましょう。
インターンシップに参加する、実施するメリット
学生側、企業側それぞれにインターンシップに参加する(企業側は受け入れる)メリットがあります。それぞれの視点からメリットを把握し、参加する側・受け入れる側それぞれで、実際のインターンシップの参考としてください。
学生側のメリット
学生側のメリットは複数挙げられますが、インターンシップの期間によってメリットは微妙に異なります。
まず、短期インターンシップの場合は、参加することによって就職希望の企業に対して熱意をアピールできる点がメリットとなるでしょう。
次に、長期のインターンシップのメリットとしては、実際の社員と同様の業務を任せてもらえるなど、より実践的な経験を積める点が挙げられます。その他には、勤続する期間が長い分、人脈を築くことができたり、そのまま就職の内定をもらえたりするなど、短期にはないメリットも存在します。
企業側のメリット
短期か長期かで異なりますが、企業がインターンシップで得られるメリットは、主に採用に関連するメリットです。
短期インターンシップのメリットとしては、効率良く、就職活動中の学生に自社のことを知ってもらえる点が挙げられます。これは、短期インターンシップの中でもいわゆる「セミナー型」と呼ばれるもののメリットです。その他、ディスカッションなどの形式で学生同士に企画等を行わせる「プロジェクト型」では、そこでのやりとりを見て学生の資質を入社前に確認できるというメリットがあります。
長期インターンシップの場合は、就業してもらう中で優秀な学生をいち早く見極めて、自社に採用できるというメリットがあります。じっくりと相手の能力を見極められる分、採用のミスマッチが起こりにくいというわけです。
インターンシップの期間はどのぐらい?
前述の通り、インターンシップの期間は企業やケースによりさまざまです。ここでは、「1dayインターンシップ」「短期インターンシップ」「長期インターンシップ」の3つの区分けに従い、それぞれの特徴を簡単に説明します。
1dayインターンシップ
1dayインターンシップとは、文字通り1日のみのインターンシップを指します。実際に業務にあたらせることは稀で、現役社員との座談会、職場見学やワークショップなどの形式を取ることがほとんどです。
企業によりさまざまですが、主に自社や募集職種に対して参加者に興味を持ってもらうことを目的に実施します。学生側の視点では、実際の会社の雰囲気をつかみ就業するイメージを持てる点がメリットです。
短期インターンシップ
1dayインターンシップを除く短期インターンシップでは、主に2日から2ヶ月程度のインターンシップを実施します。
短期インターンシップで実施される内容は、セミナー、説明会またはワークショップがメインです。短期の中でも比較的期間が長い場合は、実際に就業を体験する機会もあります。
企業が短期インターンシップを実施する目的としては、自社の広報活動としての目的がメインと言えるでしょう。
長期インターンシップ
長期インターンシップの期間は、数ヶ月から最長で数年間にも及びます。内容としては、短期よりもより踏み込んで、社員の仕事のうち一部を実際に任せられます。
実際にどのような業務を任されるかは企業によりさまざまですが、傾向としては資料作成などの社内の業務を任せられるケースが多いようです。
インターンシップの仕事内容
インターンシップの仕事内容は、企業により異なり、多岐に渡ります。短期の場合は、実際の業務に関わることは多くはないため、ここでは長期インターンシップに参加したと仮定して、業務内容を説明します。
代表的なインターンシップの職種をいくつか挙げるため、学生として参加される方や、企業の担当者として他社事例が気になる方は参考としてください。
営業(セールス)
営業の場合は、営業先の選定や日程などのアポイント調整などのサポート業務から始まり、新規顧客獲得といった仕事を行います。実際にはどのような仕事を行うかは企業次第ですが、電話対応や実際の営業に従事することもあるため、ビジネスマナーや顧客への対応を学ぶ機会となるでしょう。
編集者(ライター)
雑誌や、Web上の媒体等に関しての、記事執筆・編集・校正等がメインの仕事です。記事のアイデアの策定や、それをどのように伝えるかを学ぶ機会につなげられます。
マーケティング
こちらも企業により異なりますが、自社サービスの分析、SEO(検索エンジン最適化)対策、媒体内のコンテンツ作成、競合調査等、マーケティングに関わる業務に関われます。
エンジニア
エンジニアの長期インターンシップで関わる業務は、実際にプログラミングを行うなど、Webアプリケーションやシステム等の開発業務です。実務でエンジニアと一緒に働くことができるため、ビジネスの世界でエンジニアとして活躍するために必要なスキルを学ぶことができます。
インターンシップでは給料はもらえる?
割合は多くはありませんが、インターンシップの中でも給料をもらえるケースもあります。これは、主に長期インターンシップに多く、企業が学生に指示を出し、実際の業務に従事させて利益を生んでいる場合は、法律上、会社に給与を支払う義務が発生するためです。
インターンシップの給料の相場
インターンシップの具体的な相場は、アルバイトと同程度となる場合がほとんどでしょう。例を挙げると、時給で働く場合は1時間あたり1,000円前後が相場となり、日給で働く場合は、8時間労働したと仮定して1日あたり8,000円程度が相場となります。
なお、インターンシップでも法律に定められる最低時給は適用されるため、企業側の担当者は注意が必要です。
給料にかかる税金
インターンシップで給料を受け取っていた場合、給与所得という扱いで課税対象となります。
課税所得となった場合に気をつけなければならないのは、いわゆる「103万円」の壁が存在する点です。インターンシップに参加している学生が、親の扶養家族となっていた場合で、1月から12月末までに支払われた給料が総額で103万円を超えてしまうと、学生本人の給料に対して所得税が発生します。
同時に、学生の親が受けている給料についても、その学生分の扶養控除が計上されなくなるため、結果としてそれぞれ支払う所得税が増えることになります。
なお、インターンシップで受け取った給料のほかに、アルバイトでの給料が発生した場合は、それぞれを合算して103万円を超えているかが判断されるため、注意が必要です。
インターンシップの募集から採用の流れ
インターンシップの募集から採用の流れについては、企業によりさまざまです。多くの企業では採用時に選考を実施しますが、中には選考を行わずに採用する場合もあります。
ここでは、選考方法の中でも「書類選考」「適性検査・筆記試験」「面接」について解説します。書類選考と面接を組み合わせた形式が一般的ですが、下記を参考にしながら、自社に最適な方法を検討してみてください。
書類選考
最も多い選考の形式が、書類選考です。インターンシップに参加を希望する学生に、履歴書またはエントリーシート(場合によっては両方)を送付してもらい選考します。
履歴書では記載する項目は概ね決まっており、学歴・免許・資格・志望動機などを記入する形式です。企業から記載する書類雛形を指定することも可能なため、適宜指定をするなど工夫の余地があります。
エントリーシートについては、基本的にはあらかじめ企業側で記載項目を定めます。志望動機や自己PRを記載させることが一般的ですが、こちらも自社で重要視する要素を付け加えても良いでしょう。
「適性検査・筆記試験」
SPIに代表される、受験者の性格特性や知的能力を測るための選考方法です。受験会場での試験のほか、Webでの実施も可能です。
検査や試験の内容により異なりますが、基本的には、短期間では変化しにくい個人の資質を計測し、どのような仕事に向いているのかを事前に把握するヒントとなります。
面接
通常の就職と同様の面接による選考方法です。個人面接のほか、グループ面接やグループディスカッションなどの形式をとる場合もあります。
個人面接では、一人一人に時間をかけて向き合えるため、より深い面まで掘り下げることが可能です。一方、グループ面接では基本的に同じ質問を複数の応募者に投げかけることになるため、多数の応募者を効率的に選考するのに適した方法と言えます。
グループディスカッションは、複数の応募者に対してテーマを与え議論させたうえで、結論を発表させる選考方法です。企業により目的や方法は異なりますが、集団での振る舞いを判断するのに適した選考方法で、協調性などのコミュニケーション能力や、より実務に近い場面での思考力を測れるといわれています。
インターンシップ導入に必要な書類・テンプレート
実際にインターンシップを実施しようとすると、学校や学生などに対してさまざまな書類を交付する必要があります。ゼロから書類を作成すると手間になるうえに、どのような内容を盛り込めばいいのか迷われる方もいるかと思います。
こちらでは、あらかじめ汎用性の高い書類雛形を紹介しますので、実務の際に参考としてみてください。
インターンシップの実施案内
学校を介してインターンシップを募集する場合は、実施案内を作成し共有する必要があります。学校側の関係者が対応しやすいよう、学校・学生双方に必要な情報を記載します。
実際の取りまとめをどのように行うかは学校側との相談になりますが、企業側の窓口を明確にして、担当者の指名等を記載しましょう。
また、給料等が支給される場合は、その旨も記載する必要があります。雛形では活動支援金という名目で記載された項目が、給料に該当します。
その他については、以下で紹介する雛形を参考に、自社に合わせてアレンジしてみてください。
インターンシップ契約書
選考等を終了し、インターンシップとして受け入れる学生を決定したら、インターンシップ契約書の締結に移ります。盛り込む事項についてはある程度企業が定められますが、どのような内容にすべきか迷われた場合は、以下で紹介する雛形を参考としながら自社にあった内容で作成してみましょう。
具体的な「目的」「実習場所」「実習期間」「報酬」については、後から争いとなることを避けるため、最低限定義しておくことをお勧めします。中でも報酬に関しては、給料等が支払われないインターンシップであっても、あらかじめ明確にする意味も含めて契約書に明記するほうが安全です。
なお、実習期間については、契約締結の時点で具体的に決定していない場合でも、「実習開始時期は、●月●日から●月●日の間で協議の上で決定する」のように記載できます。
その他には、インターンシップ期間中に学生が製品情報や顧客情報などを知り、外部に漏らしてしまうことも考えられるため、秘密保持に関する項目も定めておくと安全です。
インターンシップ誓約書
インターンシップの際に、契約書とセットで取り交わされることも多いのが誓約書です。内容としては、インターンシップ中に、企業が学生に守って欲しい事項を記載することになります。
具体的には、「秘密保持(契約書に盛り込んだ場合は不要)」「会社内のルール遵守(立入禁止区域など)」などを記載します。そのほか、「貸与しているパソコンの取り扱い」等、受け入れ先の企業として守って欲しいことが他にあれば、その点についても記載して良いでしょう。
インターンシップに関わるリスクはある?
参加する学生側および企業それぞれについて、インターンシップに関わるリスクがあります。
社会や契約に関しての知識があまりない学生には、場合によっては不適切な環境で働かざるを得ないという点はリスクです。一方で、企業側には気づかずに法令に違反してしまうリスクがあります。
学生側のリスク
学生側のリスクで代表的なものは、いわゆる「ブラックインターンシップ」と呼ばれるものに引っかかってしまうことです。
ブラックインターンシップとは、実態としてはアルバイトや社員と変わりがないにもかかわらず、インターンシップと称して学生を給料を適切に払わずに働かせることなどを指します。中には、契約書の中で最低1年間はインターンシップを続けることを義務付けた事案などもあり、注意が必要です。
もし、事前に聞いていた話と実態がかけ離れていたり、給料が適切に支払われないまま実質的に社員と変わらない働き方を強いられたりした場合は、学校側の窓口などしかるべき機関に相談しましょう。
企業側のリスク
企業側がインターンシップにより学生を受け入れる際には、状況に応じていくつかリスクがあります。
まず挙げられるのが、各種の労働法令に関わるリスクです。インターンシップであっても、学生に指示を行い時間的・場所的に拘束していたり、働いた時間に応じて賃金を支払っていたりする場合は、その学生が事実上の労働者として扱われることがあります。労働者として扱われた場合、時給に関しては原則最低賃金を下回ることができず、もし知らずに下回ってしまった場合は法令に抵触することとなります。
次に学生が夜間部の学生であった場合、週の所定労働時間が20時間以上となるなど一定の要件を満たしていると、その学生を雇用保険に加入させなければなりません。こちらも知らずに働かせ続けた場合は法令違反となるため注意が必要です。
もっと詳しく!インターンシップに関するおすすめ論文と要約
インターンシップに関するおすすめの論文を紹介します。
- 「大学教育としてのインターンシップの現状と課題」
この論文では、現在のインターンシップが「学生への教育的役割」「大学への機能的役割」「企業への採用活動としての役割」の3つの役割を果たしていると指摘されています。しかし、それぞれの役割や関連性の整理や議論が十分になされておらず、新型コロナウイルスの発生と相まって混迷していると述べられています。 - 「多様なインターンシップ経験と効果の一考察」
この論文では、多様なインターンシップ経験がインターンシップの効果に及ぼす影響を明らかにすることを目的としています。具体的には、インターンシップの参加有無、参加パターン(社数・期間)、参加形態(オンライン・対面)がインターンシップの効果に及ぼす影響を分析しています。 - 「大学におけるインターンシップ研究の動向と課題」
この論文では、大学におけるインターンシップ研究の動向と課題について調査されています。具体的な方法論や結果は論文内で詳しく説明されています。 - 「大学生のインターンシップ参加がキャリア形成にもたらす効果」
この論文では、大学生のインターンシップ参加がキャリア形成にどのような効果をもたらすかについて調査されています。具体的な方法論や結果は論文内で詳しく説明されています。
監修者の編集後記 -インターンシップについて-
今回はインターンシップの概要や注意点について解説しました。インターンシップは、人手不足の状況において採用の訴求力を高めたり、優秀な学生をいち早く見抜いて自社への採用につなげられたりするなど、企業にとってメリットの多い制度です。
その一方で、知らないまま雇用契約に該当してしまい、うっかり法律違反となってしまうリスクもあるため、企業側の担当者は本記事などを参考に、予備知識をつけたうえでインターンシップに臨みましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。