プロパーとは?業界による意味の違いやプロパー社員の特徴を解説

この記事のポイント

  • 「プロパー」とは「適切な」「正規の」「礼儀正しい」などを意味するが、分野・業界によって意味合いが異なります。
  • ビジネスで使用される「プロパー社員」は、主に「新卒採用の社員」を意味します。
  • プロパー社員が会社にもたらすメリットと課題を理解して、人材の有効活用を図りましょう。

プロパーとは?

プロパー

「プロパー」という言葉は、日本語では「適切な」「正規の」「礼儀正しい」など、さまざまな意味を持ちます。また、ビジネスの世界では、従業員の分類として「プロパー社員」という言葉が使用されます。

ビジネスシーンでの「プロパー社員」

ビジネスシーンで使用されるプロパー社員にはいくつかの意味がありますが、従業員を分類するために使用されます。

  • 転職者と区分するための「新卒採用の社員」
  • 契約社員や派遣社員と区分するための「正社員」
  • 関連会社からの出向社員など他社従業員と区分するための「自社社員」

「新卒採用の社員」という意味で使用されることが多いですが、会社の雇用形態によって意味が異なります。たとえば、契約社員が多い会社では、契約社員と正社員を区別するために正社員をプロパー社員と呼んだりします。

プロパーは分野・業界によって意味合いが異なる

プロパーという言葉は、分野や業界によって違う意味で使用されています。業界別の意味や具体例を5つ紹介します。

  • アパレル業界での「プロパー価格」
  • 小売・流通業界での「プロパー商品」
  • 金融業界での「プロパー融資」
  • 信販業界での「プロパーカード」
  • 学術業界での「○○学のプロパー」

アパレル業界での「プロパー価格」

アパレル業界で使われる「プロパー価格」とは、商品やサービスの正規価格(割引していない価格)のことです。サービス価格やバーゲン価格などと区分するために使用します。また、プロパー価格で販売される商品を「プロパー商品」ということもあります。

プロパー価格という言葉は、次のように使用します。

  • 人気商品のため、プロパー価格(正規価格)でしか買えない
  • 利益率の改善に向けて、プロパー価格での販売策を検討する

小売・流通業界での「プロパー商品」

小売業界や流通業界で使われる「プロパー商品」とは、正規の流通ルートで販売される商品のことです。正規ルートを通さずに販売される転売商品や並行輸入商品などと区分するために使用します。プロパー商品という言葉は、次のように使用します。

  • 海外ブランドの高額商品の購入は、正規輸入代理店のプロバー商品が安心できる

    ただし、前述の通り、プロパー価格で販売される商品という意味で使われることもあります。

  • プロパー商品が期間限定で値引きされている

金融業界での「プロパー融資」

金融業界で使われる「プロパー融資」とは、銀行が保証協会を利用せずに融資することです。信用保証協会による保証付の融資などと区分するために使用されます。

プロパー融資の場合、銀行はリスクを軽減するために厳しく審査しますが、金利が低かったり融資枠が大きく設定されたりするなどのメリットがあります。プロパー融資という言葉は、次のように使用します。

  • 業績が安定している大企業や老舗企業はプロパー融資が受けやすい

信販業界での「プロパーカード」

信販業界での「プロパーカード」とは、信販会社や国際ブランドが直接発行しているクレジットカードのことです。信販会社等と提携した小売業界などが発行する「提携カード」と区分するために使用します。

プロパーカードは、信頼性が高い、ゴールドカードなどステータスを感じやすい、などのメリットがあります。プロパーカードの使用例は次の通りです。

  • 海外旅行に行くときはマスターカードやVISAカードなどのプロパーカードが安心だ

学術業界での「○○学のプロパー」

学術業界で使われる「○○学のプロパー」とは、その分野を専攻している人のことです。使用例は次の通りです。

  • 彼は経済学プロパーの学生(経済学を選考している学生)だ

また、次のように「その分野固有の」という意味で使用されることもあります。

  • 少子化は、社会学のプロパーの問題(社会学固有の問題)ではなく、政治や経済に大きな影響を与える

プロパー社員が会社にもたらすメリット

プロパー社員が会社にもたらす主なメリットは、次の5つです。

  • 社内の人脈が広い
  • 他部署の協力が得られやすい
  • 昇給やキャリアアップするとき有利になる
  • 企業文化を深く理解している
  • 会社への貢献度が高い

それぞれのメリットについて解説します。

社内の人脈が広い

プロパー社員のメリットの1つは、社歴が長いため社内の人脈が広いことです。入社同期の人だけでなく、先輩や後輩、上司や部下など、社歴の長い人ほど親密な人間関係のある人が増え仕事もしやすくなります。

相手の経験やスキル、性格などがわかっているため、一緒に仕事をするとき効率的に役割分担できるとともに、勤務先の社風や考え方などを共有しているため、結束力が高まることも期待できます。

他部署の協力が得られやすい

プロパー社員は、転職者と比べて他部署の協力が得やすいでしょう。社内各部署の仕事内容や役割を理解しているため、どの部署にどういった手順で依頼すれば協力が得られるかがわかるためです。

また、他部署に知り合いがいれば、人間関係を活かして協力を得ることもできるでしょう。他部署の協力を得たり、連携したりすることで、仕事を効率的に進め成果を高めることも期待できます。

昇給やキャリアアップするとき有利になる

従業員にとっても、プロパー社員であることで昇給やキャリアアップするとき有利になるというメリットがあります。勤続年数が長いことやこれまでの実績が、評価されるからです。

日本の人事評価の重点は年功から実力にシフトしているといわれますが、勤続年数に応じた昇格・昇給や退職金の計算などが残っているのが一般的です。

ただし、専門的なノウハウやスキルを持ちヘッドハンティングされた人材の場合、プロパー社員より高い報酬や待遇を受けることもあります。

企業文化を深く理解している

入社時からの経験や社内研修などによって企業文化を深く理解しているプロパー社員には、企業の方針に沿った適切な行動が期待できます。仕事に対する価値観や、仕事のやり方などを共有しているためです。

また、企業文化を理解することで、従業員の帰属意識や愛社精神を高める効果も期待できます。ただし、転職者が持つ異なる企業文化が刺激となって企業文化が改善するケースもあるため、異なる価値観や考え方を尊重することも重要です。

会社への貢献度が高い

プロパー社員は入社以来長期にわたって企業の業務を遂行してきたため、会社への貢献度は転職者よりも高いといえるでしょう。従業員も貢献度に応じて高い評価を受けたり、信頼されたりすることにより、大事な仕事や役職を任されるというメリットがあります。

ただし、過去の実績と将来の実績は必ずしも同様とは限りません。役職についたプロパー社員が過去の実績にあぐらをかいて仕事が疎かになったり、実績のない転職者が社内を改革することもあります。過去だけでなく、現在の貢献度を適正に評価することも必要です。

プロパー社員と非プロパー社員の課題と解決策

プロパー社員が会社にもたらすメリットが数多くある一方、転職が一般化するに伴ってプロパー社員と非プロパー社員の間に問題も発生しています。主な課題と解決策について解説します。

昇給や待遇への不公平感

プロパー社員の方が昇給や待遇が恵まれていることが多いため、非プロパー社員が不公平感をもつ問題があります。

逆に、ヘッドハンティングなどで非プロパー社員が高待遇を受けると、プロパー社員がこれまでの会社への貢献が正しく評価されていないと不満に思うこともあるでしょう。

これらの不平・不満を解決するには、人事評価や昇給などの基準を明確にして従業員に周知しましょう。評価した結果を従業員にフィードバックして納得してもらうことも重要です。

また、プロパー社員と非プロパー社員のコミュニケーションを高め、お互いの長所や取り組み、苦労などを理解させることも効果的です。評価の正当性を理解してもらうことにもつながります。

業務の改善意識への差

社外のことを知らないプロパー社員の方が、問題意識が希薄で改善意識が低い傾向にあります。そのため、転職後に非プロパー社員が感じる問題や改善点がプロパー社員には理解されず、両者の摩擦が起こることもあります。

解決策の1つは、プロパー社員と非プロパー社員のコミュニケーションを密にすることです。人員配置を工夫して両者が協働する機会をつくったり、ミーティングの機会を設けたりするなどの方法があります。

また、「価値観や考え方の違い」が変化や改善を生むことを企業が理解し、非プロパー社員の意見や改善提案を検討する仕組みをつくることも解決策の1つです。

もっと詳しく!プロパーに関するおすすめ論文と要約

プロパーに関するおすすめの論文を紹介します。

  • 正規雇用は通常、「期間の定めのないフルタイム労働」を意味し、非正規雇用はそれ以外の雇用形態を指す。しかし、正規・非正規の区分だけでは実際の雇用状況を正確に理解するには不十分であるとの指摘がある。日本では「正規」に分類されていても、実際には非正規と変わらない労働条件の下で働く人もいる (Nitta, 2001)。
  • 日本の正規社員の主観的幸福感に影響を与える要因には、意義ある仕事、人間関係、企業文化、労働環境、評価、休暇、経済的利益、職場の多様性などがあり、これらが正規社員の職場での幸福感、パフォーマンス向上、定着に貢献する (Magnier-Watanabe et al., 2023)。
  • 非正規雇用者と正規雇用者の比較研究では、正規雇用者が仕事の圧力や不柔軟な勤務スケジュールを報告する傾向が高く、仕事と家庭の両方に関連するストレスをより感じることが示されている。一方、非正規雇用者は特に長時間働く非正規雇用者が経済的困難に直面している (Seto et al., 2006)。

監修者の編集後記 -プロパーについて-

プロパー社員とは、主に「新卒採用の社員」のことです。「正社員」や「自社が雇用する社員」という意味で使われることもあります。

プロパー社員は人脈が広く企業文化を理解しているため、仕事がスムーズに進むなど会社にとってメリットがある反面、非プロパー社員と摩擦を起こすリスクもあります。

価値観や考え方の違いをお互いが理解し両者が力を発揮できるように、評価基準を明確にしたりコミュニケーションの活性化を図りましょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。