ガクチカがない!話題の探し方、書き方や例文、人事の評価ポイント

この記事のポイント

  • ガクチカとは、「学生時代に力を入れたこと」を略した言葉で、新卒採用のESや面接では定番の質問です。
  • 多くの企業がガクチカを質問するのは、自社が求める人材にふさわしいかどうかを判断するために、学生を多面的・立体的に理解したいと考えているからです。
  • しかし、質問される学生にとっては、いったい「何を」「どのように」答えればよいのか戸惑う悩みの種になっています。

ガクチカとは?

ガクチカ

民間企業が2023年に発表した大学生および大学院生の就職活動にまつわる調査によると、新卒採用でのES(エントリーシート、以下ES)や面接で「学生時代に力を入れたこと」について質問する企業は約84%という結果でした。(*)

こちらの質問は就活の定番質問であり、「ガクチカ」と略されていますが、企業側の狙いとしては、学生の人物像を知ることです。学生の中にはアピールできるガクチカがないと悩む人もいますが、企業が期待しているのはガクチカの話題を通して学生の全体像を知ることです。目立たない地道な取り組みであっても、それに取り組んだときの姿勢や得た学びをしっかり説明できる方が重要です。

(*)「就職白書2023(リクルート・就職みらい研究所)」の調べによる。

ガクチカと自己PRとの違い

ガクチカと同様にESや面接でおなじみなのが自己PRです。どちらも自分をアピールする、自己分析するという軸では共通していますが、ガクチカは学生時代の具体的な実体験に焦点を当てるのに対し、自己PRは自分の強みや特徴に焦点を当てています。

なぜガクチカが就活選考で聞かれるのか

多くの企業がガクチカを質問するのは、自社が採用するのにふさわしい人物かどうかを、多角的な視点から判断するためです。成績、スキル、取得した資格だけでは見えてこない学生の人物像を把握する効果的な方法として、企業側はガクチカについて触れます。

学生の人柄や価値観を知り、自社の求める人物像とマッチしているか確認するため

企業では、同僚や先輩、上司と達成目標を共有し、報告・連絡・相談といった意思疎通を図りながら仕事を進めていきます。時には、関連企業や顧客といった社外の人間との交渉もあります。こうした人間関係を円滑に維持していくためには、知識やスキルよりも人間性が重要なのです。

ときには、思わぬ障壁が立ちはだかって、仕事が停滞し、頓挫することがあるので、企業側としては困難を乗り越える強い意志を持つ人材を求めています。それを見極めるには、実際の体験をもとにしてまとめたガクチカが有効と言われているのです。

基本的なビジネススキルが身についているかチェックするため

ガクチカは、人物像を知るだけでなくビジネススキルを把握する際にも役に立ちます。
円滑なコミュニケーションを図る能力ヒューマンスキルと、知識や情報に基づいて現状を客観的に把握する論理的スキルの2つのビジネススキルが新卒採用で重視される傾向です。ESの書き方や面接での受け答えでも、採用担当者はビジネススキルがあるかないかを知ることができます。

ガクチカの評価基準は?人事が重要視すること

企業は、ガクチカを評価するにあたり次のような点を重要視しています。

  1. ガクチカを通して得たものは入社後の仕事に活かすことができるか
  2. 他者とのコミュニケーションを適切に行うことができる人物か
  3. 互いに助け合う心遣いを持っているか。
  4. 物事正確に理解し、論理的に考える能力を持っているか
  5. 実現性のある計画を立てることができ、予想外の事態が発生したときに臨機応変な対応ができるか
  6. 失敗しても学びを得て、次の挑戦に活かす強さがあるか

こうした点を評価することによって、学生の価値観や人柄が自社にマッチしているかどうかを知りたいと考えているのです。

学生のアピール項目と企業の重視項目のギャップ

多くの学生は、ESや面接でアルバイト経験、自分の人柄、趣味や特技、所属したゼミ、サークル活動をアピールしようと考えています。

一方、企業が重視しているのは、学生の人柄、自社で働きたいという気持ちの強さ、学生が持っているポテンシャル・今後の可能性です。また、企業は、基礎学力、性格適性検査や能力適性検査の結果も学生が考えている以上に関心を持っている傾向です。

ガクチカは必ず見つかる!ガクチカのエピソードの探し方

これまで説明してきたように、ガクチカは学生が自社にふさわしい人物かどうかを確かめるための手段の一つです。学生時代に取り組んだ実績の内容や回数に関係なく、これまでの自分を振り返りどうアピールするか作戦を考え、それを伝えるのにふさわしいエピソードを探しましょう。

探し方のポイント①

学生生活を振り返り、まずは長期的に続けたことを探してみましょう。例えば、学費や生活費を稼ぐために続けたアルバイト、誘われたサークル活動や選択したゼミなどがあれば、それについてじっくり振り返ってみましょう。そのときの気持ちや考え方、記憶に残るエピソード、自分の中に生まれた変化などを掘り下げてみましょう。この掘り下げをアピールポイントとしてつなげるのが、ガクチカ探しのコツなのです。

探し方のポイント②

次のような枠組みで探すのも効果的です。

・目標を立てて取り組んだこと

資格の取得でも、体力作りで始めたウォーキングやストレッチでもよいでしょう。ここで重要なのは、目標を立てた理由と、挫けそうになったときにどう克服したかです。成功、失敗はともかくとして、何を学んだかといった点を掘り下げてみてください。

・思わぬ失敗や困難が降りかかったときにどう対処したか

失敗や困難に向き合うときの姿勢やエピソード、それを乗り越えるための対応策、相談相手がいればその人から受けた教えなどに目を向けてみてください。

・友人や家族、先輩や先生に褒められた経験

なぜ褒められたのか、どんなシチュエーションだったのか、その体験をどう活かそうとするのかなどを深掘りしてみましょう。

ガクチカの書き方

ここまで、ガクチカにまつわる採用担当者の狙い、それに対応したガクチカの探し方を解説しました。ここからは、ガクチカの書き方について解説します。

ガクチカの構成

読み手・聞き手がすっきり理解できるガクチカは、基本的に以下の構成・流れになっています。

  1. 何をしたか(ガクチカの内容)
  2. なぜそれをしたのか(動機)
  3. どんなことを考え、どう取り組んだか
  4. どんなことがあり、どう対応したか(特記事項がなければ割愛)
  5. 結果はどうだったか(失敗もあり)

    ※④と⑤は話題の展開によって入れ替えてもよい。

  6. 自分の持ち味をどう活かしたか
  7. 何を学んだか

ガクチカの書き方のポイント

ガクチカの書き方の最大のポイントは、自分が企業の求める人物像にかなり近い、もしくはふさわしいことを伝えることです。そして、ガクチカにおいて発揮した能力やそこから学んだものを企業のために活かせることを強調しましょう。

ガクチカという、具体例を素材にした自分の思考、性格、価値観を伝えるので、自己アピールに重きを置かないよう意識することも大切です。

ガクチカの回答例、例文

ガクチカで「何を、どんな構成で、どのように書くか」を知りたいという学生もいることでしょう。ここでは回答例と例文を紹介しますので、参考にしてみてください。

部活・サークル活動の例文

私は、学生生活の4年間手話サークルで活動し、新入生の勧誘に力を入れました。

当時、1年生と2年生の部員が数名しかいなかったため、翌年以降の活動が停滞する可能性があり、仲間を増やしたいと考えておりました。

ところが準備を始めた矢先、新型コロナウイルスの影響で対面の勧誘が禁止されてしまいました。そこで勧誘手段をSNSに切り替えることにしました。練習や合宿の様子に加えて、実際に使える簡単な手話の例などをビジュアルに発信できるので勧誘効果が高まると期待できると思い、SNSを活用したのです。

また、SNSの活用は、新入生にとっては、授業のことや友達づくりについてなどについて質問したり相談したりする場として活用できるというメリットもあります。実際、新入生からは「コロナ禍で始まった学生生活に不安があったけれど解消できた」といった感謝のメッセージが届きました。その結果、12名もの新入生が入部してくれることになりました。

この経験から得た学びは、まず相手の状況や気持ちを想像し、それにふさわしい方法を用いることが重要だということです。よって、私のこの経験は、貴社での業務でも活かせるものだと考えております。

学業・研究活動の例文

私は、地域活性化をテーマにした講義を受講し、そこで「地元産品を利用した新メニューの開発」というシミュレーションプログラムに参加しました。

もともと私は限界集落、消滅可能性自治体といった課題に関心があり、書籍や論文を読んでいたので、地域内部から始まる取り組み策について考えを深めたいというのが参加のきっかけです。

プログラムのメンバーは10人で、役割分担を決め、早速開発計画の策定から取りかかったのですが、議論が散漫なままで初回のミーティングが終わってしまいました。そこで私が気づいたのは、議論のもとになるたたき台が必要だということでした。私はこれまで読んだ書籍や論文の知識をもとにたたき台をつくり、リーダーの了解を取って2回目のミーティングでこれを提案しました。提案にあたっては、メンバーに納得してもらえるように説明の仕方を工夫しました。

提案に対しては、色々な意見が寄せられ、私が重要ポイントだと考えていた点について別案が取り入れられることもありました。そのときは不満がありましたが、実際にシミュレーションを進めていくと、その別案にも優れた点のあることが理解できました。

最終的にはプログラムは教授や他のプログラムのメンバーにも評価される内容となり、一定の成果を上げることはできました。

この経験から私が学んだのは、知識を身につけることの重要性、議論の効率化にはたたき台が必要なこと、そして自分の意見に固執しないことです。私はこの学びを貴社での業務の中で活かしていきたい願っています。

日常生活の例文

私は、大学2年生の秋から5kmのジョギングを始め、風雨の激しいときを除いて継続しています。

体型がやや太り気味だったうえに風邪をひきやすい傾向があったので、卒業して社会人として働いていくうえで改善しなければならないと考えたのが、体力向上を目的としたジョギングでした。

しかし、通学時間が1時間30分かかるうえに、ジムなどに通う経済的ゆとりもありません。さらに運動が不得意な自分でも継続できることも必要でした。こうした環境を踏まえ、ジョギングを始めることにしました。スタートは朝6時、距離は5kmと決めました。

ジョギングを始めた当時は1kmを走るのも大変でしたが、ひと月、ふた月と続けていくうちに身体も慣れ、冬休みに入った頃には5km走り通せるようになりました。今では、走るときの息遣い、腕の振り方、足の上げ方なども調べ、取り入れています。

体力向上から始めたジョギングですが、改めて振り返ると継続しているという自信によって何事にも前向きになっている自分に気づきました。この経験と習慣は貴社での業務にも生きるものだと考えています。

アルバイトの例文

私は、実家の経済的な事情があり生活費を自分で稼ぐ必要があったので、大学に入学したときから勉強と両立しながら居酒屋チェーン店でフロア担当のアルバイトを続けています。

初めの頃は、長く続けられるようにミスは絶対しない、お客さまに不快な思いをさせたり怒らせたりしない、といったことにばかり気を遣っていました。

しかし、ベテラン社員の仕事振りを見ているうちに、接客という仕事は、お客さまが「この店に来て良かった」という喜びを提供するのが仕事だと気づきました。改めて先輩方の仕事振りを観察すると、お客さまとの距離感を巧みに取りながら、様子を見てメニューをすすめていたことが分かりました。

私も先輩方の行動を見よう見まねでチャレンジしてみると、次第に緊張感を保ちつつも、お客さまと話ができるようになり、少しずつですが温かい言葉をかけてくださるお客さまも出てきました。

私は、アルバイトを通して、仕事の成果を上げるには、失敗しないように委縮するのではなくチャレンジすることが必要だと知りました。こうしたチャレンジ精神は貴社での仕事にも活かせることができると考えています。

ガクチカは企業によって変えるべき?

ガクチカのネタが豊富にあれば企業によって使い分けるもの一つの手かもしれませんが、企業が知りたいは、豊富なガクチカのネタではなく、あくまでもガクチカを通して見えてくる学生の人物像です。

まずは、自己分析に力を入れ、自分について語るべき内容をできるだけたくさん掘り出し、相手を引き寄せる内容に仕上げていきましょう。きっと、その企業にふさわしい内容に仕上げる近道になるかもしれません。

監修者の編集後記 -ガクチカについて-

学生が自分にマッチした企業に就職でき、企業も自社が求めている学生を採用できることを実現するためには、やはりガクチカのようなスタイルは必要だと思います。

学生がガクチカに負担を感じるのは、学生のアピールポイントと企業の求める人物像にズレがあるかと思われます。それに気づくことがガクチカ克服のコツと言えるでしょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。